第51話・中露を想定する自衛隊に、小手先の戦術変更は通じない
自衛隊側から見ても、明らかに敵の動きが変わっていることを確認できた。
雲の下へ降りたスキャン・イーグルが機体下部のカメラで捉えたのは、地面から無数に咲き出した“花”だった。
2メートルにまで伸びたそれは、開いた中央を空へ向け––––
「高度上げろっ!!」
上官の指示で操縦手がグンと機首を上に上げた瞬間、60はくだらない数の花から大量の光弾が放たれたのだ。
これは、テオドールが仕掛けた魔法砲台––––名を“スカイ・ランス”。
スキャンイーグルへ向けて発射されているのは、光属性魔法の速射砲のようなもの。
ラビリンス・タワーを中心として、第二次世界大戦時の対空砲火のような攻撃が行われる。
「弾速もまぁまぁ速いな、20ミリ機関砲くらいはありそうだ」
「しかし精度が良くないなぁ、手動ですかね? CIWS(高性能20ミリ機関砲)ならとっくに落としてますよ」
見た目は派手だが、高度2500メートルを飛ぶスキャンイーグルには当たらない。
しかし、こちらも速度が遅いので油断はできなかった。
そう思った矢先––––
「うおっ!」
光弾の1発が、スキャンイーグルを掠めた。
姿勢制御が困難になり、高度が落ちてしまう。
「コブラに援護を要請しますか?」
「いや、待て––––」
カメラが捉えたのは、塔の中腹から飛び立ってくるワイバーン群だった。
東京湾航空戦において、あのモンスターは時速400キロ以上の速度で移動できることが判明している。
UAVは元より、攻撃ヘリにとっても危険な存在だった。
「貴重な官品だぞ、ここはウクライナじゃないんだ……雑に落としたら叱られる。特に鹵獲されるのは一番避けたい」
「低空を飛びます、前衛部隊に援護の要請を」
体勢を立て直したスキャンイーグルが、平原を縫うように飛行する。
光属性魔法の嵐が、逆にワイバーン相手の盾となって機能していた。
「ランデブーポイントまであといくらだ?」
「15秒です」
「よしっ、“93式近SAM”に連絡––––攻撃始めっ!!」
陸上支援部隊として前線に出ていたのは、『93式近距離地対空誘導弾』。
トヨタ製高機動車の車体に、光学機器と4連装発射機を搭載した移動式のSAMだ。
東京湾の戦いから、飛行型害獣に備えて急遽ダンジョンに運び込んだのである。
「発射っ!!」
丘陵の上から、93式の対空ミサイルが撃ち放たれた。
この誘導弾は、射手が身につけたゴーグル型の照準器で狙いをつける。
ロケット噴射で勢いよく飛び出したミサイルは、スキャンイーグルの後方から迫るワイバーンへ接近––––ほんの一瞬で4体を叩き落とした。
「近SAM、全弾命中!」
「スキャンイーグルを元の高度に戻せ、これより敵の防空網を破壊する!」
ラビリンス・タワー近辺は、複数のワイバーンと魔法砲台によって固く守られている。
だが自衛隊は、東側最強の中国軍とロシア軍を相手に訓練されていた。
いくら戦術が少しマトモになったと言っても、中露の防空網に比べればさして脅威でもない。
今度は、陸自側から仕掛けた。
「残りの近SAMを使う、ワイバーンを残らず撃ち落とせ!」
3両の93式から、次々と対空ミサイルが発射された。
美しい弾道を描いた誘導弾は、敵の視認距離外からあっという間に着弾。
空中で火薬の花を咲かし、ワイバーンを花火たらしめた。
「ワイバーン、全滅を確認! 93式の残弾ゼロ!」
「よしっ、特科に連絡––––アメリカから貰った“例の砲弾”をお見舞いしてやれ!」
後方20キロに展開した『99式自走榴弾砲』が、12門上空へ指向された。
その弾頭は––––“通常にあらず”。
51話を読んでくださりありがとうございます!
「少しでも続きが読みたい」
「面白かった!」
「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」
と思った方はブックマークや感想、そして↓↓↓にある『⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎』を是非『★★★★★』にしてください!!
特に★★★★★評価は本当に励みになります!!! 是非お願いします!!




