成人の儀 前夜 06
物語は、主人公の四季崎がギルドで旧知の仲である銀鏡と偶然再会する。
銀鏡に誘われ、隠れ家のような店を訪れた四季崎は、そこで極秘任務である「成人の儀」の護衛を依頼される。
依頼を引き受けた四季崎は、自身の武器である『四季』の性能を拡張する「可変機構」を受け取る。
彼はその夜、来るべき任務に備え、夜通し武器の手入れに没頭してしまった。
翌朝、四季崎はギルドで再び銀鏡と遭遇し、模擬戦を行うことになった。
演習場では、銀鏡が弓矢と体術を組み合わせた巧みな戦術で四季崎を翻弄します。
銀鏡は矢の軌道を隠したり、煙幕で視界を奪ったりと、次々に変化に富んだ攻撃を仕掛けますが、四季崎は卓越した身体能力と冷静な判断力でこれらに対応していきます。
まだ、不安が残っているのか、どこか、遠慮がちに尋ねてきた。四季崎は少し考え込むと、少女は何かを誤解したように悲しそうに俯いた。
「ご、ごめんなさい!そうですよね。報酬もないのに、護衛なんて虫が良すぎますよね?忘れてください」
俯きながら、両手を振って忘れるように願いその横顔には涙が浮かんでいた。
「誤解しないでください。元々そのつもりでしたから。ただ、途中までしか行けないですが、よろしいですか?」
少女は再び不安に襲われたように、「どうして?」と悲しそうに尋ねた。
「私にも事情があって、カルマティアには入れないです。でも、大丈夫です。エセルニアは平和な大陸ですし、聖都の門には衛兵が駐屯してます。それに砦には常に見張りがいますので、万が一にも何かあることはありませんよ」
四季崎は少女を安心させるように説明した。少女はどこか不安を感じながらも、納得したようで無言小さく頷いた。四季崎はそれを承諾と受け取ると体を預けていた岩から身体を話すと少女に近づくと視線を合わせた。
「わかりました。カルマティアまで行きましょう。一応、名前を教えてもらえますか?」
少女も四季崎に視線を合わせると少し恥ずかしくなったのか、すぐに視線を逸らした。
「えっと、私、小暮 涙っていいます。お兄さんは?」
それに対して、「四季崎 是空ですよ」と答えるとどこか安心した面持ちで立ち上がると服の汚れを払った。
今まで張り詰めていた緊張から解放されたように、肩の力抜けたように、こちらへのわずかな信頼と安心感を感じさせた。まるで、暗い夜道で不安に押しつぶされそうな時に、途中で、道を照らす温かな外灯の光を見つけたようだった。
「大丈夫ですか?歩けますか?」
立ち上がったばかりの小暮を気遣いながら、頷く、小暮のスピードに合わせるように歩き始めた。最初は言葉はなく、どこかよそよそしかったが、少しずつ話すうちに話すようになってきた。
「エセルニア大陸には初めて来たんですか?」
四季崎は小暮に不安を感じさせないように会話を続けようとした。彼女もそれを察したように、彼の話に合わせた。
「はい……今までディームを出たことがない……です」
「ディーム……ということは、君は、マーメイド族なんですね。それにしても、黒髪とわ珍しい」
「珍しい……ですか?そういえば、ディームでもあまり見たことありません」
「そうですね。マーメイド族の髪は青色に近い髪が一般的ですから」
「へーそうなんですね。勉強になります。えーっと四季崎さんはどちらの出身なんですか?」
「私ですか?私は……エルフィコス大陸の首都であるシルフィリアというところです。分かりますか?」
小暮は考えるような仕草をすると、すぐに思い当たらなかったのか、小さく首を振った。
「ごめんなさい。でも、エルフィコスといえば、エルフ族の大陸ですよね?博識で魔法に長けた。だから、四季崎さんは詳しいですね。もしかして、魔法もお強いんですか?」
それを聞かれ、答えられず、固まってしまい、会話が止まってしまった。それを聞いて、自分が何かまずいことを聞いてしまったと察した小暮は慌ててしまった。
「す、すみません!エルフ族でも魔法が苦手な人もいますよね?何かすみません」
小暮は申し訳なさそうに、俯きしゃべらなくなってしまった。
(しまった。つい、黙ってしまった。この場を何とかしなければ……)
内心では焦りどうしようか、と考えていると、先ほど水筒を取り出した際ポーチにあるものが入っている事を思い出した。
四季崎は、水筒を取り出したポーチと同じ場所から紙袋を取り出した。
「気を遣わせてしまい、すみません。お詫びと言っては何ですが、よかったらどうですか?ここに来る前に買ったものなんですが、よかったらどうぞ」
四季崎は、紙袋口を開けて中を見せた。そこには東通りで買った焼き菓子がぎっしりと詰まっていた。四季崎は先に自分でつまんで食べて見せた。
しかし、小暮は焼き菓子よりもそれが包まれている紙袋に注目していた。その姿に気になって四季崎もその紙袋に視線を向けた。そこには可愛い動物のイラストの店のロゴが印刷されていた。
「ここがどうかしましたか?」
何気ない一言に、小暮は足を止めると釣られて四季崎も足を止めた。彼女は足を止めた四季崎に詰めよるように一歩前に踏み出すと目を輝かせながら、四季崎を見つめていた。
「え、これってまさか、セントナーレに本店を構える、あの超有名焼き菓子店のロゴじゃないですか!今日、お昼過ぎに本店に行った時には、すでに全部売り切れで、『次の販売時間も未定です』って言われちゃって……。もう、今日はあの絶品焼き菓子は食べられないんだって、本当に諦めてたんですよ。このお店、本店限定の特別な商品も多いんです。特にあの味と香りは、他のお店では絶対に味わえない、まさに至福の体験なんですよ。それに、風の噂でちらっと耳にしたんですけど、まだ一般販売されていない新商品の市場調査を兼ねて、ひっそりと露店で販売しているとかいないとか……!ああ、もう胸が高鳴りすぎて、今すぐあの焼き菓子を頬張りたい気持ちでいっぱいです!」
今までの小暮の様子からは想像もできない元気の良さで早口でこの焼き菓子への熱い気持ちを語り出した。彼女の急な熱量に呆気に取られて固まっていると、自分が我も忘れて語ってしまった事を思い出すと、四季崎から距離を取りながら、顔を真っ赤にしながら、目を回していた。
「あ、すみません!あまりにも興奮しすぎて、つい取り乱してしまいました……!まさか、こんなところで出会えるなんて、思わなかったんです!本当ですよ?お昼には売り切れてて、変えないことにすごい落ち込んで……。だからすごい嬉しかったんです!」
必死に言い訳をするように身振り手振りで説明を始めた。そんな彼女を見てつい、笑ってしまうと、耐え切れなくなり、両手で顔を隠し、その場にうずくまってしまった。
「すみません、つい。でも、それだけ元気が戻れば大丈夫そうですね?」
四季崎は笑う口元を隠しながら、反対の手で道の先を指さした。
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