第54話・ついウッカリ攻略してしまった件
【ラペリング降下カッケ––––!!!】
【俺登山家だけど、こんなの絶対できない】
【やっぱり自衛隊すげぇわ、こんな攻略法見たこと無いwww】
【俺がダンジョンマスターだったら涙目だな】
ラペリング降下を完了した4人は、すぐさまカラビナを外して戦闘態勢に入った。
透たちを降ろしたUH-1が交代し、次の部隊が降りてくる。
総勢で、ひとまず40人になるはずだ。
「特科とコブラが事前に処理してくれたおかげで、楽に来れたな」
そう呟いた透の背には、20式よりも遥かに大きい得物が背負われていた。
食い入るように見た久里浜が、「ウワッ……」と嫌そうに呟く。
「新海隊長のそれ……『対戦車無反動砲』?」
「おう、また硬いボスが出て来ても嫌だからな……これならドラゴンだって倒せるぞ」
「勇者の剣がLAMとか嫌なんですけど……」
正式名称“110ミリ個人携行対戦車弾”、通称パンツァーファウスト3。
これは、陸上自衛隊が運用する歩兵火力の中でも最大のもの。
名前から察せる通りドイツ製で、第二次世界大戦で運用されたパンツァーファウストシリーズの最新型である。
「その言い方だと、千華ちゃんは良い思い出が無いんですか?」
周囲を警戒しながら、四条が質問した。
「当たり前じゃない! レンジャー教育でそれ(13.9kg)を背負わされて不眠不休からの数十キロ行軍……。地獄だったわ、肩と背中は砕けるかと思ったし、途中4回は本気で泣いたもん……」
なるほどトラウマがあるらしい。
そんなパンツァーファウストだが、透は今絶賛使おうか迷っていた。
「坂本、やっぱアレがコアっぽいよな……?」
「そうですね、なんなら屋上崩して普通に空から見えてましたけど」
4人の前には、人間サイズのクリスタルが土台に置かれる形で浮いていた。
明らかに、壊すか奪うかすればオーケーな雰囲気。
「っていうか、前に下でベルセリオンとかいう子が言ってたよな? タワー上部のクリスタルを取ればクリアだって。絶対アレじゃん」
「わかりませんよ、見え透いた罠かもしれません」
他の部隊が次々降りてくる中で、透は思案する。
「久里浜」
「なに?」
「お前のHK416に付いたレーザーサイトで、あのクリスタルを照らしてみてくれ。物理的にちゃんと存在するか確かめたい。罠があるなら反応もするだろう」
「わかったわ」
ハンドガード上部に付いた、黒色のレーザーデバイスが向けられる。
「可視光でいく? それとも赤外線?」
「可視光で頼む、ナイトビジョンが無いから赤外線じゃ見えん」
「ほい、了解」
スイッチが押され、フルスペックのレーザーが照射される。
緑色のそれがクリスタルに触れた瞬間––––
––––バチチチチィッ––––!!!
凄まじい破裂音が、レーザーに反応して響いた。
どうやら、
「なるほど、触れたら感電する感じか。本当に攻略させる気無いんだな」
「どうします? 透さん」
「どうするもこうするも、取れんなら壊すしか無いだろ。こんなところにアーム付き重機なんざ持って来れないし」
っとなれば、やることは決まった。
「吹っ飛ばすぞ、各自––––周囲警戒」
パンツァーファウストを取り出し、畳んでいたグリップを展開する。
「透さん、クリスタルはおそらく神秘的なバリアで守られています。思い切りやっちゃってください」
「おう、しかし妙だな……ここまで来て誰も迎撃に来ないなんて」
正直、ボスを想定していたので拍子抜けだった。
だが言っても来ないものはしょうがないので、透は弾頭部分に手を伸ばした。
この武器は、先端のプローブを引っ込めていれば榴弾、引っ張れば対戦車榴弾として使える。
今回は硬そうな目標なので、透はプローブを引っ張る。
「後方確認––––全員、俺から離れろよ」
膝を折る。
スコープでゆっくり照準し、透は引き金をひいた。
「射ェッ!!」
爆音と共に、パンツァーファウスト3が発射される。
弾着は一瞬の出来事で、確かに何か神秘的なバリアは作動した。
したのだが、モンロー・ノイマン効果によって押し出された金属流がバリアをアッサリ貫通。
700ミリの鋼鉄板をブチ抜く兵器を前に、神秘は無力だった。
ベルセリオンが言っていたクリスタルは、木っ端微塵に粉砕されてしまう。
【終わったか?】
【なんだ、一瞬だったな】
【ドヤセリオンちゃんは来ないの? もう破壊しちゃったけど……】
周りの自衛官も、これで良いのか……?
的なムードに包まれる。
しかし、
弾頭が無くなった無反動砲を下ろした透だけは、“直感”で察知していた。
クリスタルがあった場所の正面に、魔法陣が現れたのだ。
まさか––––
「間に合わなかった…………!! やってくれましたね……! 自衛隊ッ!!」
転移して来たのは、顔を真っ赤にして怒りを見せたテオドール。
そこで全員理解する、どうやら自分たちは……運営の想定を超えたやり方でクリアしてしまったのだと。
「まさか空から来るなんて……さっきまで必死にタワー内へトラップを仕掛けていたわたしが、本当にバカみたいじゃないですか!!」
怒り狂うテオドールの周囲に、いくつもの魔法陣が出現した。
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