第99話・開戦、VSリヴァイアサン
日本近海に張り巡らされた海中ケーブル網SOSUSは、大怪獣リヴァイアサンの動きを完璧に捉えていた。
建前上は地震探知用として設置したものだが、実際のところ中露の潜水艦を捕捉するために使われている。
その性能は圧巻で、港を出港した中露の潜水艦がどんなに気をつけようと……日本に近づいた時点で探知されるのだ。
実績としては、数年前に尖閣諸島沖合で潜航中だった中国潜水艦が、アッサリ発見されて海自によって浮上させられた件だろう。
アレも、この音響探知システムによって事前に発見されたと言われている。
「こちらエコー01、目標海域に到着した––––これよりソノブイを投下する」
当該海域の上空に現れたのは、3機のP-1哨戒機だ。
これは国産の対潜ジェット機で、アメリカの最新哨戒機P-8と並ぶと言われている。
「レディ……、投下! 投下! 投下!!」
機内から連続して、空中投下型ソノブイが落とされた。
海に落下したそれは、アクティブ・ソナーを発して潜水艦を発見する兵器。
3機のP-1が、面で覆うようにブイを投下していった。
その数は100に迫る。
「聴測、どうだ?」
「は、なっ……、これッ……!!」
機内のモニターに、水中を進む巨大なエコーが表示された。
音源も記録されており、再生したところ––––
––––ドクンッ、ドクンッ––––
大洋の中を、周囲数百キロに渡って”心臓の鼓動“が鳴り渡っていた。
おぞましく不気味。本能で恐怖心を駆り立てられる。
だが、隊員は務めて冷静に報告した。
「エコー探知、第7ブイの直下を移動中の模様」
「了解、これよりソノブイ周辺を通過する……!」
4発のエンジンを轟かせ、目的地についたP-1は……目を疑う光景を目にした。
「……目標視認、深度30メートルを航行中の模様。全長は目測で、250メートル以上……!」
あまりに巨大な海中のアノマリーは、空から肉眼でハッキリと見えた。
中国軍と交戦した時から、さらに大きくなっている。
このサイズなら、世界最大の米空母にだって巻き付けるだろう。
コックピットからも視認した機長は、無線を取る。
「全機、攻撃開始! 爆弾倉開け!!」
空中で編隊を組んだP-1部隊が、低空でリヴァイアサンの直上へ侵入した。
「レディ……ナウ!」
3機のP-1が、150キロ対潜爆弾を第一波攻撃として12発……一斉投下した。
高速で落下した爆弾は、リヴァイアサンの周囲に着水––––大爆発を起こす。
「弾着!」
数十メートルの水柱が、何本も打ち上がった。
通常の潜水艦であれば、これだけの攻撃に耐えられようはずも無い。
原潜をも吹き飛ばす爆流が発生するが、水面を見て思わず息を呑む。
「目標健在! 速度変わらず進行中!!」
「やはりか……! 第二次攻撃用意!」
リヴァイアサンは確かにダメージを負っていた。
しかし、あまりに高すぎる再生能力は爆撃にも耐えてしまっている。
明らかに生物としての枠を超えていた。
旋回したP-1部隊が、再び倉を開く。
「レディ––––ナウ!!」
再び12発を連続投下。
さらに高精度で命中し、リヴァイアサンを発生した大量の泡が覆う。
「どうだ!?」
「…………! 目標健在、ですが速力は少し落ちています」
「多少は効果があったみたいだな、計画通りだ」
3機のP-1が引き返すと同時、雲の中から別の機影が現れた。
「さて、やっこさん……目的地まで無事で済むかな?」
現れたのは、海上自衛隊のP-3C哨戒機が8機。
これに加えて、アメリカ海軍のP-8哨戒機が4機––––編隊を組んで到着する。
「艦隊へ辿り着くまでに、再生能力を極限まで低下させる。絨毯爆撃だ! 攻撃を浴びせ続けろ!!」
凄まじい大爆発の嵐が、リヴァイアサンを襲った。
自衛隊と米軍は、この作戦のために集められるだけの哨戒機を投入。
蒼雷作戦第一段階、”漸減“作戦が開始された。
艦隊との距離––––残り50キロ。
※重要なお知らせ。
本作はこの度––––【コミカライズ化】が決定しました!!
これもひとえに、読者様の応援があったからこそです!
本当にありがとうございます!!
この作品を、作者である私はぜひ漫画で見たかったので感無量です。
詳細やレーベルは後日追ってお知らせしますので、引き続き本作を応援して頂けると幸いです!