成人の儀 前夜 05
物語は、主人公の四季崎がギルドで旧知の仲である銀鏡と偶然再会する。
銀鏡に誘われ、隠れ家のような店を訪れた四季崎は、そこで極秘任務である「成人の儀」の護衛を依頼される。
依頼を引き受けた四季崎は、自身の武器である『四季』の性能を拡張する「可変機構」を受け取る。
彼はその夜、来るべき任務に備え、夜通し武器の手入れに没頭してしまった。
翌朝、四季崎はギルドで再び銀鏡と遭遇し、模擬戦を行うことになった。
演習場では、銀鏡が弓矢と体術を組み合わせた巧みな戦術で四季崎を翻弄します。
銀鏡は矢の軌道を隠したり、煙幕で視界を奪ったりと、次々に変化に富んだ攻撃を仕掛けますが、四季崎は卓越した身体能力と冷静な判断力でこれらに対応していきます。
程なくして、調査を切り上げ、帰路に着こうとセントナーレに足を向けると遠くの方から誰かが向かってくる気配が感じ取れた。
(こんな時間に人?この時間に商人は通らないだろうし、カルマティア方面からなら説明がつくのだが?)
四季崎は警戒をしながら、一度近くの岩陰に隠れ、突然の来訪者に対して警戒心を強めた。
聞こえてくる足音はゆっくりとしており、時折止まってはまた動き出した。まるで誰かを探しているかのようだった。
(誰かを探しているのか?……聞こえてくる足音は……鎧のような硬いものではなく、もっと軟かい靴に聞こえる)
四季崎は面倒事を避けるようにその謎の人物をやり過ごすことにした。
謎の来訪者が四季崎の近くを通り過ぎる時、ふんわりと香りが漂ってきた。
(花の香り?女性なのか?)
場に不釣り合いな香りに不審に思い、岩陰からこっそりと様子を伺った。
そこには夜闇には不釣り合いなほど、無謀なそれでいて無防備な小柄な十代半ばの少女がおぼつかない足取り去っていく様子が見えた。
少女は慣れない道を不安そうに見回しながら慎重に進み、か細い目には暗闇への恐怖が色濃く浮かび、涙でうるんだ瞳は月の光を受けてか弱く輝いていた。小さな肩は寒さと不安で縮こまり、胸の内の深い悲しみが伝わってきた。時折物音に立ち止まり、街道脇の森の影に怯えていた。
(こんな時間に、こんな場所で何をしているんだ?)
少女は観光にでも来ていたのか、丈の長い白いシャツにショートパンツ、腰には桃色のパレオを巻いており、足には少し踵が高い黒色のサンダルを履いており、セントナーレに観光のために、おしゃれをしてきたようにも見えた。
(カルマティアからの観光か?でもその場合聖騎士が護衛に付きそうなものだが、、、しかし、本当に迷子だったら放って置く訳には行かないか)
四季崎は色々悩みながらも、少女に声をかけることにした。しかし、警戒を怠らないように常に背中の武器の意識を集中させていた。
念の為、相手に恐怖心を与えないように、少女から少し離れた場所で立ち止まると声をかけた。
「大丈夫かい?」
四季崎はできるだけ低い声でゆっくりと声で優しく声をかけた。それでも、少女は怖かったのか、声をかけられた瞬間、大きく肩を跳ね上がらせ、体が固まるとゆっくりとこちらに視線を向けじっと見つめた。
「だ、誰ですか?」
しばらくすると、四季崎に視線を向けたままゆっくりと距離を取るように後ずさりを始めた。
「怖がらせたなら、申し訳ない。私がギルドの人間で明日の成人の儀の為にここに調査をしていたんだ。君がもし困っているなら、何かを助けになれるかもしれない」
両手を上に上げ敵意がないことを示しながら、近づこうとせず、その場に佇んだ。
少女は小さく頷くと、小さな声で、「助けて」っと呟いた。四季崎は少女が助けを求めていると知ると手を落とし優しく微笑むと視線を合わせた。
「分かった。怖くないから、ゆっくりと事情を教えてくれないか?」
少女は警戒するしながらも後ずさりを止め、小さく震える声で、辿々しく事情を説明してくれた。
少女はどうやら、成人の儀に参加する予定で前日である今日、観光にセントナーレに聖騎士の護衛とともに色々な人と来ていたそうだった。
夕方になって、集合場所に向かう際に怪しい人に絡まれ、身動きが取れなくなり、たまたま居合わせた冒険者に助けてもらったらしい。
「そしたら、集合場所には誰もいなくって……どうしていいか分からなくって……誰にもう頼れないし……助けてくれた冒険者もいなくなって、どうしていいかわからないから、一人で戻ろうとしたら暗くなり……怖くって……」
少女は思い出したかのように話の途中から涙をポロポロと零し出し、最後には嗚咽と泣き声で内容が聞き取れなくなった。
四季崎は少女近くにあった手ごろな石に座らせるとポーチから白い布取り出すと「使ってください」と手渡した。
少女は白い布を見ると少し驚いたように四季崎を見あげるように視線を向けるとか細い声で、「ありがとう」と答えると、布を受け取り目尻を拭いた。
「それは辛かったね。大丈夫。君が落ち着きまで私もここにいよう」
そう言うと近くにあった大岩に身体を預けると、ポーチから新たに水筒を取り出し、一口、口に含み少女の様子を伺った
(本当にまいごなのか……良かった見捨てないで。もし、カルマティアまで護衛するとなると少々厄介なことになりそうだ)
四季崎はこの先の行動を考え始めた。
少女は落ち着きを取り戻すと、涙に濡れたハンカチを丁寧に畳むとお礼とともに四季崎に返した。その目は赤く腫れているが、そこには恐怖心は感じられなかった。
「あの……もしよかったら、カルマティアまで案内してもらえませんか?」
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