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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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事件の結末 05

 夕焼けに照らされた街道を進むと、目の前にセントナーレの城門が小さく見えてきた。城門には夜が近いためか、城壁には既に明かりがいくつか灯されていた。


 四季崎は目的地がすぐ目の前に見えてくると、緊張の糸を少し緩めた。隣では伊勢が初めてセントナーレを見るのか、好奇心いっぱいに眺めていた。そんな伊勢を微笑ましく見つめる四季崎は、城門の違和感に足を止めて観察した。


(城門前の門兵にしては配置がおかしい。それに動き回りすぎている……この距離だと正確には分からないが鎧……では無さそうだが……)


 街道を進むのに体力を使ったのか呼吸を乱しながら、城門を目を細めて眺めていた。そんな姿を横目で見ていた伊勢も真似するように城門を見つめた。


「門の前に人がいっぱいいますね?でも不思議です。皆さん服装がバラバラで……もしかして、セントナーレは門兵はギルドの方が務められているんですか?だってほら、ギルドの本部あるそうですし?」


 四季崎は伊勢の高い視力に驚きながらも、すぐさま彼女を連れて近くの茂みに身を隠した。


 急なことで「きゃ!」と小さな悲鳴を上げたが伊勢はすぐに自分で口を塞いだ。


「すみません。静かでしたよね?それにしても何かあったんですか?」


 伊勢は可愛らしく謝ると、素っ気ない四季崎の顔を伺った。彼はどこか、辛そうな顔をしながらも考え込むように目を細めていた。


(伊勢の話が正しければ、城門の前にいるのは、多分盗賊に扮した聖騎士だ。じゃなきゃ、あんな堂々とセントナーレの前で、うろつけないだろう……)


 四季崎は伊勢の視線に気づくと、安心させるように笑いながら、状況を説明した。


「今、門の前にいるのは、間違いなく盗賊の仲間でしょう。そのまま進んだいたら、間違いなく、捕まってしまうでしょう。伊勢のおかげで向こうに気づかれる前に対処できました。ありがとうございます」


 四季崎がお礼を言うと、嬉しそうに笑みを浮かべた。続けて四季崎は、「迂回路を考えるので少し待っててください」と伝えるとまた考え出した。


(今いるのはセントナーレの東側です。反対の西側に行くには聖域とセントナーレの間にある深い森を抜けなければいけないでしょう。抜ける頃には夜になってしまい、こちら側が圧倒的に不利になります。後は入れるといえば……港側ですが、あそこは港を作るにあたって崖から迫り出す形で港が作られているため、入るには船が必要でしょう……)


 四季崎は悩みながら、大きく深呼吸をしていた。その横顔を見て、伊勢は顔色が初めて会った時よりも悪いことに気づいた。二人の間に沈黙が流れる。伊勢は不安げに彼の横顔を見つめ、何もできない自分にもどかしさを感じていた。彼女は思考の邪魔をしないように、そっと彼の隣に座り直し、静かに待った。


(……待ってください。崖から迫り出して作られた港……たしか、港の下の崖には水害用の下水路が設けられていたはずです。そこからセントナーレに入ってギルドの付近にある排水ロの蓋から外に出ればあるいは……)


 四季崎はたどり着いた答えの精度を高めるように頭の中で模索し続けた。


 しばらくして、考えがまとまると、四季崎はゆっくりと頭を起こした。伊勢は四季崎と視線が合うと「大丈夫ですか?」と心配そうに尋ねたが「大丈夫です」と一言、返されただけだった。


「それより、別の入り口を見つけました。そこはあまり知られておらず、さすがの盗賊も警戒はしていないでしょう」


 そう言うと、四季崎は近くの木を支えに立ち上がると、街道を横切るように崖に向かい下を見降ろした。眼下に広がるのは、約十メートル下の荒々しい岩肌と、その先に広がる波打ち際だ。普通に飛び降りればただでは済まない高さだが、彼はすぐに視線を動かし、僅かな段差や、根を張った灌木の枝、あるいは掴めそうな岩の出っ張りを探した。


 しばらく視線を彷徨わせると、傾斜は確かに急だが、注意深く足場を選べば降りられないこともない場所を見つけた。


 四季崎は疲労で軋む体に鞭打ち、深く息を吐いた。彼は気合を入れると、足元に注意しながら先に降りていくことにした。四季崎は伊勢に視線を向けると、彼女の不安げな瞳に「大丈夫です」と告げると彼女はちいさく頷いた。慎重に下へと体を滑らせていった。ゴツゴツとした岩肌に手を添え、時には体を支え、伊勢もそれに続く。


 崖を降りきると、そこは思いのほか綺麗な砂浜になっており、水平線に傾きかけた赤い太陽の最後の光を反射して、波打ち際で濡れた砂がキラキラと宝石のように輝いていた。


 二人は綺麗な砂浜に自分たちの存在を示すかのように足跡を残しながら、セントナーレに向かっていった。


 セントナーレの真下まで来ると、頭上に見える城壁は街道から見た時の姿よりも何倍も巨大に見えた。崖の岩肌と一体化するように築かれたその壁は、下層部は自然の断崖をそのまま利用しているかのようで、上層へといくにつれて人工的な石積みが現れていた。潮風に削られた跡が壁の至るところに見られ、海の荒々しさから街を守る要塞としての役割を静かに主張していた。


 二人はそのまま崖沿いに進んでいき、頭上に船着き場の床板が見えるところまで来た。そこからは砂浜がなくなり海となっていたが、普段は使われていないような古びた桟橋は崖に沿って設けられていた。


「この先の点検用の桟橋です。普段は使われていないので滑りやすくなっているので、注意してください」


 そう言って、四季崎は崖に手を添えながら慎重に進んでいった。後ろから伊勢もこけないように慎重に進んでいった。


 そしてたどり着いた場所は大きな下水路の入り口だった。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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