レガリアを懸けた邂逅 02
大会本戦二日目、四季崎は優勝候補の漣と対戦する。
漣は琥珀色の肌に純白のビキニを纏い、鞭を自在に操る華麗な女戦士。
彼女の長い射程と巧みな心理戦に翻弄される四季崎だったが、鞭と木製の棍の絡み合いを利用し、武器を交換して優位に立つ。
冷静に攻撃の隙を突き、回転蹴りと鞭の連撃で漣を追い詰め、最後は鞭で首を締め上げて勝利を勝ち取った。
漣は敗北を認めつつも、四季崎の強さを素直に称賛し、二人の間に戦士としての敬意が芽生える。
会場は歓声に包まれ、予想外の結果に熱狂が広がる。
続いて登場したのは、イリーネの弟子である幻夢の歌姫・伊勢。彼女の歌声は会場を静寂に包み、聴衆の心を深く揺さぶる美しい旋律だった。
しかし、厳正な審査の結果、伊勢は最終選抜に残ることができず、深い悔しさと自分への苛立ちに襲われる。
ギルドに戻った伊勢は涙を流しながら四季崎に敗北を告げ、四季崎は彼女の歌声に感動したことを伝え、優しく慰める。
伊勢はその支えの中で少しずつ心を落ち着け、次への決意を胸に秘めるのだった。
この日、勝利の歓喜と敗北の苦悩、そして仲間同士の支え合いが交錯し、物語は次の展開へと動き出す。
⬠ 伊勢の視点
決勝が始まる直前、何とか間に合って会場に到着した僕は、少し息を切らしながら歌川さんに案内されるまま、先へと進んでいった。歌川さんが用意してくれた場所は、正式な席ではなく会場の隅の目立たないスポットだった。
しかし、その場所は会場全体を見渡せる特等席のような場所で、ついに四季崎さんの勇姿を目にできるという喜びと興奮で胸がいっぱいになった。
しかし、試合が始まって間もなく、四季崎さんは上地さんの一撃を受けて吹き飛ばされた。その後、上地さんの挑発に応じるように攻撃を仕掛けてはいたものの……
(四季さん、最初の攻撃以降、まったく攻撃の機会を得られていない……)
不安げに見守っていると、隣で一緒に観戦していた歌川さんが厳しい表情を浮かべていた。
「四季崎様はかなり厳しい状況のようですね」
「どういうことですか?」
ボクの問いかけに、歌川は試合から目を離さず、静かな口調で説明を始めた。
「原因は間合いの差にあります。上地様の間合いは非常に短く、つまり彼は相手に近づく距離を極限まで詰めて戦うやり方です。一方で、四季崎様の間合いはそれよりも長いため、攻撃に出るためにはまず上地様から距離を取らなければなりません」
舞台を見れば、確かに四季さんは上地さんの猛攻をかわしつつ、必死に距離を保とうとしている。しかし……
「しかし、上地様はそれを許さず、一定の距離を保ったまま決して離れようとしません。普通なら、相手の攻撃を防ぐだけでなく、陽動や間合いの揺さぶりを使って相手の調子を崩したり、軽い一撃や牽制攻撃を繰り返して様子を探ったりするものです」
歌川さんの声には、冷静な分析とともに、わずかながらも四季崎様への心配が滲んでいた。
ボクは歌川さんの言葉にじっと耳を傾けながら、眉をひそめる。彼女の目は舞台上の四季さんの動きと歌川さんの表情を交互に見つめ、胸の奥に不安がじわりと広がっていくのを感じていた。
ボクは拳を軽く握り締め、思わず息を呑んだ。彼女の視線は四季さんの顔に向かい、必死に戦う姿に胸が締め付けられる。
「相手の攻撃を受け流しながら反撃の機会を伺うことも戦術の一つです。さらに、相手の動きを誘導して疲れさせたり、体勢を崩すために角度を変えて攻めたりすることもあります」
歌川さんは言葉を続けたが、その声には次第に重みが増していく。
「しかし、上地様は攻撃の精度と威力が非常に高く、どんな牽制や陽動も見抜かれ、隙を作らせてくれません。だからこそ、四季崎様は思うように戦術を展開できず、苦しい状況に追い込まれているのです」
歌川さんの言葉が終わると、ボクはしばし言葉を失った。戦況の厳しさが、言葉以上に重く心にのしかかる。
二人の間に静かな緊張が漂い、会場の熱気とは対照的に、彼らの心は冷静に、しかし深い憂慮を抱えていた。
「上地様の一撃があまりにも強烈です。もし一発でもまともに受けてしまえば、間違いなく致命的な一撃を負うでしょう。だから、受けも妥協も許されないのです」
「でも、このままでは四季崎さんの体力が持ちませんよね?」
「その通りです。四季崎様は攻撃の機会をほとんど奪われ、ひたすら防御と回避に追われています。このまま時間が経てば、体力と集中力が削られ、いずれは攻撃を躱しきれなくなるでしょう。非常に厳しい状況です」
歌川さんの言葉には、戦況を冷静に見極める洞察と、四季さんへの深い思いやりが込められていた。
「詳しいんですね。てっきり歌川さんは、こういうことには疎いと思っていました」
ボクは素直に驚きを口にした。説明を終えた歌川は、僕の声に気づくと少し気まずそうに笑みを浮かべた。
「そうですね。今は事務職しかしてませんから、そう思われても仕方ありません。でも、これでも昔は前線で魔法使いとして活躍していたんですよ?そうは見えませんよね?」
その意外な事実に、ボクは思わず目を見開き、「すみません……」と素直に謝った。
歌川さんは軽く笑いながら続けた。
「説明の仕方は事務職をしているうちに自然と身についたんですけどね。それより……」
歌川さんはボクの視線を舞台へと促した。
「試合に動きがあったみたいですよ?」
その言葉にハッとして、ボクはすぐに舞台に目を向けた。
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