第64話・ダンジョンの外へ
眼精疲労が激しいため、もしかしたら明日の更新はお休みするかもしれません。
楽しみにしている方に、この場で先に謝っときます。
錠前の案により、テオドールを日本観光に連れて行くこととなった。
久しぶりの本土には、当然ながらダンジョン外郭部からヘリで向かう。
一度市ヶ谷へ降り立ち、そこから主に電車と徒歩で観光する予定だ。
「こんな感じかな」
荷物を一通り揃えた新海が、自らの服を整える。
既に7月も中旬になっており、関東の暑さは目立ち始めていた。
白い半袖と黒のスキニーパンツというシンプルな格好だが、自衛官らしく筋肉はしっかり付いているので、意外と似合う。
身長も176センチ以上あるゆえ、このコーディネートは無難だろう。
Gショックの腕時計を見て、そろそろかと戦闘団本部前に行った。
「おはようございます透さん、なんだか迷彩服じゃないのって新鮮ですね」
同じくスーツケースを持った四条が、笑顔で挨拶する。
服装は白いノースリーブのシャツに、ベージュ色のロングスカート。
靴もブランドは知らないがオシャレであり、元が可愛い四条を爽やかに見せている。
やはりご令嬢……こうして見ると自衛官とは全く思えない。
だがそんな彼女をもってしても、隣にいるテオドールの格好––––そのインパクトには負けていた。
「……なんで体操服なんだよ」
銀髪をポニーテールにした彼女は、都内のどこかにある中学校の体操服を着ていた。
まっさらな半袖と、紺色のショートパンツ……髪型も相まってどこからどう見ても––––
「普通の中学生にしか見えないだろう?」
見送りに来ていた錠前1佐が、どうだと言わんばかりに強調する。
やはり、このお方の仕業らしい。
「元の着ていた服はどうしたんです?」
「昨日お風呂に入って貰った時から洗濯しててね、濡れてるから無い。それに––––」
錠前は車にもたれかかりながら、理路整然と話す。
「考えてもみたまえ、彼女の映った動画は数十億回再生されている。東京に行くなら髪型と服装くらい現地仕様に変えるのは当然だよ」
「制服じゃダメだったんすか……?」
「最初はそっちを渡したんだが、本人の希望でこれになった。まぁカモフラージュにはなるでしょ」
確かに……。
一方のテオドールはと言うと、何かひたすら生地の素材に感動していた。
「凄い快適……! 動きやすくて涼しい、これで戦ったらきっと動きもより機敏になるっ」
華奢な手足を伸ばし、感動する執行者。
確かにこの格好なら、都内の中1女子と見分けがつかないだろう。
部活に熱心な運動系美女……にも見えるが、透からすればさらに容姿が幼くなった感がしてしまう。
これじゃテオドールではなく、ロリドールなのでは……?
そこまで考えて、口に出すのをやめる。
「そういうわけではい! 乗った乗った! もうヘリは待機してるから––––サッサと行っておいで〜」
半ば押し込められる形で、3人はLAVに乗り込んだ。
「さぁ。行ってらっしゃいー」
錠前の見送りで、LAVは発進––––ダンジョンの出口へ向かった。
同じ後部席でちょこんと座ったテオドールが、軽くお辞儀をしてくる。
「気を許したわけではありませんが、敵情視察……っということにしておきます。こうなったらとことん日本について知っておくべきと判断しました。今日はよろしくお願いします」
「よろしく。まぁそれで良いんじゃね? あの人の考えは俺にも読めんし……」
そうこうしている内に、ローマ風都市を抜けてダンジョンの外へ出る。
––––ダンジョン外郭庭園部、第4へリポート。
かつて自衛隊が最初に突入を行ったこの場所は、すっかり物資や兵器搬入の出入り口となっていた。
レールまで敷かれ、本土からの物資が滞りなく運ばれている。
へリポートには、スバル社製最新汎用ヘリコプター。
UH-2が待機していた。
4枚刃のローターが特徴的な、新型ビークルだ。
「アレが……、空を走る鉄の馬っ」
「サッサと乗ろうぜ、高度千メートルはさすがに冷える」
3人が乗り込むと、激しいエンジン音が響き渡った。
ローターが高速で回転し、フワリと浮かび上がる。
「ほ、ホントに浮いてる……! 一体どんな魔法を?」
「魔法じゃなくて科学な、揚力っていうのを利用しているんだ」
ヘリが離陸し、東京湾上空へ出る。
そこで、四条は窓の外を見るようテオドールに促した。
目に入った光景は、まさしく圧巻の一言……。
「ようこそ––––日本国へ」
自身の目を疑うテオドール。
彼女の視界いっぱいに、青空の下––––どこまでも広大に横たわる関東平野の大経済都市が映ったのだ。
東京から神奈川まで伸びた、大規模建造物群が地上を支配している。
先入観から、平原に都市国家があるくらいだろうと想像していた彼女は……思わず畏怖した。
これが敵の首都、こんなおとぎ話のような世界と戦っていた事実。
テオドールは、シャツの裾を握りながら苦々しく呟いた。
「勝てる……、わけがないです…………っ」
だが絶望するにはまだ早い。
東京観光は、ここからがスタートなのだ。
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