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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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成人の儀 前夜 01

物語は、主人公の四季崎しきざきがギルドで旧知の仲である銀鏡しろみと偶然再会する。

銀鏡に誘われ、隠れ家のような店を訪れた四季崎は、そこで極秘任務である「成人の儀」の護衛を依頼される。

依頼を引き受けた四季崎は、自身の武器である『四季』の性能を拡張する「可変機構」を受け取る。

彼はその夜、来るべき任務に備え、夜通し武器の手入れに没頭してしまった。

翌朝、四季崎はギルドで再び銀鏡と遭遇し、模擬戦を行うことになった。

演習場では、銀鏡が弓矢と体術を組み合わせた巧みな戦術で四季崎を翻弄します。

銀鏡は矢の軌道を隠したり、煙幕で視界を奪ったりと、次々に変化に富んだ攻撃を仕掛けますが、四季崎は卓越した身体能力と冷静な判断力でこれらに対応していきます。

 銀鏡は扉を開くと、中の騒々しさが伝わってくるほど賑わいを見せていた。部屋の中央の机を囲むように冒険者らしき若い人たちが任務への期待や旧交を温める会話しており、部屋の隅の方では立派な軽鎧に身を包ん数名の騎士らしい人たちが身内だけでヒソヒソと話していた。


 少しすると、部屋の扉が開いたことに気づいた一人が隣の人に肘を突いて、扉の外にいる四季崎の方を指さし、水の波紋が広がるように伝わると、部屋にいる全ての人が四季崎に視線を送るとまるで部屋の空気が一瞬で凍りついたように静まり返った。


 机に集まっている若者たちは、隣同士で小声で交わされる囁きがわずかに耳に入ってくるが、それが何を話しているかまでは分からなかった。騎士たちはこちらの出方を伺うかのようにじっとこちらを見つめており、そこには冷ややかなものを感じられた。


 気づくと背後で扉がパタンと閉まり、その音だけがやけに大きくそして悲しく響いたように感じられた。


(やはり、こうなったか……。私のような異端者がこのような場に来ること自体が場違いだったんだ……。だから……場の空気が冷ややかなものに変わったんだ。最初から期待なんて……していない)


 どこか自嘲気味に考えを巡らせると、大冠輪廻の儀での出来事を過去のトラウマのように頭の中をよぎり、かすかな後悔の表情を浮かべて顔を伏せた。少しづつ居心地の悪さを感じ始め、段々と居た堪れなくなり、踵を返すようにして部屋を後にしようとした。


 扉を掴もうとした手を銀鏡が素早く掴み止めると、「待て!」と短く叫ぶと四季崎は銀鏡の顔を見た。


「おい!諦めるなって。さっきも言ったろ?ここにいる全員にはお前のことは話してある。もし、お前を異端者って理由で軽蔑するような奴がいたら、そもそもここには来ていないし、誘われないさ」


 四季崎にしか聞こえないように声を低くして話した銀鏡の言葉には確かな自信と信頼が籠っているように感じられた。



















 銀鏡の言葉の後も長く永遠に感じられるほどの時間の静寂が続くと、机の周りにいる若者の一人が「やっぱり……」と声が響くと同時に周りのそれが伝播するように部屋中が熱気を帯びた賑やかさに変わった。


 その熱気のまま机の周りに若者たちは一斉に四季崎の元に駆け寄ってきた。


「あなたはあの……」

「大冠輪廻の儀で海龍を倒した英雄の……」

「四季崎さん!ですよね!あえて光栄です!」

「握手してください!」

「俺も!」「私も!」「ボクだって!」

「どうしたら、そこまでの強さに?」

「それ俺も聞きたい!」

「私だって!」


 その言葉に呆気に取られ、絞り出せた唯一の言葉は「なぜ……」の一言だけだった。


「俺たちも同じなんですよ!」

「バカ!それじゃ分からないでしょ?私たちも教会に異端者って言われた側なんです」

「そんなんです!それで国から追放されて……」

「ギルドに拾われて……」

「それって四季崎さんも同じなんですか?」


 興奮した声が次々と上がっていき、留まることはなく、最後には四季崎を置いて自分たちでどれだけ彼がすごいのかの議論に発達していった。その熱狂的な歓迎と尊敬、共感の眼差しに四季崎は言葉を失った。


 自分と同じ境遇の人たちがいることは分かってはいたが、実際に会ってみたことで今まで異端者として冷遇されてきた人たちに、自分がどれほど勇気を与えていたかを今まで想像もしていなかった。


そのことに、胸を撃たれ、どうすればいいか困っていると、銀鏡はこっそりと耳打ちをした。


「驚いただろ?この重要な仕事にこれほどの異端者が集まっていることに」


 銀鏡に合わせるように四季崎も銀鏡に耳打ちした。


「どうして?」


「異端者がギルドが拾い上げることが多いことは知ってるだろ?そいつら最初は仕事に就くことが難しい」


「そうですね、何の経験もなく、ギルドに入っても仕事ができない。でも、ギルドがそれを支援していますよね?」


「そうだ。その支援の一環としてこの仕事を経験の場にするのが、隊長の今回の目的だ」


 ギルドの支援がこのような形で行われていることを初めて知った四季崎は驚きを示していた。自分が、異端者として追放されてすぐ師匠に出会えたことがどれだけ幸運だったが分かった。


(だから重要任務なのに内密に進められているのか……)


 四季崎は嬉しさと驚き、安堵を隠すように静かに微笑んだ。その笑みを見て銀鏡も嬉しそうに笑うと、四季崎と一緒に若者に囲まれながら部屋の中央の机まで移動した。


 四季崎たちが扉の前からいなくなるのを待っていたかのように、会議室の扉が勢いよく開かれた。全員がそちらに視線を向け、そこに立っている人物を目にした瞬間、一同は一斉に姿勢を正した。


 入ってきた男は期待上げられた肉体に軽装を着込んだ長身の人物は威厳を感じさせる風格を加味し出していた。その人物を目にした銀鏡は四季崎に教えるように耳打ちした。


「あれが今回の隊長を務める一角隊長だ」


私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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