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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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祭祀場での決闘 08

四季崎と銀鏡は、儀式の最中に襲撃を受け混乱に陥った祭祀場へと急行する。

途中、満身創痍の新人冒険者や仲間の死に直面しながらも、ノクターン・リーヴァーの大群と対峙し、巧みな連携と陽動で危機を乗り越える。

銀鏡は森に潜む魔獣使いを捕縛し、冒険者たちは子どもたちを守り抜くが、祭祀場ではリーダー格の敵が聖騎士らを圧倒し、伊勢が行方不明となる。

四季崎は仲間たちの信頼を背に、救出と事態打開のため単身で祭祀場へと向かう決意を固める。

 四季崎は、目の前に立ちはだかる頭目の風の結界に対し、あらゆる攻撃手段を試みた。その一挙手一投足は、単なる攻撃ではなく、強固な防御の裏に隠された弱点を探るための、執拗な情報収集だった。


 『四季』を長く構え、渾身の力を込めて結界に叩きつける。轟音と共に硬質な衝撃が腕に伝わってくる。その度に、結界がわずかに歪んだり、風の流れが乱れたりしないか、四季崎は五感を研ぎ澄まして観察した。後方では銀鏡が頭目の表情に注意を払いながら、笑顔の裏に、わずかな焦りや、魔力消費の兆候はないか。しかし、頭目は変わらず不敵な笑みを浮かべている。


「そんな単純な攻撃で俺の結界が破れるとでも? 所詮、無冠の英雄もその程度か!」


 頭目の挑発をしてくるが、その言葉にも、なにか情報がないか四季崎は冷静に耳を傾けた。


 遠方では、銀鏡の魔法の矢が風を切る音が響いていた。四季崎に向かって放たれそうになっている風の魔弾を的確に撃ち落としていき、彼を情報収集に集中させようとしていた。


 四季崎は、今度は『四季』を短く持ち替え、より高速な連撃を試みた。同じ一点に何度も、何度も打撃を叩き込んでいった。その衝撃に僅かだが()()()()()()()のを感じたが、連撃の手を緩めるとすぐに回復してしまった。


「ヒュー、連打は好きか? なら、もっと踊って見せろよ!」


 頭目の声が、さらに四季崎を焦らせる。だが、焦りこそが敵の思う壺だ。四季崎は深く息を吐き、頭目が伊勢に視線を向けた一瞬の隙を見逃さなかった。その瞬間、彼は体術を織り交ぜたフェイントで結界の横へと滑り込み、死角を狙うように『四季』を突き出した。


「《シフネーア(疾風の) リーア クリーヴ(断斬)》!」


 頭目は、間髪入れずに四季崎の予測を上回る速さで風の斬撃を放った。それは、彼が感情的になっても、基本的な魔法の反応速度は落ちていないことを示している。四季崎は咄嗟に『四季』で防御したが、その押し戻す力によって再び距離が開いた。


「もう踊りは終わりか?今度は俺をなにで楽しませてくれるんだ?」


 頭目が不敵に笑う。しかし、その顔にわずかながらも、四季崎が探っていた()()()()()が見えたような気がした。彼の表情が硬くなっているのを感じ、今までの行動の中にこの風の結界を突破させる何かが含まれていたようだった。


 四季崎の視線が、後方の銀鏡のいる方へと向けられる。言葉はなくとも、互いの意図は伝わる。この猛攻は、決して無駄ではなかったと……。頭目を守る堅牢な風の結界の打ち砕く方法をついに確立させた四季崎は銀鏡に近づいていった。


「是空。何か答えが見つかったようだな?」


 四季崎の核心に満ちた表情がそのことを表していた。四季崎は銀鏡の耳元に顔を近づけると「神楽……」と小声で何か伝えた。その内容に確証があるのか不安に思いながらも四季崎を信じることにした。


「神楽、後は任せて。援軍を呼んできてください。もうそろそろ一角隊長もこちらに向かってきている頃合いでしょう。それまで私が頭目を押さえますから」


 銀鏡は頷くと頭目に背を向けて街道へと続く道へと逃げていった。


「無冠の英雄さん一人で俺を抑えるだと?今までできなかったのにか?笑わせるね」


 頭目は四季崎を無視して銀鏡の背中に向かって魔法を放とうとした。


「仲間には一対一にしたのに、自分は二対一にするのか?それじゃあ、楽しめないんじゃないのか?それとも今から負けた時のいいわけでも用意しておきたいとか?」


 頭目は四季崎の挑発に一瞬の迷いを見せたが、その挑発に乗るように腕を下ろした。


 それを確認すると、四季崎はここで初めての行動をとった。


 四季崎は手に持っている『四季』を今まで捻ることでサイズを変えていたが、今回は捻ることなく、両手で中央部分を掴むとそのまま両手を外に引っ張った。すると、『四季』の中央部分で左右にスライドすると内部が露になり、カチリと小さな音を響かせて止まった。そこには円柱形ユニットがぴったりと収まりそうな窪みが現れた。


 四季崎は自分の右のポーチから深紅の長さ十センチほどの円柱で透明な鉱物でありながら中に極小の生き物が閉じ込められている物を取り出した。それはギルドで『四季』とは別に返却された『可変機構』だった。


 四季崎はその『可変機構』を迷うことなく、『四季』の窪みにはめ込むと、元の状態に戻した。


 『可変機構』をはめ込んだことで、『四季』事態がそれに連動するように、今まで何もない無機質な表面に複雑な幾何学的な模様が淡い赤色の光を帯びて薄らと光り出した。


「可変式戦術棍『四季』。外装換装」


 四季崎はその言葉と共に今までのように『四季』を捻った。


深紅(しんく)(ほむら)よ、()(やみ)()け!戦術剣《蛍火》」


 その言葉と呼応するように、『四季』の先から炎が噴き出すように剣身が現れた。剣身を縁取る外側の刃は、研ぎ澄まされた直線で構成されており、見る者に息を呑ませるほどの鋭利さを感じさ、剣身の根元、鍔に当たる部分には刀身が少し盛り上がっていた。噴き出すように現れた剣身はただ炎ではなかった。燃え上がる炎のように剣身の中心に向かって黄金色に変わっていき、それでいて金属的な光沢であると同時に、内側から発光しているかのようだった。


「ここからが本番です。教材はそろった。れから『講義』を始めようか」


 四季崎は、赤く輝く剣の切っ先を、真っ直ぐに頭目へと向けた。


私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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