気掛かりな話
俺は自宅を出て、登校した。
何軒も連なる住宅街を抜け、スーパーを通り過ぎ、趣のある控えめな喫茶店を通り越した辺りで、背後から挨拶をされ、隣を陣取った女子に挨拶を返す。
「おはよっ、あっくん!爽やかな朝だね〜!あれれぇ〜なんだか浮かないカオ、してますなぁ!私の胸を揉んだら、元気になる〜?」
錦部三佳が弾んだ声で挨拶をし、掌に胸を載せ、持ち上げながら訊いてきた。
彼女のミディアムな茶髪が風に靡き、嗅いだことのある匂いが鼻腔をくすぐる。
「錦部さん、おはよう。雨が降るとか予報でしてたような……さして親しくもない女子の胸を揉むなんて、おかしいでしょ」
「えぇー、あっくんになら胸を揉まれて嫌になんないよー!吉田ちゃんもあっくんに胸を揉みしだかれても嫌わないな〜って言ってたよ。私をラブホに連れて行って、SMプレイで巨乳な同級生をよがらせてみるかい、あっくん?」
「連れてかないし、錦部さんにそんなこと出来ないから!あの吉田さんがそんなこと言わないって、絶対!?」
「そぉ〜う?私はあっくんがエッチする時にどんな表情するか見てみたい。あっくんがどう私をイかせてくれるか……なんて妄想をしないでもないっ!吉田ちゃんってああ見えて、毎日オナニーしちゃってるってぇ!」
「やっ……止めろ止めろ止めろぉー!俺の吉田さんを壊すなぁー!はぁはぁ……やぁ、止めてくれェ……錦部さん」
俺は彼女の言葉で俺の所属するクラスの一番モテる女子である吉田の自慰行為の光景を想像してしまい、絶叫して、両手で頭を抱える。
「あっくんて吉田ちゃんとヤりたいの〜?胸は揉ましてもらえはするだろうけど、流石にセック——」
「分かってるし、そんな言葉を言うなーっっ!もう、勘弁してェ……錦部さん」
「ヤれない娘にアタックして玉砕してもやもやするか、ヤれる私とセックスして欲求不満を解消するかの二択でしょ?究極さぁ……」
「親しくもない女子に幻想を壊され、弄ばれてる俺ってぇ……」
「あぁー、しょげてるとこ悪いけどあっくん。あっくんってファミレスでおなごと密会してたりする?」
「ファミレス……女子と、密会。俺にそんな相手なんて……いきなりなんだよ、それ?」
俺は今朝の記憶に残っている悪夢の光景が蘇りながら、困惑しながら訊き返す。
「今朝ぁ、夢の光景が記憶にあってさ、私がファミレスで飯食ってたら、隣の席ら辺に女子と楽しげにしてるあっくんがいてさ、ラッキーと思って話しかけようとしたんだけど脚が思うように動かんくて……そうこうしてるとあっくんと女子の方から怖いって感情を抱き初めてさ……あっごめん。変な話はこれくらいで、さぁ今日の放課後に私とラブホ行く?」
「それって……行かねぇよ、ラブホなんて。もうちょっと楽しいの無いのかよ?」
「私が金出すから30分でも付き合ってよ!」
「俺より錦部さんが欲求不満なんじゃ……」
「あっくん、これは命令ぇっ!私とラブホに行ってエッチする!これは確定事項っ!放課後、逃げたら許さないから!」
「えぇー……好きでもないのにぃ」
俺の腕に錦部が自身の腕を絡ませ、肩と肩を触れ合わせ、雑談を始めた彼女だった。
俺は高校に到着し、ようやく錦部から解放され、下駄箱でスリッパに履き替え、教室へと歩を進める。