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時紡ぐ英雄譚  作者: 漆峯 七々
始まりの旅路、導きの歌と宿命の抗争

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レガリアを懸けた邂逅 05

大会本戦二日目、四季崎は優勝候補の漣と対戦する。

漣は琥珀色の肌に純白のビキニを纏い、鞭を自在に操る華麗な女戦士。

彼女の長い射程と巧みな心理戦に翻弄される四季崎だったが、鞭と木製の棍の絡み合いを利用し、武器を交換して優位に立つ。

冷静に攻撃の隙を突き、回転蹴りと鞭の連撃で漣を追い詰め、最後は鞭で首を締め上げて勝利を勝ち取った。

漣は敗北を認めつつも、四季崎の強さを素直に称賛し、二人の間に戦士としての敬意が芽生える。


会場は歓声に包まれ、予想外の結果に熱狂が広がる。

続いて登場したのは、イリーネの弟子である幻夢の歌姫・伊勢。彼女の歌声は会場を静寂に包み、聴衆の心を深く揺さぶる美しい旋律だった。

しかし、厳正な審査の結果、伊勢は最終選抜に残ることができず、深い悔しさと自分への苛立ちに襲われる。

ギルドに戻った伊勢は涙を流しながら四季崎に敗北を告げ、四季崎は彼女の歌声に感動したことを伝え、優しく慰める。

伊勢はその支えの中で少しずつ心を落ち着け、次への決意を胸に秘めるのだった。


この日、勝利の歓喜と敗北の苦悩、そして仲間同士の支え合いが交錯し、物語は次の展開へと動き出す。

  ❐ 四季崎の視点


 観客席からは、先程までの熱狂的な声援が嘘のように、今は罵詈雑言が雨のように降り注いでいた。」「海の民の敵!」「出て行け!」――汚い言葉のナイフが、容赦なく私の心を抉る。


 しかし、不思議と以前のような激しい怒りや悲しみは湧いてこなかった。ただ、冷たい諦めと、これから為すべきことへの静かな決意だけが胸を満たしていた。


目の前の上地だけは、周囲の喧騒などまるで意に介さないように、今までと変わらぬ、どこか試すような鋭い眼差しでこちらを真っ直ぐに見据えていた。彼の瞳の奥には、純粋な闘志と、私という存在への探求心のようなものが揺らめいている。


「これで本気を出す気になったか? さっさと腰の武器を抜け。それとも、まだ不足か? この程度の逆風で折れるようなら、ワシの期待もそこまでということだが」


 その言葉には、嘲りではなく、むしろもっと深い何か――ある種の信頼のようなものさえ感じられた。


(上地は……ただ純粋に、私と全力で戦いたいだけなのか……? この状況すらも、そのための舞台装置だとでも言うのか?)


 思わず、声が漏れた。


「どうして、そこまで……私に固執する?」


 上地は軽く拳を構え直し、その問いに短く、しかし揺るぎない声で答えた。


「武人だからだ。強者と戦い、己を高める。それ以上でも、それ以下でもない」


 その言葉は、奇妙なほど私の心にストンと落ちた。そうだ、彼はただひたすらに強さを求める一人の武人。ならば、私もまた、一人の戦士として、この場に立たなければならない。


 私は静かに息を吸い込み、上地の言葉に応えるように、ゆっくりと腰に手をやった。愛用の武器、《四季》の柄を力強く握りしめる。その冷たい金属の感触が、覚悟を促すように心地よかった。


 そそして、滑らかな動作でホルスターから引き抜くと同時に、右腰のポーチから手のひらに隠れるほどの大きさの、水色の水晶のようなものを取り出した。それは淡く、しかし内に秘めた力強い輝きを放ち、周囲の光を吸い込むように揺らめいている。


 私は《四季》の柄頭近くにある、特定の部分を掴んだ。そして、そのグリップを縦方向に、確かな手応えを感じながら強く引っ張った。


 すると、カチリ、と小気味よく精密な金属音が響き渡る。それと同時に『四季』の中央部の金属装甲が、まるで生きているかのように滑らかに左右へとスライドし、その内部構造があらわになった。


 そこには、先ほど取り出した水色の水晶――いや、小さな円柱形のユニットがぴったりと収まりそうな、精密に計算された窪みが姿を現した。


 私はその水晶――正式名称『可変機構 流水』を慎重に持ち上げ、寸分の狂いもなくその窪みへと装填すると、再びカチリという心地よい音を立てて、左右にスライドしていた装甲が元の形へと戻し、『可変機構 流水』を完全に内部に格納した。まるで最初からそこにあったかのように、完璧な一体感を見せる。


