友人との再会と誘い 08
中央貿易都市セントナーレに到着した四季崎は、活気あふれる港と多様な人々の賑わいに包まれながら、三年ぶりにギルド本部を訪れる。
かつて「大還輪廻の儀」で起きた騒動と、その後の苦い記憶が胸をよぎるが、感傷を振り払い依頼の完了報告と武器の受け取り、宿泊手続きを進める。
受付嬢イリーネとの和やかなやり取りで心が和らぐ一方、手続きの最中、かつての仕事仲間・銀鏡神楽と偶然再会。
思いがけない再会に戸惑いつつも、四季崎は新たな出会いと出来事への予感を胸に、再び動き出す。過去と現在が交錯するなか、彼の新たな物語が静かに幕を開ける。
時間の流れがゆっくりに感じられるその一射を距離を取って離れた足が地面に着くと同時に横方向に素早く動きギリギリのところで回避して見せた。回避が一瞬でも遅れていれば間に合わなかった攻撃に四季崎の額に冷や汗をかいていた。
銀鏡はあの近接戦闘の間にも煙幕を巻いていたのか、一向に煙が収まる気配はなかった。
「あれでもダメか……行けると思ったんだかな」
煙の向こうから、意外にも余裕がない銀鏡の声が聞こえた。
「付け焼き刃じゃない、洗練された動きだったが、いつから練習してた?」
自分の息を整えながら、銀鏡への興味を示した。
「お前と別れてからだよ。俺には近接戦闘の経験が浅いって思い知らされたからな」
その言葉に深い後悔の念が込められているのを感じられる声がしたが、それは一瞬の事で、銀鏡はすぐに次の行動に移った。
《光ある世界から俺を逃がせ》
それは銀鏡が得意とする魔法の詠唱句だった。四季崎は銀鏡への警戒心をより一層高め、彼の動きを待った。
《ローウィス ディシーブ》
その瞬間うっすらと感じられていた銀鏡の気配が完全に消えてしまった。
(銀鏡の得意とする潜伏か……通常の潜伏であれば、見破る方法はあるが、あいつの高度な隠密技術と併用されては、姿を完全に姿を消したも同然だ)
煙が立ち込める中、視覚に頼る意味はないと判断し、両目を閉じると聴覚のみにすべての意識を集中させた。時折放たれる矢の風切り音を頼りに武器を振るって矢を落としていった。
(六、七……八……これで銀鏡の残りの矢は十二本か)
周囲を確認するうっすらと目を開けると煙が晴れかけていたが、銀鏡の姿はどこにもなかった。
しかし、時折見せる砂を踏む僅かなサッ…サッ…と軽い足音が四季崎を中心に円を描くように聞こえてくるのが分かった。四季崎は閉じた眼を開けるとその足音が巻き起こす砂煙を目印に銀鏡の姿を追った。
すると突然、足音がぴたりと止まり、銀鏡の場所を特定させるものが消失してしまった。
(消えた……いや、止まった?なぜ今になって……違う!飛んだか!?)
四季崎の思考が正しいことを証明するように頭上から矢の風切り音と共に何かが落下してくる気配を感じた。四季崎は咄嗟に『四季』を振るい、落下してくる何かを弾き落とした。
弾き落としたそれは、放たれた矢ではなく、小さな紙袋だった。紙袋は『四季』が衝撃で袋が弾け、中には入っていたものが地面に散らばった。それは先端が鋭利にとがったガラス片や木の実の殻だった。
(マキビシか……これでこちらの動きを封じて何をするつもりだ?それに先ほどの風切り音……気のせいか?)
四季崎は感じた音とその結果の食い違いに違和感を感じながらも、銀鏡の着地した音が聞こえた方に視線を向けた。
そこには魔法を解いて、姿を現した銀鏡が矢を構え、放っていた。
四季崎は足元のマキビシを踏まないように意識しながら、放たれた矢を難なく『四季』で打ち砕いた。
「今のでダメなら、もう打つ手が少なくなってきぞ……」
銀鏡は面倒くさそうにボヤいていた。しかし、銀鏡の手が何かを数えるように一定のリズムで自分の足をつついているのが気になった。
「無くなった訳じゃないんだな。それで次は何だ?」
四季崎は銀鏡が何か企んでいる事に気づいていないふりをしながらも、次の作戦を楽しみにしていた。
「それじゃあ、これが最後ってことで……そうだ。これから講義を始めようってか?」
銀鏡は四季崎の口癖を真似すると、明らかに嫌そうな顔をした四季崎が、「バカにしてるだろ?」と怒ると、「ちょっとな」と笑って見せた。しかし、それも一瞬の事、次の瞬間には真剣そのもののだった。
《運命は 決した。その選択は絶望にまみれ その運命を恐れた。全ての結果に虚実入り混じる……》
今までの軽口が嘘のように気配が冷たく鋭く研ぎ澄まされていくのを感じた。銀鏡は深く息を吸い両目を閉じ、精神を集中させるように両腕を腰の前で交差させた。
《……運命の選択は無限大。ならば私はその全ての可能性を掴み取ろう》
銀鏡が荘厳に魔法を唱え始めると、足元の砂地に水面が現れ、揺らめきながら銀鏡の姿を映し出した。
『アウディーロ デイズアフターレルム』
(話には聞いていたが、銀鏡の戦術魔法『虚実混濁の水鏡』……実践向きじゃないないから、使うことがが少ないってぼやいてけど、実際どんなものか……楽しませてもらおうか)
銀鏡の詠唱中に四季崎は足元のマキビシを武器で弾き飛ばしスペースを確保し、できるだけ動きやすいように場を作り上げた。
銀鏡が魔法名を叫び終えると、水面が急速に盛り上がり銀鏡の全身を包み表面が鏡のように光る水の球体ができた。
私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。




