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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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友人との再会と誘い 09

中央貿易都市セントナーレに到着した四季崎は、活気あふれる港と多様な人々の賑わいに包まれながら、三年ぶりにギルド本部を訪れる。

かつて「大還輪廻の儀」で起きた騒動と、その後の苦い記憶が胸をよぎるが、感傷を振り払い依頼の完了報告と武器の受け取り、宿泊手続きを進める。

受付嬢イリーネとの和やかなやり取りで心が和らぐ一方、手続きの最中、かつての仕事仲間・銀鏡神楽と偶然再会。

思いがけない再会に戸惑いつつも、四季崎は新たな出会いと出来事への予感を胸に、再び動き出す。過去と現在が交錯するなか、彼の新たな物語が静かに幕を開ける。

 水の球体がパチンと弾け、その水飛沫に紛れて、十一射目が放たれた。四季崎は彼ならやりかねないと分かっていたように体を少し逸らせるだけで簡単に躱すと外れた矢は演習場の壁にカンッとぶつかる音を響かせた。


 割れた水球の中から、三人の銀鏡が現れ三人の内、中央の銀鏡は弓を構え、右の銀鏡は既に矢を放ち終えた状態で立ち竦んでおり、左の銀鏡は弓を下ろした状態で待機していた。どうやら、矢を放ったのは右の銀鏡らしい。


「是空には初めて見せますね」


 右の銀鏡は話し出した。


「確かに初めて見たけど、内容は大雑把には教えてもらったよ。君に」


 全員の銀鏡が悩んだ仕草をすると今度は左の銀鏡が口を開いた。


「じゃあ、どんな魔法か教えるか」


「それを話した初見の意味がなくなるだろ?」


 しかし、左の銀鏡は笑うだけで何も言わなかった。今後は中央の銀鏡が話し出した。


「どちらにしろ、お前相手なら過信するよりもマシだ」


 そこまで言うと一拍置いて話し出した。


「『虚実混濁の水鏡』名前の通り、本物と偽物が織り交じった俺たちを生み出す戦術魔法だ」


 左の銀鏡今度は話した。


「全員が本物で全員が偽物」


 今度は右の銀鏡が話した。


「それを決めるのは俺自身。それまではすべてが入り混じる虚実入り混じる混濁状態ってわけ。分かった?」


 そこまで聞くとこの魔法がどれほど現状に最悪な結果をもたらしたのか理解した。


「要するに神楽が放った攻撃はお前の任意で本物と偽物を定義できる。だから、当たった攻撃のみを本物とすることが出来るってわけか?」


 その回答を聞いて嬉しそうに全員で「正解!」と答えた。


「ってことは、現状私の条理条件が矢を使い果たす側としては最悪じゃないですか……」


「そういうな、一応そこには条件があるが、それくらいは自分で探った方が楽しいだろ?」


 銀鏡はこれで解説終了とばかりに全員はそれぞれに動き出した。


 中央にいた銀鏡はそのまま残り矢を構えたままこちらを威圧し続け、左にいた銀鏡は時計回りに、右にいた銀鏡は反時計回りに四季崎の周りを回り始めた。四季崎は一瞬誰を追うか考えたが、すぐに無意味だと分かると攻撃に備えた。


(本来なら、各個撃破して本体にたどり着くか、一気に全員に攻撃して、魔法事態の効力をなくすかするが……)


 四季崎の周りを回っていた銀鏡二人が同時に矢を放ってきた。一方は左から胸を目掛けて一方は右から足を目掛けて矢が迫ってきた。


 四季崎は、迫り来る二本の矢に対し、この状況での魔法の特性の不可能だと瞬時に判断した。 彼は地面を力強く蹴りつけ、肉体を宙へと跳ね上げる。同時に、空中で体幹をV字に折り曲げるように体を捩り、胸元を掠める矢の風圧に肺が軋むような感覚を覚える。 しかし、構わず全身をひねりきり、足元を狙った矢を寸前で回避した。躱された矢は、まるで最初から存在しなかったかのように、白い靄となって虚空に溶けて消えた。


 その一瞬の隙を、まるで最初から読んでいたかのように、 中央で静止していた銀鏡が、十二射目の矢を放った。「チィッ!」 四季崎は短く舌打ちし、着地と同時に持っていた棍の石突を地面に深く突き立てる。ミシリと土が軋むその反動を利用し、彼は独楽のように高速で自らの位置を変えた。 直後、彼が元いた空間を、ヒュンと風を切る矢が紙一重で通り過ぎ、背後の地面にプスリと突き刺さる乾いた音が響いた。


(あいつの条件……一度定義したら変えられないとか?……いやそんな単純ではないだろう)


 そう考えながらも、四季崎は立ち止まってこちらを狙っている銀鏡を本物と仮定して対処することにした。


 今度は四季崎の周りにを回っている銀鏡(仮偽物)の一人が矢を放ち、それを身体を逸らして交わすと今度は躱した先を狙いすましたかのように立ち止まった銀鏡(仮本物)と回っていた銀鏡(仮偽物)が立ち止まり同時に矢を放った。四季崎は仮本物の銀鏡の矢を『四季』で弾こうとすると振るったが触れた瞬間に白い靄になって消えた。


 する今度は防ぐ手段をなくした四季崎に対して仮偽物の銀鏡の矢が迫っていった。四季崎が首筋に冷たい汗が流れ落ちるのを感じながら、わずかに無理な姿勢になりながらもその矢を手で掴むとズシリと確かな質量が掌に伝わる。本物だった。


(一度、本物と偽物を決めても変更は可能。決めてたものは再度変更はできない……今わかるのかそれくらいか)


 銀鏡達は今度は全員立ち止まると別々のの方向から今度は同時に躱せないように放った。四季崎が極限の集中力で、飛来する矢の軌道を予測し、出来るだけ『四季』の中央を持った。


 四季崎は飛んでくる複数の矢の進路を、ミリ単位の精度で突き落とす。そして、肉体よりも早く思考が働き、瞬時に『四季』を捻り元のサイズに戻すと間髪入れずに再度捻り長く伸ばした。 今度は振るって矢を弾き落とした。その一連の動作は、もはや人間の所業とは思えぬ速度と正確さだった。


 最後の本物であろう矢を当たらないように躱すと本物の矢は地面に突き刺さった。

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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