祭祀場での決闘 06
四季崎と銀鏡は、儀式の最中に襲撃を受け混乱に陥った祭祀場へと急行する。
途中、満身創痍の新人冒険者や仲間の死に直面しながらも、ノクターン・リーヴァーの大群と対峙し、巧みな連携と陽動で危機を乗り越える。
銀鏡は森に潜む魔獣使いを捕縛し、冒険者たちは子どもたちを守り抜くが、祭祀場ではリーダー格の敵が聖騎士らを圧倒し、伊勢が行方不明となる。
四季崎は仲間たちの信頼を背に、救出と事態打開のため単身で祭祀場へと向かう決意を固める。
四季崎が、死を覚悟した刹那一本の白い光の筋が通り過ぎ、頭目の腕を掠めた。
頭目は魔法の発動を諦め、掴んでいた手も離すと結界内に引っ込めた。
『是空、 無事か!』
四季崎はすぐさま頭目から距離取るように全力で後ろに下がると、自分がまだ生きていることに心から安堵と同時に口の中に広がる鉄の味が広がり、傷から伝わる熱が自分が生きている証拠だった。
心に余裕が生まれると援護をしてくれた銀鏡を探したが、うっすらと気配は感じるが肝心の姿が見えなかった。彼はおそらく潜伏魔法を用いて陰ながらにこちらを助けてくれるつもりなのだろう。
四季崎はどこにいても聞こえるような大きな声を出した。
「神楽か! 助かった!」
四季崎は銀鏡に援護射撃があると思うとさらに安心感が増した気がした。対して、頭目は少し苛立ちを示しながら「銀鏡神楽か…」と舌打ちをしていた。頭目はすぐに余裕のある表情に戻ると軽口を叩き始めた。
「森にネズミが迷い込んでたか。恥ずかしがってないで出てきたらどうだ? おじさんが遊んであげようじゃないか」
頭目は銀鏡の反応を伺うように祭祀場を囲むように生い茂る森見渡した。
『おっさんと遊ぶ趣味はねぇよ!ひとりでにやってろ!』
銀鏡の声はまるで森中から聞こえてくるように響いて居場所を掴むのが困難だった。頭目さらに苛立ちを募らせると手を上にかざした。
『魔弾、飛散しろ』
上にかざした手のひらの上に人の頭ほどの風が収束していった集まりだした。
《シフネーア スプレット ダート》
発動と共に収束していた風が弾けるようにして三百六十度全方位に小さな小石程度の風の弾丸が周辺の森を襲った。轟音と共に、衝撃を受けた木々は自重に耐えかねてメキメキと音を立てて何本か折れ、土埃と生木が砕ける青臭い匂いが一帯に立ち込めた。
石舞台では突然の広範囲に及ぶ被害に、聖騎士から恐怖で慄く声が、仲間からは悪態をつく声が、聞こえてきた。
「はぁ!流石にこれで死んだろ?」
頭目に少し余裕の表情が戻ったが、それと同時に森から銀鏡の声が響いた。
『残念だが、まだ生きてるよ!射撃の腕が無いみたいだなおっさん?』
「やっぱり広範囲攻撃だけじゃ無理か……面倒な相手だ」
頭目が失敗すると分かっていたような様子だった。四季崎も銀鏡の攻撃に合わせて動こうと身構えたが、
『是空!お前は今は休め!』
銀鏡の言葉を聞いたと同時に思い出したように肩が痛み出し包帯が少し血に染まっているのが見えた。
(さっきの一撃で傷が悪化しました。無茶はできてあと一回といったところですか)
四季崎は銀鏡に言われるがまま戦線から離脱し近くの瓦礫に背中を預け、ポーチから回復薬を取り出すと気休めでしかないと分かっていながら、惜しげもなく飲み干した。口の中の切り傷に刺すような嫌みが伝わるが、やはり、ほとんど変化が見られなかった。
四季崎の逃亡を許さないとばかりに頭目は四季崎に向かって風の魔弾を放とうと発動し放ったが全て銀鏡の放った矢によって撃ち落とされた。銀鏡はその際に頭目本人にも矢を放ったが風の結界によって矢は当たるどころが途中で力なく落ちていくだけだった。
(飛来避けの加護か。仮になかったとしても、この風の結界は普通の矢では砕けそうにない……)
銀鏡は矢に筒を取り付けると頭目に向かって放った。今まで通り矢は風に阻まれ地面に落ちると大量の煙を生み出した。煙は頭目の周りに吹き荒れる風によってその全貌が明らかになった。
(加護の範囲は大体二メートル程度、気流は一定方向に外に向かって流れ、上に向かっているっと……じゃあ、上には何はある?)
銀鏡は場所を特定されないように位置をこまめに変えながら、今度は矢に別の筒を取り付けると頭目の頭上に向かって放った。矢は吸い込まれるようにして頭目の真上に落ちていったが、今度は風の結界に触れた瞬間、矢は粉々に砕け散り、取り付けられた筒にもヒビが入ると大きな爆発を巻き起こり、鼓膜を揺らす轟音と熱を帯びた爆風辺り一帯に爆風を撒き散らした。
それでも風の結界は一切に変化することなく、一定の動きを続けているように見えた。
(爆風でも揺らぐことがないか……いよいよ手詰まりって感じだが……どうする?)
だが、頭目の表情は先ほどまでとは一転し、わずかに顔を硬くし、視線を鋭く頭上へと向けた。
「そろそろ鬱陶しいネズミにもうんざりしてきたな。さっさと出てこい!出ねぇってんなら、あんたらの仲間がまた殺すだけだぞ?」
頭目のわずかに声の調子を荒げた。その言葉は、目の前の盗賊との戦闘で必死な聖騎士たちには、その真意が届いていないようだった。彼らはまだ、自分たちの命が今まさに天秤にかけられていることに気づいていない。
頭目は手を聖騎士側に向けると有無を言わさず魔法を発動したが、銀鏡はそれを矢で撃ち落とした。
『いくらやっても無駄じゃないか?』
しかし、頭目には狙いがあるようで、笑いながら、もう一度魔法を放とうとした。
「どうかなネズミさん。あと何本残ってる?ここに来るまでにうちの魔獣使いを倒すのに何本使った?もし仮になくなっても大丈夫か。あんたには魔法の矢を打つことぐらいは造作もないからな。でも待てよ?魔獣使いと戦った時に戦術魔法を使わなかったか?そうなると魔力も心もとないかもな。そうなると俺の魔法をあと何回まで止められる?」
(こっちの情報は筒抜けか……)
頭目は銀鏡の不安の感情を煽りながら詠唱を紡いだ。
『星々の瞬きに等しき、無数の弾丸となりて、我が宿願を果たす一助となれ』
頭目は詠唱すると今までの比ではない数十個もの風の魔弾を生成してみせた。
「だからと言って長期戦は趣味じゃねぇんだよ俺は。最後の忠告だ。今すぐ出てこい。じゃなきゃここにいる全員あの世行きだ」
銀鏡は下唇を強く噛みながら、苦い顔しながら、森の木から飛び移るようにして祭祀場の建物跡の上に降り立った。
「これでいいのか?おっさん」
頭目は魔法を中断すると、拍手で出迎えた。
「仲間思いのいい判断だよ。銀鏡くん。これで楽しく遊べそうだ」
私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。




