胸騒ぎ
俺は、ファミレスにいるらしい。
俺は、誰かに見られているようだ。
俺が女子と向かい合って楽しげに談笑していた。
俺の意思は拒まれ、テーブルに載った己の両腕に視線が落ちて握られた拳が視界に映る。
視界に映る拳は、ぶるぶると震えていた。
数秒が経過して、俺と向かい合って笑っているリボンのついた青いカチューシャを頭にしている女子に視線が戻った。
女子の背後の大きな窓硝子の向こうは陽が沈みきってないようで、まだ朱みがかっていた。
どれ程時間が経過したのか定かではないが、青いカチューシャが目立つ女子が席から立ち上がり、レジへと歩き出すのを己の瞳が追いかける。
女子の背中を追いかけることなく、谷郷敦の姿はファミレスを出ていく彼女の傍にはなかった。
その光景が霧が濃くなるように霞んでいく。
俺は、目覚めて記憶に残る先程の夢で見た光景に思わず唸る。
「うぅーんん……嫌な夢だったな。正夢に……まさかね」
何故か、胸がざわついた。
それにしても、先程の夢は誰が見ていたものなのか?
俺と楽しげに談笑していた女子の顔は鮮明ではなかった。彼女の顔の造りが思い出せないのだ。
俺か彼女のどちらかに怨みを抱いている誰かな気がする。もしくは、二人に対して、ということも大いにあり得る。
しかし、謎の人物は彼女がファミレスを出ていく姿を瞳で追っていたが俺の姿は追いかけることはなかった。
謎の人物[俺]が見ていた光景は——いつの出来事なのだろう。
俺は上半身をベッドから起こし、両腕を天井へ挙げて伸びをしながら、欠伸をした。ベッドから両脚を下ろし、立ち上がってから自室を出て洗面所に顔を洗いにいく。
冷水で眠気をさまし、階下のリビングへ向かう。
リビングではテレビが点けられており、6:35と時刻が表示されていた。
リビングテーブルの上には三人分の朝食が並んでいた。
皆、何処に行ったんだろうと誰も居ないリビングを見まわす。
首を傾げたが、自身の特等席であるリビングチェアに腰を下ろし、朝食を摂り始めた。
俺が朝食を済ませ、登校の支度に取り掛かるために自室に戻ろうとしたが、家族の誰一人として姿を見せなかった。
谷郷家では、珍しく家族の誰とも挨拶を交わすことなく登校することになった。
谷郷敦が、その日抱いた胸騒ぎは——彼を不幸に陥れる前兆だった。
今まで手を出さなかったものです。
普通にラブコメよりにしたやつか重めなコレか、悩みましたがこちらにしました。
序盤はいつものいい感じにはなりますが進んでいくにつれ、重々なのになっていきます……