祭祀場襲撃事件 01
四季崎是空は、異端者としての過去を持ちながらもギルドの一員として成人の儀の警備任務に参加することになる。
会議で仲間たちと打ち解け、現地調査のため夜の街道を訪れた彼は、迷子の少女・小暮涙と出会い、優しさと責任感から彼女をカルマティアの城門まで送り届ける。
少女との別れと贈り物の交換を経て、四季崎はギルドへ戻り、深い眠りに就く。
翌朝、寝過ごしたことに気づき焦るが、親友の銀鏡に励まされ、共に祭祀場へ急ぐ。
穏やかな草原を抜ける中、二人は周囲の異変に気づき、戦闘の予感とともに警戒を強めて現場へ向かう。
二人は警戒しながら、ゆっくりとしかし、速足で先に進んでいった。しばらく、進んでいくと無造作に岩が隆起した場所に到着すると遠くの方で金属がぶつかるような音が響いてきた。四季崎は銀鏡に視線を送ると無言で頷き、一人別れてどこかへ行ってしまった。
四季崎が単独行動に映ったのを確認すると、四季崎は『四季』の長さを変えると、音がする方へ足音を殺して向かい、岩陰から戦闘の状況を伺った。
そこには昨日の会議室で出会った新人の冒険者が満身創痍で大きな岩を背に立っていた。彼は折れた剣を、それでも自分を守るように構え何かから身を守っていた。しかし、それが精いっぱいであるのが、一目瞭然で彼はかろうじて直立を保っているのがやっとだった。
その細腕から、止血もされないまま血がとめどなく流れ落ち、足元の土を赤黒く染めていた。痛みと絶望に歪んだ顔は、もはや少年の面影をなくし、それでも彼の瞳の奥には、消えかけた炎のような闘志が宿っていた。
すぐ近くには、もう一人の冒険者がうつ伏せに倒れ込んでいた。血だまりは、彼女の身体を中心にじわりじわりと広がっており、泥と血で汚れた衣服は、もはや元の色を判別できないほどだった。彼の呼吸が止まっていることは、一目でわかり、昨日、四季崎に尊敬の眼差しを向けていた仲間が、今、無残な骸と化している。
風が吹き荒れるたびに、錆びた鉄と生臭い血の混じった臭いが鼻を突き、聞こえる魔獣の咆哮は、彼に対して、死の宣告を告げているようだった。しかし敵の姿は見えない。しかし、この惨状を作り出した何者かが、すぐそこに潜んでいるのは明白だった。
四季崎が岩陰から姿を現した瞬間、新人冒険者の瞳に一筋の光が宿ったように輝いた。絶望に沈んでいた顔に、目に見えて希望が満ちていき、その光景は、まるで乾いた大地に恵みの雨が降り注ぐようだった。
しかし、その希望は一瞬にして掻き消される。少年の表情は、再び深い絶望へと沈み、「四季崎さん!後ろ!!」と、喉が張り裂けんばかりに叫んだ。その声は、この荒野に響き渡る魔物の咆哮にも劣らない、魂の叫びだった。
四季崎は、少年の叫びを聞くよりも早く、背後に迫る殺気に気づいていたかのように身を翻した。彼の動きは淀みがなくなめらかだった。風を切る音が耳元を掠め、彼は間一髪で身を屈めた。その瞬間、彼の頭上を巨大な何かが通り過ぎていった。
四季崎が身を屈めることで、襲撃者の急襲は虚しく空を切るとその直後、彼は素早く身を起こし、襲撃者を正面に捉えた。
ノクターン・リーヴァー。別名、夜の略奪者。
その毛皮は、夜そのものを纏ったかのように深い黒で、動くたびに銀色の小さな斑点が星のようにきらめく。瞳が、エメラルドグリーンの光を放ちながら、視線は鋭い。口元から覗く白い牙は、月光を受けて冷たく光り、獲物を仕留めるための力強さと、どこかしなやかな美しさを兼ね備えている。
ノクターン・リーヴァーはその緑色の瞳で四季崎を捉え続け、隙を伺っているようだった。ノクターン・リーヴァーが一歩踏み出すたび、太く黒光りする爪が地面をしっかりと掴み、岩場に爪痕を残していった。
(ノクターン・リーヴァーか。新人には荷が重い相手だ。しかし、ナノス大陸に生息しているはずのノクターン・リーヴァーがなぜここに?それにこいつは夜行性のはずだ)
現状の異常事態にいろいろな可能性を探りながら、ノクターン・リーヴァーの出方を伺っていた。
先に動いたのは、ノクターン・リーヴァーだった。正面から四季崎の喉元を食らいつかんと大きな口を開けて飛びかかってきた。四季崎はそれに対して強く一歩を踏み出すと『四季』を長い柄を大きく振り回し、遠心力で軌道を横へと広げノクターン・リーヴァーの首元を横から力強く叩きつけた。
目標に到達できず、四季崎の一撃で横に吹き飛ばされ、地面を転がった。まだ起き上がれないでいるノクターン・リーヴァーにすかさず駆け寄り、その首元を思い切り踏みつけた。鈍い音とともに頸椎が砕け、ノクターン・リーヴァーは動かなくなった。
四季崎が振り返り、『四季』を構えた瞬間――岩陰から機会を伺っていた銀鏡の矢がノクターン・リーヴァーの頭部を正確に射抜く。敵は呻き声を上げる間もなく、その場に崩れ落ちた。
今ので最後だったのか、今まで気力だけで立っていた新人の冒険者は、膝から崩れ落ちるようにその場に倒れ込んだ。それを見た四季崎は、地面に頭を打ち付けるよりも早く駆け寄り、彼の体をしっかりと抱きかかえた。近くで見ると、彼の体は血と泥にまみれ、息をしているのが奇跡のように思えた。
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