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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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下水路潜入 05

 あの精霊?が世界を止めていたかのように、光が消えたと同時に、世界が動き方を思い出すかのように再びゆっくりと、しかし、確実に元の速度を取り戻し、時間が進み始めた。


 初めに飛び込んできたのは音だった。ファウルラットの甲高い鳴き声と地面を駆ける水音が世界に居場所を取り戻したように響いてきた。


(精霊様に願うの?何を?)


 時が止まった世界での情報に伊勢は頭がついていかず、既にパニックに近い状態だった。しかし、現実は残酷だった。


 四季崎は動くことができず、ファウルラット襲われるのは時間の問題だ。伊勢は藁にもすがる思いで、精霊に願った。意味も分からず、言われるがまま、半信半疑でしかなかったが、ただひたすらに願った。


(四季崎さんを助けたい!精霊様!お願いします彼を守る力を!!)


 伊勢の純粋な祈りを、全身全霊で心に強く思い描き、心の底から願った。それは奇しくも魔法を発動させる条件を満たしていた。


 その瞬間……


 伊勢の意識とは関係なく、()()()()()()が脳裏によぎった……。


 暗くて、寒い場所……何かに対する言い知れぬ恐怖と拒絶……苦しい……悲しい隔絶された世界……。


(なにこの記憶……知らない……知りたくない……出てって!)


 伊勢はその記憶を自分の中から追い払うように……そう自分と記憶に強固な壁を築く様に自分の中から追い出した。


 すると、それがきっかけであるかのように身体の奥底に眠っていた別の何かが目覚めたかのように、自然と伊勢の唇から詠唱が澄んだ声となって紡ぎ始めた。


『我が領域を侵すものよ!我の聖域から出ていけ!』


 生まれる前から知っていたような、そんな感覚さえ感じさせるほど、当たり前に紡がれた詠唱と共に魔法を唱えた。


《ルミリア!!》


 突如、伊勢が拒むように叫ぶと、その意思に呼応するように、四季崎とファウルラットの間に、黄金色の光が溢れ出したかと思うと瞬く間に半透明に変わり、何者も犯し難い神々しさを放つ光の壁が、四季崎を守るように形成された。


 突如として現れた光の壁に突進してきたファウルラットの群れは止まることができず、そのまま光の壁に激突していった。キーキーと甲高い鳴き声を上げながら、逃げ道を探すように、動き回り、下水路と光の壁の隙間を見つけ出すと、その隙間に殺到していった。


 伊勢は慌てて四季崎の元へ駆け寄り、ファウルラットとすれ違ったが、襲われることなくそのまま通り過ぎていった。


 全てが一瞬の出来事だったかのように辺りに静寂に包まれると役目を終えた光の壁は音もなく、美しい黄金色の光の粒子となって消えていった。


 初めて使う戦闘魔法だったためか、魔力の制御がうまくできなかった。光の壁が消えたと同時に、伊勢は、立っていられないほどの、全身を襲う疲労感と、世界がぐるぐると回るような眩暈に襲われ、その場にずるずるとへたり込んだ。


 伊勢は乱れた呼吸を整えるように浅い呼吸を繰り返した。四季崎は彼女の発動させた魔法に驚きを示しながら、『四季』を杖代わりに何とか立ち上がると、『四季』を元の長さに戻した。


(魔法に精霊句がなかった……あり得ない。もしそれを実現させうるのであれば、可能性は……)


 四季崎は色々と頭の中を駆け巡ったが、今は伊勢を優先するために頭の片隅に追いやると、駆け寄っていった。伊勢はすでに呼吸も戻っており、今は自力でゆっくりと立ち上がろうとしていた。その顔には今までとは違い疲労困憊といった疲れが見え、汗で濡れていた。


「大丈夫ですか?」


 四季崎は伊勢を心配そうに見つめると、伊勢は起き上がると両手を膝に置き、深呼吸をしていた。彼女は四季崎に声をかけられるとバァ!と顔を上げ、四季崎以上に心配そうな焦りの籠った声を上げた。 


「四季崎さん、大丈夫ですか!身体に怪我は?背中は大丈夫ですか?そうだ、肩の怪我!傷口は?悪化していませんか!」


 伊勢は自分の事をよそに四季崎に駆け寄るとペタペタと身体を調べ始めた。


「お、落ち着いてください、大丈夫ですから。落ちた時に右肩を庇いましたから、肩の傷は心配ないです。ですが、左の切り傷。早めの消毒が必要ですね」


 四季崎は地上へと続く壊れた梯子を確認するように見つめた。


(壊れた箇所は私が掴んだ場所だけですか。他も老朽化しているかもしれませんが、ここを使うのが最善でしょう)


 四季崎は振り返り、伊勢に視線を向けた。


「早くここを出ましょう。こんなに空気の淀んだ場所にいても身体に悪いだけです。もう一度私が先に上がって安全を確かめますので、もう少し待っていてください」


 四季崎はもう一度慎重に登ったが、どうやら、あの場所だけが老朽化が進んでいたのだろう。四季崎は無事に登りきると、それに続く様に伊勢を促した。伊勢も四季崎の指示に従いながら梯子を登りきり、二人は無事に地上の地面を踏むことが出来た。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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