祭祀場での決闘 09
四季崎と銀鏡は、儀式の最中に襲撃を受け混乱に陥った祭祀場へと急行する。
途中、満身創痍の新人冒険者や仲間の死に直面しながらも、ノクターン・リーヴァーの大群と対峙し、巧みな連携と陽動で危機を乗り越える。
銀鏡は森に潜む魔獣使いを捕縛し、冒険者たちは子どもたちを守り抜くが、祭祀場ではリーダー格の敵が聖騎士らを圧倒し、伊勢が行方不明となる。
四季崎は仲間たちの信頼を背に、救出と事態打開のため単身で祭祀場へと向かう決意を固める。
四季崎が左手で『蛍火』を構えると頭目は嘲笑うかのようにフゥンと鼻を鳴らした。
「仲間を逃がして一人で大丈夫なのか?」
「一角隊長来るまでの間ぐらいは持ち堪えて見せますよ」
しかし、頭目の態度は変わる事はなかった。
「あの、おっさん一人で戦況は変わるとでも?」
頭目はこちらの意図を測るように睨んだが、「やってみないことには」と四季崎は答えるだけだった。すると、頭目は少し苛立ちながら、今度は彼の形状を変えた武器に視線を向けた。
「遺物の本領発揮ってか?今さら遅ぇんじゃねか?」
四季崎は頭目の表情を確認するように見つめ続けた。
「こうでもしないと、あなたを抑え込める自信がないのですよ。まぁ、今さらですが……」
頭目が四季崎の武器を見つめた時の僅かな表情の変化を見逃さなかった。
(アイツ表情に若干の焦りが見える。私の仮説が正しい証明か?)
四季崎は左手で握った『蛍火』を構えながら走り出した。
「馬鹿か?テメェ一人で突っ込んできて俺の攻撃を捌けるのか?」
頭目は腕を前に伸ばすと風の魔弾を六つ生成しすると『《シフネーア リーア ダート》』と唱えると四季崎を風の魔弾が襲った。四季崎は風が空を斬り裂く音を耳をかすめるようにして、華麗に躱し、確実に距離を詰めていく。
「斬り込むしか脳のねぇ、雑魚がぁ!」
伸ばした腕を横に振るいながら、『《シフネーア リーア バーブ》』と叫び風の斬撃を生み出した。
躱すことができない範囲の攻撃に四季崎は左手の『蛍火』を縦に振るった。今までは耐え凌ぐしかなかった斬撃も、今や小さな抵抗を示すだけで、まるで紙を切断するように容易く風の斬撃を斬り伏せた。
「聖騎士のあなたなら当然知っていると思いますが、風には火が有効です」
その言葉に頭目は表情を引きつらせた。世界の絶対の法則である属性の関係性を自分の慢心によって目を晒してしまった事への羞恥と焦りが入り混じった表情を浮かべていた。その慢心が、四季崎の接近を許してしまい、すでに彼の剣の間合いまで迫っていた。
四季崎は左手で『蛍火』を振るい風の結界とぶつかった。激しい金属音と共に『蛍火』はじき返されたが、今までにない結果をの残した。
風の結界は『蛍火』の剣身に沿って傷をつけたのだった。さらに打撃を加えた際の風の結界の修復の時とは明らかに遅かった。
頭目は結界の修復を優先するか、四季崎の排除を優先するかを瞬時に判断しかねた。優位性を保ちさらなる絶望を与えるか、身の危険を優先し即座に彼を始末するために攻勢に打って出るか、そのわずかな迷いが彼の判断を鈍らせた。その僅かな隙を見逃さず、四季崎はさらに一撃を加えた。
傷はヒビに代わり結界の一部に広がった。
「テメェ!!」
頭目は今までに見せたことのないほどの激怒すると四季崎が『蛍火』を振り下ろす左手を結界の外で掴んだ。
「そんなに早く死にてぇなら、仲間が来る前に殺してやるよ。お望み通りな!」
頭目は腕を掴んだ反対の腕も結界の内から四季崎の胸の前に向けて指先突き立てた。
『鋭き魔槍をもって、我が宿願成就させよ』
今までに無いほど高濃度魔力が風の結界と四季崎の胸の前の隙間に集まっていく。
《シh……》
「遅い!」
魔法を放つその一瞬の静寂を風切り音が斬り裂いた。高濃度の魔力が集まる場所を貫くように一本に矢が通り過ぎた。その矢によって魔力の流れが乱れ、制御を失った高濃度の魔力は力の行き先を失い、その場で爆発を起こした。
頭目は自分への被害を恐れ、咄嗟に四季崎の腕から手を離すと逃げるように結界の中に戻した。四季崎は離された左手を即座に剣を地面に突き立てると両足で踏ん張るようにして爆風を耐えしのいでみせた。
その爆発の衝撃は、ヒビが入り壊れたかけの風の結界を、砕くには十分の威力だった。風の結界はまるで氷細工が砕けるように、粉々になって砕け散った。
「なっ……!? 馬鹿な!?」
その結果に動揺を隠しきれず、思考が停止している頭目は、その場で耐え凌ぎ、剣の間合いを保ち続けた四季崎にとっては千載一遇の好機だった。
四季崎は右肩の怪我を気にすることもなく両手で『蛍火』を握ると力強く高々と剣を掲げた。
「終わりです」
そう冷徹に呟いた四季崎は渾身の一撃を頭目に叩き込んだ。一瞬遅れて躱しそうと後ろの逃げた頭目だったが間に合わず、『蛍火』が肩から腹部にかけて袈裟斬りになった。
頭目はその場を後退するようによろめくとそのまま前のめりになって倒れ込んだ。
「あなたの敗因は勝利を焦ったことですよ」
地に伏せ、微動だにしない頭目に対して言い放つと四季崎は力が抜けたように地面に座り込んだ。彼の右肩に激痛が走り、全身に疲労が重くのしかかる。しかし、彼はそれを奥歯の噛みしめて耐え忍んだ。
(右肩は後で高位の治癒術士に見てもらうとして……やっと……やっと、終わりましたか……)
静かに息を整えながら、銀鏡の合流を待つように大きく息を吐いた。その表情には激闘を生き抜いた安堵と強者を打倒した達成感に満ちていた。しかし、その静寂も長くは続かなかった……
「是空!まだだ!」
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