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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
異端者の烙印、聖女の覚醒

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エセルニア中央大陸 02

青空に包まれた巡航船上で、四季崎 是空は静かな昼下がりを過ごしていた。

風運商会の御曹司・風運 集治率いる若者たちの挑発を受けた彼は、魔法戦闘でデッキを破壊する騒動を引き起こす。

集治の護衛である相 模行光が介入し、四季崎が3年前の「大還輪廻の儀」で海龍を倒しながら「異端者」の烙印を押された過去を暴露。


正義感の強い少女・伊勢は四季崎を非難するが、彼が無実の罪で迫害されてきたと知り動揺。一方、恐怖で気絶した集治を庇う相模は彼を許してもらうよう懇願する。

船長・下関は「正義の形は一つではない」と伊勢に諭すが、彼女は法と人情の狭間で苦悩する。

四季崎は冷めた表情で現実と向き合いながら、聖都カルマティア到着を目前に船上の日常に戻っていく。

 堀はこの世界の過去にそんなおとぎ話が存在していたことに半信半疑と言った感じに目を細めていた。


「さぁな。真偽は分からんが、敬虔な信者や異端者排斥派は本気で信じてるんじゃないか?」


 年嵩の船員は肩をすくめると、「信者のことはな」と知る気もなさそうにしていた。


「でも歴史って、法王の一言や聖典の解釈で簡単に変わるものなんすか?納得いかないなぁ。四季さんはその辺、何か知ってますか?」


 堀が雑談に夢中で操舵の勉強に集中していないのを感じ、四季崎は呆れつつも話し始めた。


「ふむ。私が自分を異端者と断じる根拠となっている聖典に詳しいように見えますか?」


 四季崎は皮肉めいた笑みを浮かべると、堀をチラリとみた。


「あ、たしかに!言われてみればそうですね。でも四季さん、普段から頭良さそうで何でも知ってそうなのに……」


「知識があることと、信じることは別です。ただ、堀くんが言ったように歴史の解釈が変わることは、この世界では珍しくありませんよ」


「え、そうなんですか?」


 堀は興味津々で身を乗り出し椅子から落ちそうになった。


「例えば『成人の儀』。今ではフィプス聖教の重要な儀式ですが、元々は戦乱の時代に若者を兵士として送り出す過酷な戦闘訓練の名残りと言われています」


「へぇー!そんな昔から続いてる儀式だったんすね!」


「聖魔大戦が終わり平和な時代が訪れたため、本来の意味は失われ、形だけが慣習として残っています。しかしその痕跡は現代にも残っています」


「あ!もしかして、『成人の儀』を終えるまで戦闘魔法の使用が禁じられる聖教法のことですか?」


 堀は思い当たったように声を上げた。


「正解です。表向きの理由はともかく、その起源は戦闘訓練にあったというのが有力な説です」


 堀は面白がりながら質問を続けようとしたが、その時、船長が威厳ある声で叫んだ。


「雑談はそこまでだ!全員配置につけ!そろそろ着岸を始めるぞ!」


 船長の号令で船員たちの表情が引き締まり、操舵室に緊張感が戻った。


 船が港に近づくと、目の前に広がる白亜の聖都カルマティアの城壁と港の光景に誰もが息を呑んだ。


 四季崎の巧みな操舵で船首が岸壁に近づくと、港湾作業員たちが掛け声と共に手際よく係留用のロープを受け取り、巨大なボラードに固定した。


 船体が完全に静止し舷門が開かれると、船は無事に聖都カルマティアの港に入港した。長く続いた緊張と出来事の航海が一区切りついた。


 操舵室では安堵した船員たちが労いの笑顔を交わし、「よし!」の声と共に短い喝采が起こった。


聖都カルマティア


 世界の中心に広がるエセリニア大陸。


 その南方に位置する大都市、聖都カルマティアには約五千人が暮らし、そのうち四千人ほどがウィスプ聖教の聖職者とその関係者である。ここはウィスプ聖教発祥の地であり、今もその総本山として機能している。


 聖都に住まう彼らの最大の使命は、エセリニア大陸中央部の半円状の結界で守られた『聖域』を管理・守護することにある。聖域は大陸のおよそ三分の一を占め、かつて『聖魔大戦』の元凶である魔王が封印されていると伝わる。結界に閉ざされた聖域内は、魔王が封印された当時のままの姿を留めているという。


 聖都は機能と役割の異なる二重の巨大な城壁で厳重に守られている。


 一つ目の城壁――通称『外壁』――は、大陸中央の聖域境界線と海岸線を一直線に結ぶ形で設けられた、物理的な防御を目的とした堅牢な城壁である。高さは数十メートルを超え、幅も広く、城壁上部には常にウィスプ聖教騎士団の衛兵が巡回し、外部からの侵入は物理的にも監視体制的にも極めて困難だ。


 二つ目の城壁――通称『聖壁』――は都市内部に位置し、丘の上の高い場所にあるウィスプ聖教の中枢宗教施設群を囲む。『外壁』とは異なり、この『内壁』は純白の一枚岩の大理石から切り出されたかのような継ぎ目のない滑らかな壁面を持つ。


 太陽の光を浴びて輝くその姿は、見る者を圧倒し、神聖かつ神秘的で近寄りがたい雰囲気を放つ。壁の一部は巨大な門となり、上層(宗教区)と下層(一般区)をつなぐ唯一の通路である白亜の大階段へと続いている。


 下層の一般区は、『大還輪廻の儀』などの祭事や巡礼の際、多くの訪問者が泊まれるよう宿屋や巡礼者向けの施設が大半を占める。それ以外は市場や商店、住居が立ち並び、普通の港町と変わらぬ賑わいを見せている。


 一方、上層の宗教区は多くの秘密に包まれ、『内壁』の城壁内に入れるのは法王聖下をはじめ高位聖職者と選ばれた聖騎士団員のみ。たとえ入った者も、ウィスプ聖教の厳格な規律により、城壁内のことを外部に漏らすことは固く禁じられている。まさに聖域を守る閉ざされた世界だ。


――以上、『エセリニア大陸 聖都カルマティア観光ガイド』より抜粋――

私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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