第505話・完全復活
それは復活の印。
第5エリアを襲った地震は、”地下深く”に眠るモノの躍動が起こしていた。
「………ッ!! 間に合わなかったか!!」
CPの自衛官が歯ぎしりすると同時に、タイマーのカウントが一気にゼロを刻んだ。
この作戦の前に、執行者エクシリアから事前情報を得ていた。
『第5エリア全域に異変……特に地震とかが起きたら、迷わず部隊を撤退させなさい。考えるのは後、死者を出したくなかったらとにかく言う事を聞くように』
エクシリアは元々天界に通じていた執行者。
情報の確度は高い。
”破壊神イヴ”が復活の儀式を終え、目覚めたのだ。
「宇宙船内部に侵入した特戦と連絡は取れるか?」
「ダメです、エリア全域で通信障害が発生中! 直に途絶します!」
「ッ! 全部隊に緊急で回せ!! 大至急撤退、第2エリアまで後退せよ!!!」
エリア全域を揺らすほどのエネルギー。
前回の駐屯地防衛戦では1000分の1しかパワーが出ていなかった。
それが今――――”フルパワー”で復活した。
同じ特級という区分でも、神獣や大天使の比ではない。
アノマリーと自称していたことから、警戒レベルはあのリヴァイアサンと同格だった。
「どうやら、僕らの勝ちのようだね」
傷を治癒しながら、大天使ガブリエルが呟く。
その眼前では、未だケガ1つ無い万全状態の執行者テオドールが立っていた。
「イヴが……目覚めたということですか」
「そうだ、”史上最強の魔導士”。死にたくないなら早く逃げな、まぁ……もう逃げ場なんて宇宙のどこにも無いけど」
それだけ言って、ガブリエルは転移魔法で消え去る。
おそらく、イヴの元へ行ったのだろう。
その直後に、背後から焦り気味の声が掛けられた。
「テオドール! 逃げるわよ!!」
大汗をかいた執行者エクシリアが、ビルの屋上へ降り立つ。
どうやら、他の大天使も姿を消したらしかった。
もしイヴの復活を許せば、現状の戦力での対処は不可能。
今すぐ撤退しようとした時だ。
「ダメです師匠! ここで逃げては決着がつけれません! ガブリエルだけでも倒さないと……!!」
テオドールは焦っていた。
彼女は約束を破れない人間だ。
ここで事前の宣言を反故にすれば、日本の国際社会での立場が危うくなる。
最悪単独での追撃も考えた瞬間だった。
「久しぶりであるな、エクシリア」
2人の背後から、妖艶な女性の声が響いた。
数秒の沈黙の後、ゆっくりと振り返る。
「イ……ヴ…………ッ」
エクシリアの顔が青ざめる。
執行者2人の前には、羽衣を纏い、頭上には光の輪っかを浮かべ、光の羽を持つ女性。
破壊神イヴが立っていた。
その容姿は前に見たエンデュミオンではなく、正真正銘の本体。
彼女は不敵な笑みをただ見せていた。
光り輝く”青い眼”を開きながら。
「『神眼』…………ッ、実在したの?」
それは、『魔眼』と対をなす伝説の存在。
この世の全ての事象を見通し、あらゆる魔法を行使可能にする神の眼。
「やはり光は生で感じるべきだな、命の尊さを実感できる」
刹那、イヴは目の前から消えていた。
否、あり得ないほどの超スピードでテオドールの隣にいた。
その拳は、彼女の柔らかい腹部に手首まで埋まっている。
「ッ――――――――!!!!!!!??????????」
内臓を全てひっくり返したような勢いで吐血したテオドールは、音速を超えて弾き飛ばされた。
背後に立っていた高層ビルを粉砕しながら貫通し、さらに奥のビルへ激突。
10棟以上の建造物を貫きながら吹っ飛んだ彼女は、最終的に支援タワーの1基へぶつかることでようやく止まる。
室内へ大量の瓦礫と一緒に転がり込んだテオドールは、仰向けに倒れ――――
「ゲポッ…………ッ」
鮮血を口から溢れさせると、ゆっくり……その呼吸を止めた。
「ふむ、直前で全魔力を腹に込めて即死だけは免れたか。センスの良い女児であるな」
感心した様子のイヴを、影が覆った。
「お前えぇえええええええええッッッ!!!!!!!!!!!」
血界魔装『雷轟竜の鎧』へ変身したエクシリアが、本気の一撃をハンマーに乗せてぶち当てた。
イカヅチが吹き荒れ、屋上を大きく揺らす。
が、
「そう焦るな、今は気分が良いのだ。おぬしらを余計に苦しませるつもりは無い」
イヴはそんな執行者最強の攻撃を、指1本で止めてしまった。
あまりにも規格外、エクシリアを以てすら足元にも及ばない。
これが――――
「すぐ全員楽にしてやろうぞ、そして――――世界は再び始祖へ還るのだ」
史上最強の魔導士――――!!!
さしもの彼女も、死を覚悟した瞬間だった。
「ッ!?」
2人の上空を、目が潰れそうなほどの光が覆った。
「「暁天一閃!!!!」」
エクシリアがその場を飛び退く。
「出力最大――――『極ノ煌』!!!」
「『極ノ槍』!!!!」
最強クラスの光属性魔法、その奥義が2連続でイヴに降り注いだ。
ビルが崩壊し、すさまじい爆発が発生。
上空から降りて来たのは、
「ごめん! 遅くなった!!」
執行者ベルセリオンが、ハルバード片手に着地。
問題は、もう1人の方だった。
「イヴ様に攻撃するとは…………ッ! 大天使でありながらなんたる屈辱!!」
頭に紙袋をかぶって顔を隠した、謎の男だった。




