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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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成人の儀 前夜 07

物語は、主人公の四季崎しきざきがギルドで旧知の仲である銀鏡しろみと偶然再会する。

銀鏡に誘われ、隠れ家のような店を訪れた四季崎は、そこで極秘任務である「成人の儀」の護衛を依頼される。

依頼を引き受けた四季崎は、自身の武器である『四季』の性能を拡張する「可変機構」を受け取る。

彼はその夜、来るべき任務に備え、夜通し武器の手入れに没頭してしまった。

翌朝、四季崎はギルドで再び銀鏡と遭遇し、模擬戦を行うことになった。

演習場では、銀鏡が弓矢と体術を組み合わせた巧みな戦術で四季崎を翻弄します。

銀鏡は矢の軌道を隠したり、煙幕で視界を奪ったりと、次々に変化に富んだ攻撃を仕掛けますが、四季崎は卓越した身体能力と冷静な判断力でこれらに対応していきます。

 四季崎が指さした先にあったのは、カルマティアの城門がうっすらと見えてきたところだった。


城壁はそびえ立つように高く、上には衛兵が、松明を持って巡回している様子が炎の動きで見て取れた。城門には軽鎧に身を包んだ長い槍を持って衛兵が、こちらに睨みをきかせており、忍び込むのは不可能のように感じられた。


(この距離なら、私の顔や容姿はわからないだろう……)


 四季崎は先を伺うように立ち止まり、真剣な面持ちになると、小暮はここまでなのだと分かった。彼女は立ち上がると別れを惜しむように悲しんでいるように見えた。


「あそこに見えるのが、カルマティアです。ここからそんなに離れてはいませんし、衛兵にもこちらが見えていますので、心配はいらないでしょう。それでは、明日は頑張ってください」


 そういうと、別れるように四季崎は背を向けて去っていった。小暮は名残惜しそうに彼の背中を見送ろうとしたが、思い出したように、何かお返しができないものかと考えると、手に持っていたカバンから青みがかった瓶を取り出すと、駆け足で四季崎に近づくと彼のコートの裾を引っ張って止めた。


「報酬になるかは分かりませんが、これを受け取ってください」


 急にコートを引っ張られ、振り返ると、そこには両手で瓶を掲げてこちらに差し出す小暮が顔を赤くしながら俯いていた。


「これは誰かへのお土産ではないのですか?」


「これ以外にもいっぱい買ってますし、一つぐらいなら、大丈夫です!」


 半ば押し付けられるように渡させると、四季崎は代わりにとばかりに彼女が興味を示していた焼き菓子の入った紙袋を彼女に手渡した。


「それではお返しにこれをお渡ししますね。私には少し甘すぎたみたいです」


 差し出された焼き菓子を見た小暮は抗いきれない誘惑に負け、焼き菓子が入った紙袋を受け取ると「これでは報酬の意味がありませんよ」と小さな講義をすると、途中から笑い声に代わっていた。


「これで本当にお別れですね、四季崎さん。ここまでありがとうございました。このことは一生忘れませんね」


 別れの寂しさを吹っ切るように、小暮は大きく一歩後ろに下がると、片手で胸元の服を握りしめるようにしながら、背中を向けると、小走りでカルマティアの門へ向かっていった。


 少しすると、門に到着した小暮に驚きと戸惑う聖騎士の姿が見え、ちょっとした騒動になっていた。


(もう大丈夫そうですね。私も早く、セントナーレに戻りましょう)


 速足で、セントナーレの前まで到着すると、出るときにはいなかった衛兵が門を守るように立っていた。四季崎の存在に気づいた衛兵は警戒するように槍を構えると、止まるように命令した。


 四季崎は命令に従い、その場に止まると、身元を説明し、懐に通行許可証があることを説明した。衛兵はそれを出すように言われ素直に従うとそれを近づいてきた衛兵に渡した。


「確認した。通っていいぞ。お前も、こんな時間まで外にいると、密航してきた盗賊と間違われるぞ」


 衛兵に叱られながら、セントナーレの門をくぐると、外には夕方の喧騒が嘘のように静まり返っていた。


 夕食時の喧騒は鳴りを潜め、ほとんどの飲食店は閉店し、通りを照らしていた華やかな灯りはまばらとなり、外灯の方が周りを照らしているくらいだった。辺りに立ち込めていた肉の焼ける香ばしい匂いや異国のスパイスの香りは薄れ、代わりに夜の湿った空気と、わずかに残る調理の残り香が混じり合い独特の香りを醸し出していた。


 テラス席や店内で賑わっていた人々は姿を消し、静寂が支配し、路地裏などではまだやっているのが一部の居酒屋からのほのかな明かりを見ると、ひっそりとした話し声やグラスの触れる音が漏れ聞こえるような気がした。よく見ると、路地裏では酔っ払いがふらふらと歩いていたり、酔いつぶれて寝てしまっているものまでいた。


 そんな東通りをかけ向けるようにして通り過ぎるとギルドの前まで来た。


 一階はまだ明かりがついており、まだだれかがいるようだった。四季崎は安心してゆっくりと扉を開けて中に入っていった。


 さすがにこの時間にはエントランスには誰もあらず、ただ、受付でイリーネが机にかじりつくように仕事をしているだけだった。部屋の鍵を受け取ろうとイリーネに声をかけようとしたら、彼女は仕事をしているわけではなく、机に突っ伏して寝ているようだった。


 彼女の髪はまるで銀色の海が広がるように机の上にフワッと広がり、普段は光を宿している優しい青い瞳は瞼を覆い隠していた。規則正しくリズムを刻むように上下する背中を見ながら、彼女の普段の激務が伺えた。


(仕事量が少ないとはいえ、ギルド本部の仕事を一人で全て捌いている彼女を考えると疲れて寝てしまうのは仕方ないのかもしれない……)


 四季崎は彼女を起こさないように途中からゆっくりと近づいていくと、受付の壁に掛けてある部屋の鍵に手を伸ばした。すると、四季崎の気配に気づいたように、バッと身体を起こして周りを見渡した。その時、頬にくっついていた書類が剥がれ落ち床に落ちた。


 透き通った青い瞳が鍵をこっそり取ろうとしている四季崎を捉えた。四季崎がしようとしていることを寝起きの頭で理解すると、目を細めた。


「四季崎様……おそいですよぉ……!」 


 むくれながら、そう呟くと、机に散らかった書類を整え始め、落ちた書類を拾った。


「すみません。ちょっと事情がありまして、遅くなってしまいました」


 鍵を取るのを諦め、受付の前まで移動すると、四季崎が外での出来事を説明した。それを聞くと、納得はいかないまでも理解したようだった。どこか納得いかないように「事情はわかりました」とむくれた口調で答えた。


 イリーネは、四季崎の代わりに鍵を取ってと渡した。四季崎が申し訳なさそうにしながら、鍵を受け取った。


「ありがとうございます。私はこれで休みますが、イリーネさんも早く休んで方がいいですよ?」


 そう伝えると、「誰のせいでここにいると思ってるんです。もう!」と憤慨すると、書類仕事に戻っていった。


 四季崎は部屋に戻ると、服を脱ぎ棄てると、浴室に行きさっと汗を流すとすぐに出ると、小暮にもらった瓶を手に取った。


(せっかく、もらったものです。早めに飲んでしまいましょう)


 蓋を開けると一気に飲み干した。口に含むと、果物の優しい甘みと、ほのかにハーブのような落ち着く香りが広がり、まさに心を解きほぐしてくれるような感覚がした。少しすると、段々と瞼が重くなり、そのままの勢いで、ベットに倒れ込むように寝てしまった。


私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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