第78話・日本最強の戦闘集団
これで各陣営––––準備は完了ですかね。
––––東京都 とある廃ビルの中。
数人の男たちが忙しなく作業していた。
「こちらキャスター、各種トラップの準備は順調。1階から7階まで作業が終わっています」
「こちらセイバー、今回の装備が届いたので今からお持ち致します。”カタストロフィー“はそこでしばらくお待ちください」
彼らの顔は、第1特務小隊にとって懐かしいもの。
初めてダンジョンを訪れた時に久里浜と一緒にいた、“特殊作戦群”の一員だ。
彼女の先輩にあたる彼らは、このビルや周囲にあらゆる細工をしている真っ最中。
しばらくして、3階の廃部屋の椅子へ座った男の前に––––セイバーと名乗った隊員が荷物を持ってやってくる。
「ずいぶんと機嫌が良さそうですね、錠前1佐」
全身を迷彩服に包んだ彼は、女子高生ウケの良さそうな顔で微笑む––––第1特務小隊監督官。
錠前1佐、コールサイン“カタストロフィー”は口を開いた。
「久しぶりに君たちと仕事ができて嬉しいんだよ、あれからずいぶんと腕を上げたと見える」
「いつまでも貴方の後塵を拝すわけにはいかないので、日々精進しているつもりです。久里浜は元気にやってますか?」
「元気だよ、まだまだ君たちには劣るが……育てれば逸材になるだろう」
「1佐がおっしゃられるなら間違いないですね」
「ところで、アーチャーの姿が見えないけど」
「アイツは今、確か最適なポジションを探しに行ってますよ。キャスターのトラップと合わせて敵を追い込むスナイパーですから」
「じゃあいっか、セイバー。早速だけど装備––––見せてもらえる?」
「はい、こちらに」
錠前の眼前に広げられたのは、一般の隊員からすれば信じられないほどの最新鋭装備。
「へぇ、これが噂の……」
「はい、最新の“レベルⅥ防弾プレート”。米軍のデルタフォースが極秘で使っているもので、7.62ミリピアッシング弾を至近距離から食らっても平気です」
「へぇー、マッチョにパンチされたくらいの痛み?」
「前日に自分で試しましたが、デコピンされた程度しか痛みませんでしたよ。中露の正式弾薬なら10発受けても問題ないでしょう」
「防弾も進化したねぇ、アメリカさんもよく輸出を許可してくれたもんだ」
「あくまで日本限定とのことです、まぁ……今のアメリカなら金さえ払えばいくらでも我々に最新装備を売ってくれますよ」
日本はダンジョンの恩恵で、凄まじい国力を身につけた。
その恩恵に預かりたいアメリカが、最初の強硬姿勢から一転––––非常に協力的になった。
「あとなんでも、ネイビーシールズのチーム5が横須賀に来たらしいです」
「北朝鮮担当の? 超強い奴らだよね。もしかして……協力してくれたり?」
「そのまさかです、日米同盟に基づいて––––中露の妨害を手伝ってくれると」
「彼ら本当に強いから頼もしいね、ぜひ期待しよう」
「後はアメリカ第7艦隊ですが……、現在東シナ海で中国海軍を牽制しているようです」
第7艦隊所属の原子力空母ジョージ・ワシントンには、最新鋭のF-35Cステルス戦闘機が積んである。
中国軍の空母『山東』や『遼寧』では、逆立ちしても勝てはしないのだ。
解放軍の空母打撃群は、完全に封じ込められたと言って良い。
アメリカが味方にいる時点で、第二次世界大戦時の日本とは状況からして訳が違う。
補給の充実に加え、強大な味方を持った日本は––––かつての旧軍と全く比較にならないほどの有利に立っている。
「じゃあ、この“銃”も友好の証かな?」
錠前が持ち上げたのは、タンカラーのフルサイズ銃。
スリムながらもゴツい見た目で、M4のようなチャージングハンドルと、AKのようなサイドコッキングレバーが特徴的である。
デカい箱型マガジンに入る弾は、6.8ミリ・レミントンSPC弾。
そう––––
「米陸軍最新アサルトライフル『M7』。6.8ミリ弾を使用する、世界最強の銃です」
SIG社が開発したこれは、米軍の過酷な試験をクリアして採用されたM4ライフルの後継銃。
会社の製品名はSIG MCX Spear。
次世代の弾薬、6.8ミリ弾を20連射可能。
中露が誇らしげに装備するレベルⅣアーマーを、なんと遠距離から貫通してしまうほどの威力を持っていた。
さらに最新光学照準器と、バックアップ・アイアンサイト。
最新のサウンド・サプレッサーに加え、体型に合わせて自由に変えられる伸縮式ストックも当然セットだ。
「さっきも言ったけど、よく米軍がこんな凄いの譲ってくれたね?」
「政府が利権に物を言わせたんでしょう、アメリカだってレアメタルや石油は欲しくて仕方ない。日本には今ならいくらでも投資してくれますよ」
「太っ腹なことで、これ……全員分あるの?」
「あります、予備弾倉は各自7個ずつ。アーチャーはバレットの12.7ミリを使うのでいらないそうですが」
「なら良いんじゃない? 壊れた際の予備にでもしよう」
一式の装備を終えた錠前は、米軍デルタフォースと同レベルの武装だった。
マガジンを差し込み、重いコッキングレバーを引く。
「さて、じゃあそろそろ始めようか……我々の復讐にして自衛。鏖殺の時間をね」
「戦闘規定は?」
「想定される状況下で動くヤツは殆ど敵だ、皆殺しにしろ。ただし––––間違っても僕の部下や異世界人、米軍は撃つなよ。目印として腕に青いバンドを付けてるはずだ」
「了解」
無線をオンにする。
「さぁて特戦諸君、お楽しみの時間がもうすぐ来るぞ。これから行うのは戦闘ではない––––“一方的な殺戮”だ。日本に巣喰った中露の虫共を根絶やしにしよう。殺虫開始だ」
超人––––錠前1佐率いる特殊作戦群が、最高峰の装備を持って任務に突入した。
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