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第75話・テオドール、初めてのレストラン

 

「凄い……ここが、“レストラン”という所ですか?」


 お昼が訪れて、透たちは某有名チェーン店に来ていた。

 安価でイタリアン料理が楽しめる、“入りやすい”が有名なお店だ。


「涼しい……、しかも良い匂い。これが一般向けの食堂だなんて」


「その代わり人は多いけどな、でもすぐ入れそうだ」


 都内でアクセスしやすいこともあって、やはり少々混んでいる。

 入店待ち票に名前を書いてすぐに座れたのは、幸運だった。


「よっし、めしメシ〜。ほいメニュー」


 3人ともすっかり腹を空かしているので、足早にメニューを取る。

 この際2枚しか無かったので、2人で1枚、1人で1枚に分配した。


 ちなみに席配置は、透とテオドールが隣同士。

 それを映すため、四条が対面に座っている。


「す、凄いです……! これが全部食事ですか? 色んな種類があって全部美味しそうですよ透っ!」


「そうだな。迷うか? テオ」


「はい、正直どれも捨て難いです」


 初めてのレストランに、テンションが上がるテオドール。

 隣に座っていた透に、グイッと身を寄せた。


 近すぎて彼女の良い匂いが鼻を触る。

 なんていうか、見れば見るほど端正な顔立ちだと思った。


 こんなに可愛いなら、モデルやアイドルをやっていてもおかしくない。


「透、透! これ、ミラノ風ドリアっていうの……すごく美味しそうです! わたしの直感が美味だと言っています!」


「なら選べば良いと思うぞ、それ。実際人気メニューだし」


「はい! じゃあこれにします!」


 ルンルンと、ショートパンツから出た細い足をプラプラ揺らす執行者。

 ご機嫌なのが、体にまで現れていた。


 ここまでずっと歩きっぱなしだったので、動きやすく涼しい体操服は正解だったと思う。


 まぁ、そのせいで完全にロリドールなのだが。


「四条はどうする?」


「わたしは……そうですね、ペペロンチーノにします」


「意外だな、しょっぱいの好き?」


「こう見えて麺類が好きなんです、小さい頃好き嫌いが激しくて……唯一食べれたのがそれでした。あっ、もちろん今は克服してますよ」


「子供の頃の好き嫌い……わかるわーそれ、じゃあ四条も決定っと」


 あとは自分だけかと思った時、透は真横で体を揺らす少女に聞いた。


「テオ、もう1品好きなの頼んで良いぞ」


「ほえ? どういうことですか?」


「せっかく来たのに1品で満足はもったいないだろ、俺の分とシェアして、色んな料理を楽しめば良い」


「そっ、そんな贅沢……許されるのですか!?」


「良いじゃん贅沢、観光客もてなすのに財布の金ケチるほど、日本人は貧相じゃねえぞ」


「じゃっ、じゃあ……イタリアンハンバーグ食べたいです! こんなお肉の塊……食べたことないので」


「オッケー、ハンバーグね」


 透へ抱きつくように密着しながら、メニューを指差すテオドール。


 注文票に該当する番号を書いて、店員さんに渡す。

 さて、料理が到着するまで少し時間があった。


 透は、さっきから気になっていたことを聞いてみる。


「ところでテオ」


「はい、なんでしょう」


 お冷を美味しそうに飲み始めた少女へ、ぶっちゃけ聞いてみる。


「前から思ってたんだけど……、何で日本語わかるんだ? メニュー読むのも普通だったし」


 そう、彼女の言語能力だ。

 よほどのセンスが無い限り、外国人が日本語をここまで流暢に嗜むことは不可能。


 まして異世界人––––透は不思議でならなかった。


「……本当は秘密なのですが、せっかくここまでおもてなしをしてくれたのです。……ちょっとくらいなら、教えてあげても良いですよ?」


「サンキュー」


 錠前立案の懐柔計画成功が示された瞬間だった。

 これで、ダンジョンの未知のベールが少し知れる。


「わたしや姉のベルセリオン、他の執行者も……みんなダンジョンマスターの“加護”を受けているんです」


「加護?」


「はい、祝福……とでも言いましょうか。その中の効果の1つに、あらゆる言語の自動翻訳があります」


「んー、つまり……」


 ファンタジー感溢れすぎる答えに、透はスマホへメモしながら聞き返す。


「お前は端的に言えば、日本語自体はしゃべってないのか?」


「そうなりますね、わたしが口にした別の言語を……祝福が誰にでも伝わるよう変換しています」


「じゃあ口の動きがなんで一致してるんだ?」


「それも能力のおかげです、因果を捻じ曲げて日本語を喋ったように見せているだけですよ」


 凄い力だった。

 どうして異世界人が完璧に日本語を使いこなせるのか、これでハッキリした。


 そこで、唐突に四条が喋りかける。


「Understood, I'll ask one question: Can you comprehend this even though it's in English?」


 突然の英語、だがテオドールは微塵も動揺せず返した。


「はい、理解できています。それは英語というのですね?」


 四条の顔が強張る。


「どうやら本当のようですね、驚きました」


「っとなると、テオは全世界の通訳者顔負けってわけだ。なんだ……こっちで飯食ってけるじゃん」


 これがダンジョンの力……。

 あまりにもファンタジーだが、現実ならば受け入れるしかない。


 今は技研お手製の魔法手錠で魔力を縛っているが、本来の力が解放されれば……こんな少女でも軍人を体術で容易に上回る。


 この際、聞けるだけ聞いてみることにした。


「なぁテオ、そもそもお前たちはなんで日本に来たんだ? 教えてくれると––––」


 言いかけたところで、スマホが震える。

 それは四条も同じようで、画面を見て思わず凍りつく。


【速報、九州南方で中国海軍の軍艦2隻が撃沈か】


 付属していた動画には、この世のものとは思えない映像が映っていた。

 竜のような怪物が、レーザーを吐いて中国軍艦を蒸発させているのだ。


 それを見たテオドールが、顔色を変える。


「“アノマリー”……、もう目覚めていたなんて。いくらなんでも早過ぎる……ッ」


 予定外だが、詳しく聞く必要があった。


75話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


と思った方は感想、いいねでぜひ応援してください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 透「おかわりもいいぞ!」
[一言] 知っているのかテオ? まあ関係ないわけないけどw
[気になる点] 現在はダンマスを裏切っているような状態だけど、加護は付きっぱなし?取り上げられそうなものだけど、もしかしてダンマスも『配信モノ』のように、テオに密かにカメラを付けて地球を観察してたり?…
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