祭祀場襲撃事件 06
四季崎是空は、異端者としての過去を持ちながらもギルドの一員として成人の儀の警備任務に参加することになる。
会議で仲間たちと打ち解け、現地調査のため夜の街道を訪れた彼は、迷子の少女・小暮涙と出会い、優しさと責任感から彼女をカルマティアの城門まで送り届ける。
少女との別れと贈り物の交換を経て、四季崎はギルドへ戻り、深い眠りに就く。
翌朝、寝過ごしたことに気づき焦るが、親友の銀鏡に励まされ、共に祭祀場へ急ぐ。
穏やかな草原を抜ける中、二人は周囲の異変に気づき、戦闘の予感とともに警戒を強めて現場へ向かう。
四季崎は新手が現れたと思い、警戒をしたが、茂みから現れたのが銀鏡だと分かると、警戒を解くと彼の無事に安堵した。彼は肩に盗賊風の女性を肩に担いでいた。
銀鏡はその足取りで四季崎と一角隊長の前までしっかりとした足取りで近づいてくると、肩に担いだ盗賊風の女性を煩わしそうに下ろした。女性は気絶しているようで、更に両手両足をしっかりとした紐で頑丈に拘束されていた。
「森に潜んでた魔獣使いだ。護衛に付いてた数名は始末するしかなかったが、コイツだけは尋問のために生け捕りにしたが、それでよかったか?」
それなりに重かったのか、肩を回すように疲れをほぐしながら、一角隊長に確認すると、「あぁ、助かる」と感謝された。
四季崎たちは魔獣使いが目を覚ますまで現状の警戒態勢を維持するため、新人の冒険者たちは広場の外周を警戒するように展開し、一角隊長は子どもたちを安心させるように色々と話をしていた。銀鏡は捕まえた魔獣使いを見張るためにその場に残った。
四季崎は最後に魔法を放った自分の顔見知りの人物である風運の元へ向かった。
「君には助けられたよ。風運くん。ありがとう」
初めての戦闘だったのか、興奮気味の風運に四季崎の不意の感謝を示すと、彼は照れくさそうに視線を逸らしながら、腰に手を当てた。
「はぁ!当然だろ?あーでもしなきゃ、俺が危なかったんだ」
「それに君は二日前に船で会ったときよりも格段に強くなっているようだが、どうやってそこまで強くなれたのかな?」
四季崎の心からの疑問に風運は一瞬硬直したかのように微動だにしなくなり、何か悪夢を思い出したかのように脂汗をかき始めた。
「お、お前には関係ない話だ……それと、あれだ……船の時はその……悪かったな。俺もカッとなりすぎた」
よほど、謝りたくなかったのか視線をそらしたまましどろもどろになりながら、謝罪した。
(なるほど、相模さんにこっ酷くしごかれたからか。あの人は少女……確か、伊勢くんだったかな?の約束を守ったのか)
四季崎は相模のその有限実行力に感心しながら、もう一度風運に視線を向けてみると、よく見ないとわからないくらいに体中に訓練の跡が見受けられた。
四季崎は最後にもう一度お礼を告げると今度は一角隊長の元に向かった。隊長は四季崎に気づくと軽く手を上げて答えると子どもたちから離れて彼の元に向かった。
「遅れてすみませんでした。私の日々の管理を怠ってしまったためです」
四季崎は第一声に謝罪をすると深く頭を下げた。隊長は下げた四季崎の頭を荒々しく撫でた。
「気にすんな。今回に限っては不幸中の幸いだ。もしお前と銀鏡がここにいたら、、現状を打開することはできなかっただろう」
隊長は四季咲きを安心させる言葉をかけると、祭祀場の入り口に待機させていた仲間について訪ねてきた。四季崎は実際見たありのままを話すと表情を暗くさせた。
「あそこに配置したのは、入って間もない新人だ。これからって時にクソ!」
一角隊長は悪態をつきながら、顔を伏せたが、少しすると視線を上げ、周囲を見渡した。
「魔獣が戻って来る気配はないか!」
その一言に周囲を警戒していた冒険者たちは各々返事し、安全を確認した。
「ここは四方が囲まれていて守るには不向きだ。ここを離れて一刻も早く聖都に帰還する」
四季崎もそれに納得し下山の準備を始めると子どもたちが皆エルフであることに気づいた。
「隊長。モルフェ族の子どもたちは?」
隊長は確認するまでもないと言わんばかりに、祭祀場の方角に視線を送った。
「まだ、祭祀場に残ってるが、安心しろあっちには精鋭の聖騎士がついている。そこら辺の盗賊崩れに遅れを取らんさ」
隊長の信頼している聖騎士なら大丈夫だろうと思ったところで、気絶していた魔獣使いがうめき声を挙げて起き始めた。
「盗賊崩れ?アタシらをそこらの盗賊と一緒にするんじゃないよ」
ニタニタと笑いながら、そう答えると、銀鏡が掴みかかろうとしたが、それよりも早く詰め寄った一角隊長は胸倉を掴み吊し上げた。
「テメェらはなにもんだろうと、彼らが負ける道理はねぇ」
そんな状態になっても自分たちにまだが優位であるかのように笑っていた。
「ハッハ!彼らが?所詮は聖騎士でも中堅程度だろ?アタシらは大陸を股にかける大盗賊 『フクロウの瞳』だよ?」
それを聞いて誰も反応できず、唯一大陸全土を渡り歩いている四季崎に視線が集まった。
「申し訳ないが、私も聞いたことがない組織だ」
あまり知られていないことに本人が一番動揺を示し、「話しが違ぇぞ」と悪態をついていたが、余裕の態度は崩さなかった。
「何にせようちの頭目は化物だぞ?騎士程度……」
隊長は魔獣使いが最後までいい切る前にその頬を思いっきりぶん殴った。
隊長は殴った方の手についた血を服で拭き取ると祭祀場に視線を向けた。
その時だった、祭祀場に続く道からモルフェ族の子どもたちが我先にと降りてきたのだ。一番先頭にいたモルフェ族の子供を隊長が捕まえると事情を聞いた。
しかし、話す内容は支離滅裂であまり理解できず、次第に集まってきた子どもたちが矢継ぎ早に話していったことで大体の状況が掴めた。
どうやら、儀式中に突然何者かが襲撃してきて祭祀場が混乱に陥ったそうだ。しかし、その場にいた聖騎士と祭祀場周辺に配置されていた冒険者の数名が駆けつけてきて一時はその場を持ちこたえていたが、その中でも一番強くリーダーらしき人物が冒険者を皆殺しにし拮抗が崩れたそうだった。
聖騎士は子供を守りながらの戦闘は困難と判断し、子どもたちだけでも逃がすように退路を築くと彼らはその場に残って戦っているようだった。
隊長は状況を判断するように考え込んでいると四季崎は降りてきたモルフェ族の中に伊勢がいないことに気づいた。
子どもたちに聞いてみると丁度伊勢らしき人物の儀式中での出来事でその場に残っているかも知れないらしい。
(まだ、逃げ遅れた人がいたのか……。今まともな戦力と言えるのは私と銀鏡、あと一角隊長くらいか……。一角隊長は避難誘導の指揮を取る必要がある。避難に際して銀鏡の索敵能力は必須だ。ならここは……)
四季崎は即座に現状を分析すると、銀鏡の肩を掴んだ。
「まだ逃げ遅れがいる。私は祭祀場に行って聖騎士の援護に向かう。みんなは先に下山してください」
銀鏡は四季崎の判断を信じているかのように一度頷くと、「早く向かえ」と促した。
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