第62話・休日の過ごし方
ジャンル別月間ランキング“1位”ありがとうございます!!
まさかここまで評価して頂けるとは、全く考えてもいませんでした……。
––––ユグドラシル駐屯地 透と坂本の部屋。
整理整頓されたこの部屋は、今––––男2人の凄まじい殺意で満たされていた。
もしこの場に女子陣がいたら、ドン引きしていることだろう。
「隊長……今度という今度は白黒ハッキリつけましょう。いつまでもあなたの後塵を拝すわけにはいきませんので」
手にある物を持ちながら、前髪の奥で坂本は透を睨む。
「ほぅ、そう言うからには鍛錬を積んで来たんだろうな? 前は無様に地を這いずっていた記憶があるが」
「それも前回で最後です、今日をもって……あなたの天下は終わるんですよ。新海隊長」
向け合うのはただ殺意のみ。
今まで煮え湯を飲まされて来た坂本が、堂々と宣言。
そして、カセットを挿入する。
「今日こそ––––隊長の不敗神話を終わらせます!」
坂本の強い言葉と同時に、モニターへ画面が現れた。
タイトルコールと合わせて、宣戦布告をぶちかます。
「このスマ○ラでねッ!!」
2人の手には、異なる種類のコントローラが握られている。
画面には、某有名格闘ゲームが映っていた。
色んな会社のキャラで戦う、超ヒット作だ。
「あれ、坂本––––お前ゲー○キューブコン派だったっけ?」
「最適な即死コンボを出すため、乗り換えたまでです。隊長こそ良いんですか? そんな初期のデフォコントローラーで」
「今作から始めた俺はこれが一番しっくり来るからな、お前こそ……乗り換えを言い訳にすんじゃねえぞ」
「当然、今日こそあなたを引きずり下ろします」
今日は休日。
日々の業務から解放された2人は、部屋で仲良くゲームを楽しんでいた。
ちなみに、早朝からぶっ通しで色んなゲームを遊んでおり、さっきまでは桃○、○リオパーティー、○リオカートをやっていた。
本体とソフトは全て坂本の私物だ。
一般人からして見れば十分ゲーマーな坂本だが、持ち主の彼をもってしても透だけは倒せていなかった。
「あっ、リーチ長いキャラにすんのか。俺はどうすっかなぁ……」
なんとなく、いつも通りの得意キャラを選択。
障害物が存在しないタイマン専用ステージで、2人の自衛官の仁義なきバトルが始まった。
コントローラーの操作音が響く。
「なぁ、あの捕まえた女の子……テオドールだっけか。今どうしてんだろうな」
「曲がりなりにも敵ですからね、錠前1佐のことです……きっとえげつない拷問してますよ」
「偏見だろそれ、鬼じゃあるまいし……」
特訓の成果が出ているのか、ダメージは坂本が優位を取っている。
透は防戦しながら会話を続けた。
「尋問の類いだったら、特戦の久里浜とか詳しいだろ。あそこは捕虜になった時の訓練もしてるって聞くし」
「アイツまだ特戦1ヶ月なんで、尋問訓練やってませんよ。本人もすっかりこの駐屯地に馴染んでますし……戻る気あるんすかね?」
「へー、それいつ聞いたの?」
「昨日の晩飯時です、たまたま席が向かいになったので嫌々聞いてやりました。アイツ的にはテオドールって子のことが気になってるみたいです」
「そういえば四条も手荒なことは望んでなかったっけ、まぁ世の中––––」
それまで優勢だった坂本のキャラを、1〜3フレーム単位のカウンターで吹っ飛ばす。
「なっ!」
「甘くないってことだ」
場外に出てしまえば敗北だが、まだ復帰のチャンスがある。
フェイントを掛けながらステージに戻ろうとして、
「ほい」
「なぁっ!!」
相手を垂直に叩き落とす通称メテオ技が、坂本の復帰を阻止した。
ゲームセットの画面に移り変わり、透の勝利が演出される。
「くっそ……!! 隊長の直感とカウンター技の相性が良すぎるッ!」
「次はフェイントの練習だな、約束通りアイス奢れよ」
「男に二言はありません……!! 最近値上がりしましたが80円のソーダアイスでいかがでしょうッ」
「絶妙にケチだな……、まぁそれで頼む」
次は何のモードをしようか選んでいた時、
「やぁ、休日を楽しんでるね」
「「うぉおッ!!?」」
唐突にドアを開けて来た錠前1佐が、ニッコリと笑いかけてくる。
「なんですか1佐……、せめてノックしてください」
「ごめんごめん、楽しそうだったから邪魔したくなくってね」
まさか部屋に来るとは思っておらず、ひたすら困惑する2人に錠前は提案をした。
「部屋でゲームも良いけど……、久しぶりに本土へ帰りたくないかい?」
この言葉に反応したのは坂本だ。
「えっ、外泊許可くれるんですか!?」
「あぁ、そのために来た。最近ずっとダンジョン尽くしで疲れただろう? 関東近郊なら2泊までオッケー出すよ」
突然のサプライズに歓喜する坂本。
だが、透はそんな錠前の”後ろ“に立つ人間が気になってしょうがなかった。
「よ、よぉ……テオドール。久しぶり」
「っ……」
どこか気まずそうな彼女へ、透も相応にギクシャクと挨拶。
そこで錠前が数歩出る。
「第1特務小隊の全員に外泊許可を出す、ただし1つ––––条件だ」
錠前はその整った顔で、女子高生ウケの良さそうな笑みを浮かべた。
「テオドールくんを”日本観光“に連れて行ってあげたまえ、幹事は新海––––お前に任せるよ」
男子部屋の空気……いや、時間が止まった。
62話を読んでくださりありがとうございます!
ちょっと作者が目を痛めてしまい、端末を見るのが辛くてなかなか感想が返信できていません(書いてくれた方すみません……)。
一応、本話からできる限り返して行くつもりです。
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