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第65話・中国の野望

 

 北京からの緊急連絡は突然だった。

 中国人民警察所属の(ワン)警部が仮眠を取っていたところ、大陸の同僚からいきなり電話が掛かって来たのだ。


 内容は、まさに寝耳に水のもの。


「異世界人が東京に……?」


 ただでさえ寝ぼけた頭が、さらにグチャグチャになりそうだった。

 状況を整理しつつ、同僚に確認を取る。


「異世界人って、例の動画で自衛隊に捕まってた女の子だよな? テオドールとかいう……」


「そうだ! 我らが解放軍のサイバー部隊が全力で獲得した情報だぞ!」


「未だに紙文化を捨てない後進国が、そんな大事な要人情報を垂れ流すか……? さすがにフェイクだろう」


「確かにイージスシステムや、ミサイルに関してはサイバーでは無理だろう。しかし自衛隊が何を買ったか等の些細な決済は電子で示される。直近の購入に、都内の学校の制服とジャージがあった!」


「なんでそれが異世界人用だと断言できるんだ?」


「軍の予算で子供の身の回り品は普通買わない、これはあの異世界人が偽装して日本に来る証左だ! 王! これは出世のチャンスだぞ!!」


 興奮した様子の同僚が、ファーウェイ社のスマホ越しにまくし立ててくる。


「異世界人を大陸に連れて来て、我が中国を絶賛してもらうんだ! 日本などという文化後進国よりも、中国4000年の歴史の方が遥かに重みがある!!」


 確かに中国は日本なんかよりも圧倒的に、全ての面で上回っている。

 少なくとも、中国人の若者に広がりつつある極右精神に則ればそうなるだろう。


「それができれば魅力的だが……、具体的にどうするんだ?」


「お前、こないだ国会前で反政府演説がお仕事の団体を使って、反ダンジョンキャンペーンをしようとしただろう?」


 そんなことまで知っているのかと、王は辟易とした。

 このプランは、実行に移そうとしたものの日米が行った『ダンジョンは管理されている』という声明によって、延期されていた。


 しかも、挙げ句に共産党から待てとの指示も入ったのだ。

 噂によれば尖閣諸島で何かあったらしいが、いずれにせよ出鼻をくじかれた格好となる。


 王としては、こんな海外派出所勤務を早く終えて––––本国でデカい仕事をやりたいのだ。

 まぁ、その本国も絶賛不景気の嵐だが……。


 20代の若者の失業率は30%を超え、不動産バブルは完全崩壊。

 中国版SNSには、卒業即失業なんていう言葉が流行っている。


「日本国内に、ベトナム人技能実習生という身分で入国した我々の工作員がいる。彼らならセーフハウスに武器もいくらか置いてあるだろう」


「おい、まさか……」


「まさかじゃない、異世界人を我々の手で奪い取るんだ! 護衛の自衛官がいても制圧できるだけの練度はある」


「東京のど真ん中で戦争しろと!?」


「安心しろ、誤魔化しは後でいくらでも効く。ちょうど去年中止で今年にもつれ込んだ花火大会があるだろう? それを狙うんだ」


 ここまで言うからには、おそらく共産党から直接指令が下りて来ていると見て良い。

 銃撃戦に発展しても、すり合わせできる力くらいまだ中国は持っている。


 彼の言う通り、異世界人を拉致––––訂正。

 招待して中国を観光させるのだ、上海の美しい街並みをレビューしてもらい、最後には天安門広場にでも連れて行って共産党の素晴らしさをアピールさせる。


 毛沢東画の前で記念写真を撮れば、国家主席も満足するだろう。

 王が待ち望んでいた、まさしくデカい仕事だ。


「銃は何を持ち込んでる?」


「95式アサルトライフルを数十挺と、弾薬が6000発。手榴弾もあると聞いた」


「極東一貧相な軍の陸上自衛隊以下じゃないか、せめてエアバースト付きの物は無いのか?」


「贅沢言うな、海上保安庁や公安の警備は厳しい。これが限界だ」


「くそ……」


「まぁ安心しろって、情報じゃ護衛は非武装。ちょっと銃突き付けたら即チェックメイトだよ」


 彼の言うことに間違いは無いだろう。

 おそらく護衛程度なら、銃撃戦にすらならないはず。

 これは没落しつつある中国が、国際社会のトップに立つ布石なのだ。


 ここを起点に、中国が偉大で巨大な国だと改めて世界に知らしめる。


 しかし……、


「なんだ、まだ気になることがあるのか?」


 王はずっと懸念を抱いていた。

 何か……、どこかおかしい。

 いくら日本人が無能でも、こんなに簡単にピンポイントで情報を垂れ流すか……?


 自分たちの存在を知っている“誰か”に、誘導されている気がしてならない。


「いや……、気にするな。異世界人は必ず連れて帰る。吉報を待っていてくれ」


「当然だ、配信機材の準備をして待ってるよ。次は天安門で会おう」


 天安門広場で異世界人が共産党を絶賛すれば、過去に起きた悲惨な事件も世界は忘れるだろう。

 王は、異世界人テオドールの捕獲準備を開始した。


65話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


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― 新着の感想 ―
[一言] いや、そこはOPPOで
[気になる点] そもそもの話、異世界人はインベーダー(侵略者)であり、日本は敵に対して自分たちの技術を見せしめるために連れ出してるのであって、友好的なことはないのよ。それなのに中国に拉致して称賛しても…
[一言] テオドールちゃん、可愛い
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