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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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祭祀場襲撃事件 05

四季崎是空は、異端者としての過去を持ちながらもギルドの一員として成人の儀の警備任務に参加することになる。

会議で仲間たちと打ち解け、現地調査のため夜の街道を訪れた彼は、迷子の少女・小暮涙と出会い、優しさと責任感から彼女をカルマティアの城門まで送り届ける。

少女との別れと贈り物の交換を経て、四季崎はギルドへ戻り、深い眠りに就く。

翌朝、寝過ごしたことに気づき焦るが、親友の銀鏡に励まされ、共に祭祀場へ急ぐ。

穏やかな草原を抜ける中、二人は周囲の異変に気づき、戦闘の予感とともに警戒を強めて現場へ向かう。

――少し時間が遡る――


* * *

 四季崎と別れた銀鏡は森の中に入ると自分の存在を襲撃者から隠すために、すぐさま魔法の詠唱を始めた。


《光ある世界から俺を逃がせ》


 ローブのフードを目深にかぶると魔法がない状態でも周りの景色と同化するようにすると魔法を放った。


ローウィス() ディシーブ()


 銀鏡は《潜伏》の魔法によって周りの人からは完全に姿を見えなくなった。彼は鬱蒼とした森で、一番高い木の上に登ると、彼は枝と完全に同化するように身を潜めていた。


 昼の日差しが眩しい。


 彼の視線は、幾重にも重なる葉の隙間を縫って、地表のあらゆる微細な動きを捉えようとしていた。わずかに揺れる下草、陽の光を反射する露のきらめき、そして何よりも、不自然なほど静まり返った空間に耳を澄ます。


 風の音、鳥のさえずり、遠くで響く小川のせせらぎ。それらは森が奏でる自然な音であり、銀鏡の聴覚はそれらをフィルターにかけるようにして、その奥に隠された「違和感」を探し出しながら、視線を広場に向けた。


(是空の奴、各個撃破の奇襲で魔獣の数を減らす作戦にしたか……って、魔獣の数思ったより多いな。1……2……20匹か。これは後でアイツにドヤされるな)


 襲撃者の捕縛の事を考えながら、頬を吊り上げると視線を森全体に戻した。


 その後銀鏡は相手に気取られないようにするために、まるで石像のように微動だにしなかった。


 筋肉は緊張状態を保ちながらも、その呼吸は信じられないほど静かで、まるで止まっているかのようだ。精神の集中は一点に絞られ、研ぎ澄まされていた。


突如、銀鏡の右耳が微かに震えた。


 木の葉が擦れる音ではない。動物が歩く音でもない。それは、ごくわずかな、しかし確かに存在する「存在」の気配だった。


(奴ら、是空に魔獣の数を減らされて、相当焦ってるな)


 隠れていた襲撃者のほんのわずかな呼吸の乱れた音は森の喧騒に紛れてしまえば誰も気づかない。しかし、その音に銀鏡は確実に捉えた。


 さらに集中力を高める。


 心臓の鼓動すらも制御し、体内の血液の流れまで意識から切り離そうとする。視線は特定の場所へと固定され、その一点を見つめる。


 次の瞬間、銀鏡の目に、陽光に照らされた土の色とは異なる、かすかな影が見えた。


 それは一瞬のことで、幻だったのかとさえ思えるほどだったが、銀鏡は確信した。


 いた。


 彼らは、まるで周囲と同化するように自分たちの姿を木々で偽装していた。その動きは、冒険者である我々に気づかれまいとする臆病者のそれだ。


(是空の陽動が功をそうしたな。数は4。中央で守られているのが魔獣使いっぽいな。それにしてもあの身なり、盗賊か?それにしても動きに無駄がない)


 銀鏡は、彼らの意識が完全に広場に向くのを待った。


 焦りは禁物だ。


 彼らの奇襲に対して一切の警戒心をなくすのをじっくりと伺った。


(広場で是空の奇襲が止まった……あっちもアイツの動きに意識を向けたな?今が好機!)


《運命は 決した。その選択は絶望にまみれ、その運命を恐れた。全ての結果に虚実入り混じる……》


 気配が冷たく鋭く研ぎ澄まされていくのを感じた。銀鏡は深く息を吸い両目を閉じ、精神を集中させていく。


《……運命の選択は無限大。ならば私はその全ての可能性を掴み取ろう》


アウディーロ(虚実) デイズアフター(混濁の)レルム(水鏡)


 自身を水の球体に覆われると、すぐに水の球体がパチンと弾けるようにして割れると、そこには本物と偽物の二人の銀鏡が現れた。


 二人は言葉をかわすことなく、動き始めた。


 一人はそのまま盗賊を警戒し、一人はそのまま地面ヘと降り、姿をくらますと盗賊を狙撃できる場所で待機した。


 分身が位置につくのを魔法による感覚共有で知ると腰から矢を二本つかみ取った。


(まずは二人……)


 銀鏡は一本ずつ標的の頭に狙いを定めると迷うことなく、放ち二射とも見事に命中させた。


 突然の奇襲に動揺すると、すぐさまその場を離脱しようとした。しかし、それを読んでいたかのように茂みから分身体が姿を表し逃走を阻止した。


 木の上の銀鏡と分身体が同時に深く瞼を閉じると二人は入れ替わっていた。


「よう!盗賊ども。これで詰みだ。大人しく投降しろ!」


 護衛をしていた盗賊が最後のあがきとばかりに短剣を振りかざし襲おうと一歩踏み出した瞬間木の上に分身体が放った矢が地面に刺さった。それに動揺し動きを止めた盗賊の胸の真ん中に矢を放ちそのまま仰向けに倒れた。


「これで完全に詰み……ってこの状況で逃げるか?」


 盗賊の魔獣使いは銀鏡に背を向けて一目散に逃走をしようとした。


 銀鏡はその貪欲なまでの生存本能に関心半分、呆れ半分といった反応を示すとすぐに矢を番えると膝を射抜いた。


 魔獣使いはそのまま頭から倒れ込み強打すると気を失った。


 銀鏡はこれで一段落したと息を吐くと、魔獣使いを担ぎ上げて四季崎たちのもとに向かっていった。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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