第69話・作戦成功
幼女に快楽を叩き込む悪い小説です。
「わ、わたしは今から何をされるのですか……!? 拷問? 切断? それとも今度こそ命を……」
「フフッ、それはやってみてのお楽しみよ♪」
真っ白な髪避けのカバーを掛けられ、頭だけ出た状態のテオドールがほえほえと怯えている。
まぁ、美容室初見からすればギロチンでもされるかもとは思うだろう。
横で四条が微笑みながら、カメラを回していた。
「じゃっ、始めます」
店員はまずヘアオイルを取り出し、指につけた。
「力抜いて〜」
「ぅ……ッ! っ!?」
始まったのは頭皮マッサージ、
アロマの匂いも合わさった熟練のツボ押しは、強張ったテオドールから緊張を一気に取り払った。
「どう? 気持ちいいでしょ」
「はっ、はい……。これはなんですか?」
「マッサージって言うの。お客さんにリラックスしてもらうのと、頭皮をほぐして髪のケアも同時に行ってる」
軽い指圧で、頭をなぞるように揉んでいく。
これは追加料金のオプションで、四条の提案により加えられたものだ。
「あぁ羨ましい、わたしも久しぶりに美容室行きたくなります……」
まぁ、半分本人の願望が入っているが。
「これが……マッサージ? 頭を揉まれてこんなに気持ち良くなれるなんて、全然知らなかったです」
一気にストレスを取り除かれたテオドールは、既に満足気だったが……。
「はい、じゃあシャンプー台に移ってくれる?」
「しゃ、シャンプー? 水で髪を洗うのですか?」
「あははっ、水じゃなくてお湯よ。まさか中世じゃあるまいし」
「お湯で髪を!? そんな贅沢が許されるのですか!?」
驚愕するテオドールを見て、ふと透が訝しむ。
「あれ? 錠前1佐が昨日……アイツを風呂に入れてなかったっけ? さすがにお湯くらい知ってるだろ」
「シャワーは浴びせましたよ、もちろん。ワザと冷水しか出ないようにして……ですが」
「あー……なるほど、“このため”か」
テオドールの常識からすれば、頭は冷たい水で洗うのが普通。
しかし、ここに来て彼女は体験したことのない幸福を味わうことになる。
「ひゃっ!?」
倒れた椅子に仰向けで寝たテオドールの頭へ、優しい水圧のお湯が浴びせられた。
ホカホカのそれが、長い銀髪を柔らかくほどけさせる。
「ふぁっ、ふわあぁあああ……っ」
彼女の髪を、高級シャンプーで丁寧に洗っていく。
四条と錠前がワザと冷水シャワーを前日に使わせたのは、まさにこの瞬間のため。
“お湯で髪を洗う”という、文明の暴力の威力を最大限まで高める目的があった。
日本の美容室が行うシャンプーサービスは、世界でも類を見ないほど質が良い。
巧みな技で、テオドールはなされるがままに頭をワシャワシャと洗浄される。
「だ、ダメです……、こんなに気持ち良いの……生まれて初めてっ。こんなの体験したら……もう二度と井戸水で頭を洗えなくなっちゃいます!」
それが狙いである。
危険なほどの快楽に、危機感を覚えたテオドールは理性でもって必死に拒否しようとした。
「ッ……!!」
だが、極上のシャンプーの前では無駄な足掻きである。
ほのかな花の香りと温かいお湯、熟練美容師の技。
これらが合わせて襲い掛かった結果––––
「はいっ、シャンプーとリンス完了。起きて良いわよ」
「………………」
「ん? テオドールちゃん?」
顔に掛かっていたシートをめくると……。
「スゥ……、スピー…………ッ」
これ以上なく気持ち良さそうな表情で、完全に熟睡していた。
最大火力のシャンプーを前に、執行者テオドールは呆気なく陥落したのだ。
「お客様、髪を切りますよ〜」
「ほぇっ!? あっ……なんで意識が……」
「もう立って良いわよ、あっちの椅子にいってくれる?」
「はっ、はい」
目を擦りながら立ち上がり、言われるがまま椅子へ。
次いでカットに入る。
テオドールの髪は膝くらいまで長く伸びているので、せめて背中ほどまで切ってもらうことに。
最初は顔のすぐ傍で動くハサミに怯えていたが、美容師さんに害意が無いことはすぐに理解する。
後半には、素直にカットを受け入れていた。
そして、仕上げのシャワーとドライヤー等を終えて––––
「はいっ、どうでしょうか!」
鏡に映った自分の姿を見て……、彼女は思わず唖然とする。
さっきまでの自分と同じはずなのに、美容師さんが手掛けた今は……完全に別物だった。
美しくカットされた銀髪は、日本産シャンプーとリンスによって煌びやかに輝いている。
毛先はしっかりと纏まっており、お子様な印象だったテオドールに、“オシャレ”という概念をさながらエンチャントしているようだった。
「これが……わたし?」
驚きを隠せないテオドールに、横から透が覗き込む。
「うん、似合ってんじゃん。お前くらい可愛い女子がオシャレしないのは勿体無いからな……綺麗だよ。テオドール」
「ッ……!!」
顔が一瞬で真っ赤になった。
嬉しさで表情が崩れる……!
透の言葉に、胸の鼓動がドンドンと勢いよく高鳴った。
それは、思春期女子にとって最強を誇る褒め言葉。
顔を赤らめたテオドールが、銀髪を今一度ポニーテールに括ってから見上げる。
「…………“テオ”で良いですよ。……新海さん」
「えっ、テオ? でもそれって……」
「ちょっと躊躇はしましたが……遠慮は無用です。––––こんな素晴らしい世界を教えてくれたのですから、当然ですよ。だからわたしも……」
少女の顔は、春の季節に咲く花のようににこやかだった。
「“透”と、今からそう呼ばせてください」
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