 『流水』可変機構が完全に収まると、次の瞬間、『四季』本体に刻まれた、複雑で美しい幾何学的な模様が、まるで武器自身が呼吸を始めたかのように、淡い青色の幽玄な光を帯び、ゆっくりと明滅し始めた。


「可変式戦術棍『四季』、外装換装……」


 四季崎の声は、周囲の罵詈雑言を切り裂くように、静かに、しかし凛とした意志を込めて響き渡った。

宣言と共に、彼は『四季』の柄を特定の位置で、熟練した手つきでカチリと音を立てて捻る。


 『四季』は、いつものように滑らかに1.5メートルまで伸長したが、その変化はそこで終わらなかった。


 否、ここからが真の変形だった。


 棍の先端から、まるで青い深海そのものを切り取って鍛え上げたかのような、澄みきった水色の槍先が、周囲の光を乱反射させながら瞬く間に形成されていく。


 それは硬質な水晶のようでもあり、絶えず揺らめく清流の表面をそのまま封じ込めたかのようでもあった。


「碧き海のうねりをもって、私を導け!戦術槍《流水》!!」


 完成した戦術槍《流水》を、四季崎は地面に立てるようにしっかりと掴み直し、その冷たい金属の感触を確かめるかのように目を閉じた。


 槍先から放たれる淡い青色の光が、彼の顔を静かに照らし出す。周囲の喧騒が嘘のように遠のき、彼の意識は己の内面と、そして手にした武器へと深く集中していく。


 やがて、彼は静かに、しかし祈りにも似た厳かな響きを込めて言葉を紡いだ。


「私に(まこと)の水の在り処を見せよ――『カレント』」


 私は手にした戦術槍《流水》の石突で、足元の木床を軽く、しかし確かな響きを込めて「コン」と一つ突いた。カーン、という硬質で澄んだ金属音が、張り詰めた舞台の空気に短く、しかし鋭く響き渡った。


 その音を合図とするかのように、石突が触れた一点を中心として、まるで静かな湖面に小石を投げ込んだかのように、目には見えないが確かに感じられる水の波紋が、同心円状に周囲へと急速に伝播していく。


 それは単なる物理的な振動ではない。私の五感、いや、それらを超越した第六感とも呼ぶべき感覚が、まるで覚醒するかのように、急速に、そして鋭敏に研ぎ澄まされていくのを感じた。


 風の流れが肌で読める。空気の微細な振動が、まるで第二の皮膚のように感じられる。地面を伝わる上地の足音の微妙な変化、彼の呼吸のリズム、そして何よりも、彼から放たれる闘気の揺らぎが、手に取るように、いや、それ以上に鮮明に私の意識へと流れ込んでくる。


 観客たちのざわめきや、向けられる敵意の棘すらも、もはや雑音ではなく、戦場を構成する一つの情報として冷静に処理できる。視界は隅々までクリアになり、色彩はより鮮やかに、そして世界の輪郭がくっきりと浮かび上がってくる。聴覚は遠くの囁き声すら拾い上げ、嗅覚は汗や土埃の匂いの中に混じる、微かな鉄錆の匂いまで判別できた。


 それはまるで、自分が水そのものになり、周囲のあらゆる情報を水面が揺らぎとして捉えるように、ありのままに受け止めているかのような感覚。あるいは、広大な情報網の中心に自分が立ち、全てのデータがリアルタイムで集約されてくるような、圧倒的な全能感にも似た覚醒だった。



「それではいくぞ!」


 上地は今までは遊びであったかのように拳によるラッシュを放ってきたが、それをもろともせず、攻撃が届く前よりも早く軌道を読んでいるかのごとく回避していき、未来が見えているかのごとく先んじて振るった『流水』に吸い込まれるように上地の身体が現れ攻撃を加えていった。


 戦術槍《流水》は、単なる破壊のための道具ではない。それは、使い手の感覚を極限まで拡張し、戦場の森羅万象を「観測」し、「理解」し、そして「支配」するための鍵となるのだ。


私の意識は、今、この戦場の全てと繋がった。



私の作品を読んでいただき、本当にありがとうございます!感想を聞かせていただけると嬉しいです。

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