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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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事件の結末 04

 次第に空模様が夕暮れになり、世界全体が赤く染まっていく中、四季崎と伊勢は街道を歩いていた。岩肌が剥き出しだった道は、いつしか綺麗に舗装された道へと変わり、潮風に揺れる草原が広がっていた。


 意識が戻り始めたのか、四季崎の背中の上で身動ぎをするようにモゾモゾと動くのが感じられた。


 四季崎は歩みを止めると、念の為、さっきの黒マントが追ってきていないかを確かめた。安全を確認すると、伊勢を草原の上にそっと寝かせた。その際、彼女に怪我がないかを今一度確認をしたが、ここまでの道中に傷を負った痕跡がないことに安堵した。


程なくして、目を覚ますかのように、「ん……ぅ……」と小さなうめき声を漏らしながら、伊勢は重い瞼を震わせながら、目を覚ますと上半身を起こした。


 伊勢は寝ぼけた様子で周囲を見渡し、最後の記憶と今の景色が違うことに困惑し、「まだ、夢の中?」と呟くと目をこすり、もう一度周囲を見渡した。


 そこで初めて四季崎が近くにいることに気づくと明らかに驚いてみせた。伊勢は本当にまだ夢の中にいるのではないかという疑問が抜ききれず、四季崎の顔をペタペタと触るとそこから伝わってくる人の温もりを感じて現実であると理解した。


「す、すみません!勝手に顔を触ったりして!そ、それよりもここはd……」


 伊勢は大きな声で謝罪を始めたので、四季崎は慌ててその口を塞いだ。急に口を塞がれた伊勢は困惑すると同時に恥ずかしさから頬を赤らめた。


「すみません。事情を説明するので静かにできますか?」


 困惑しながらも、伊勢は小さく頷くと、四季崎は彼女の口から手を話した。


 その後、四季崎は自分が到着してからの祭祀場での出来事をできるだけ要点を絞って話した。最初は大人しく聞いていたが、途中の聖騎士の死や司祭がなくなった事を知るとまるで自分の家族のことのようにボロボロと声を抑えるようにして泣き始めた。


 話を終えると伊勢は自分の晴れ着や顔に自分を守るために死んでいった返り血に触れながらうずくまるように泣き続け、四季崎は伊勢に気持ちの整理ができるまで待つことにした。


(気を失っていたとはいえ、自分を守るために多くの者が亡くなった事実を彼女が受け止められるのには時間がかかるだろう。落ち着くのを待ってあげましょう)


 少しして小さな泣き声がすすり泣くような声に変わると伊勢は目元の涙を四季崎に渡されたハンカチで拭くと「……ありがとうございます」と言って彼に返した。

 

「辛いことを思い出させるよう申し訳ないが、私が来る前に何があったか教えてもらえないか?」


 伊勢は少し表情が強張ったが、四季崎のために懸命に何か思い出そうとした。


「あの時は、儀式で私の番になって……石舞台に上がったら、司祭様から個人識別証を渡されて……使い方を教えてもらった後に、一度……司祭様が……驚いて……そしたら……急に……ごめんなさい。ボク、ここまでしか思い出せません」


 伊勢は痛む頭を抑えるように手を当てると一生懸命記憶を遡った。


(おそらくその時に頭部を強打されて気を失ったのだろう……。しかし、司祭の驚きよう。彼が言っていたことの裏付けになりそうではあるが……証拠が……)


 四季崎は伊勢の話と司祭の遺言を頭の中で照らし合わせながら考え込んでいた。


(これ以上は考えても仕方がない。一度ギルドに帰ってイリーネに相談しよう。彼女なら何か答えを持っているかも知れない)


 四季崎はそう結論づけると考えるのをやめて伊勢に視線を向けた。


「辛いことを思い出させて、すみませんでした。それと身体の方は大丈夫ですか?先程一通り、身体の方を調べさせていただきましたが、目立った外傷がなかったので安心しました」


 四季崎の安心した表情に伊勢は一瞬ホッとした。しかし、改めて四季崎の言葉を思い出し視線を下に向けた。


 自分の晴れ着である巫女装束が大きく開いているわけではないが、少し気崩れているのを確認すると、慌てて乱れを直した。途端に恥ずかしくなったのか、身体を丸めるように小さくなると、顔を耳まで真っ赤にして顔を埋めた。


「……見たんですか?その……ボクに身体を……。気を失ってる間に?」


 四季崎は首を傾げながら、「あれだけのことがあったんです。調べますよ?」と当然のように答えた。その回答に伊勢は今以上に顔を赤らめ、両足をばたつかせた。四季崎はそんな伊勢の様子を不思議そうに見つめながらも、セントナーレの方角に目を向けた。


(周辺に敵の気配はないが、一箇所に留まるのは得策じゃないか。早めのギルド本部に行かなければ)


 四季崎は少しふらつきながらも立ち上がりながら、伊勢を急かした。


「早く、セントナーレに向かいましょう。いつ残党が来るか……」


 伊勢は自分だけが感情に振り回されているのが納得がいかないとばかりに顔を上げると四季崎を睨んだ。


 不貞腐れながらの伊勢も立ち上がると、首に掛けていたネックレスがシャラァンと首から垂れ下がった。


 伊勢はそれをゆっくりと手に取り、よく見えるように顔に近づけると柔らかな笑みを浮かべると優しく手で包み込んだ。その後すぐに装束の中にしまい込むと四季崎に従うように先を急ぐことにした。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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