第91話・アメリカ海軍特殊部隊、ネイビーシールズ
ありがたいことに、また素晴らしいレビューを頂きました!!
モチベーション爆上げなので、更新しちゃいます。
ロシア人部隊を襲撃したのは、本来日本にいないはずのイレギュラーな部隊だった。
第1特務小隊でもなければ、特殊作戦群でもない……。
「良いぞ軍曹、スイッチブレードは見事に命中した。これでもう敵は何もできんだろう」
ビルの中から銃を向けていたのは、アメリカ海軍特殊部隊––––ネイビーシールズ・チーム5のテネシー隊長だった。
彼らの腕にはもちろん青いバンドが付いており、自衛隊からすれば完全な味方ということを示している。
米軍は、一切の隙なく通信を交わした。
「スイッチブレード命中、本丸の車ごと無事吹っ飛んだようだ。良い腕だったぞ」
3キロ離れたドローン射出地点の部下へ、褒め言葉を送る。
返事はすぐに来た。
「ここからでも爆発の音が聞こえましたよ、しかし……この新宿はビルが多すぎて操縦が大変です。まるでニューヨークだ……生き残りはいますか?」
「待ってろ……、確認中だ」
テネシー大尉が持っていたのは、数あるM4ライフルシリーズの中でも、いわゆる特殊部隊御用達モデル。
『URG-I 11.5インチ』と呼ばれる、M4CQB-Rにガイズリー社製MK16用ハンドガードを付けた物。
あちこちに高額なアクセサリーがつけられており、特に目立つのは今覗いているスコープだ。
「生存者を確認……、まだ8人が動いてるな」
数十万円相当のレーザーHDスコープには、ロシア人が8倍率でクッキリ映っていた。
彼らは必死に無線を使おうとしているが、全く繋がらないご様子。
理由は、米軍が持って来た新型ジャマーパックだった。
これは大尉の隣にいる軍人が背負っており、一帯の無線通信を任意にジャックできる新兵器。
さきほど連中の無線に英語で割り込んだのも、彼だった。
通信を完全に制圧した状況下で、大尉は分析を進める。
「武装は……AK-74Mだ、ずいぶん古いな……。もうとっくに次世代ライフルへ乗り換えたと思ったが」
「ロシア製なら好都合じゃないですか? 物的証拠があれば日本政府も喜ぶでしょう」
「いや……、それは良いんだが。彼らは我々合衆国と相対するライバルだったんだろ? それがあんなに貧相だとは……」
「確かに、見たところ光学機器も付いてませんね……。AKライフルは素っ裸が似合うと言いますが、さすがにあれは論外でしょう」
いつでも射殺できる状況だが、ここで撃っては少し取りこぼしが出る。
やるなら100%。
次のチャンスが近づいてくる間、大尉はある噂を思い出した。
「聞いたことあるか? ロシア軍よりも日本のサバゲーマーの方が良い装備らしい」
「さすがに冗談でしょう? 日本語のサバゲーっていわゆるエアソフト・ウォーですよね? ハンターを除いて玩具の銃しか日本人は持てないはずでは?」
「それがあながち嘘じゃないらしい、我々が思っていたより……ロシア軍の腐敗は酷いと」
彼の聞いた噂は本当だった。
数年前まで、ロシア軍人は私腹を肥やすために、支給されたドットサイトや各種装備品をインターネットで横流しした。
これはかなりの規模で何年も行われており、そこに目をつけたのが日本人のコレクターだ。
ロシア軍人よりも遥かに豊かな日本人は、趣味の一環としてそれら横流し品を合法的に入手。
上記のAK用ドットサイトや、スコープ。
果ては軍用レーションまで、日本人ヲタクが徹底的に買い漁った。
結果、ロシア軍歩兵はウクライナ戦争勃発時に、ほとんど丸裸で戦う羽目になった。
当然だろう。
本来戦争で使う予定だった装備を、日本人に安値で売りまくってしまったのだから。
ライフルは工場出荷時の状態から変わらず、スコープが無いので遠距離の敵も狙えない。
それと同じ頃、日本では平和なサバゲーマーが射程距離40メートル未満のエアガンで、本来ウクライナ人の命を奪う予定だった装備を使っていた。
人を殺さない、BB弾を撃つ目的で……。
現在のロシア軍は、自衛隊どころか一般コレクターにすら負けている。
「そんな奴らがライバルとは、合衆国も舐められたものですね」
「全くだ、もうソ連じゃないんだからな……大人しく––––」
テネシーの見下ろす先で、いくつもの爆発が発生した。
隠れていた残存ロシア人を、追加で放たれた6機の『スイッチブレード300』自爆ドローンが吹っ飛ばしたのだ。
「シベリアに籠っていてもらおう」
アメリカ軍からすれば、今全滅したロシア人部隊など“撃ち合う価値も無い”格下だった。
一方的な殺しを終えて、踵を返す。
「死体漁りを行う、銃や装備品は全て回収しろ。日本政府に渡せば……大いに喜ばれる」
超大国アメリカは、撃ち合いすら発生させずに戦闘を終了させた。
自衛隊に撃ち減らされる前か、中国部隊相手ならさすがにこうはいかないが、あの程度ならこれで十分。
テネシー大尉たちは命令通り、ロシアの日本における工作行為を妨害したのだ。
※余談。
従来よりAKライフルは、アッパーレシーバーのガタツキによって光学照準器がマウントできない不具合––––もとい仕様がありました。
このがたつきが非常に厄介で、ロシアは長年苦労しており……最新のAK-12でも結局あまり改善されませんでした。
そんな中、なんとこの問題を完璧に解決した会社が現れたのです。
ロシア最先端軍事企業……ではなく、そのギミックを完成させたのは日本のエアソフトガンメーカーでした。
実銃ではなく、玩具の会社にロシア軍事産業が負けるという事態が発生したのです。
正直、最新のAK-12があまりに酷いライフルなので、もし今の日本の技術でAKを作ったら……多分とんでもない高性能ライフルが生まれるでしょうね。
ぜひ一度見てみたいです。
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