第499話・侵攻、第5エリア!
時の女性内閣総理大臣の決断は、迅速だった。
国連での主権移管が決まる前に、第5エリア侵攻を既に命令していた。
ラビリンスタワー深部にあった入り口を執行者エクシリアが地上へ移し、車両や人員の侵入を秘密裏にできるよう工作。
先行して”特殊作戦群”が突入し、出入り口を速やかに制圧したのだ。
「なんや、入り口の移動も含めてずいぶん楽に進んだな」
喋ったのは、関西弁の自衛官。
手にはMP7A2サブマシンガンが握られており、周囲には天界の兵士たちが血まみれで倒れている。
「そう言うなアサシン、執行者いわく――――錠前1佐だけを通さない結界。裏を返せば、1佐が通る以外のことはなんでもできちまうって事だ」
「さすがアーチャー、良い分析やね」
天界側も、当然自衛隊の侵入は警戒していた。
だが日本側は、突入前にウクライナから購入したFPVドローンを多数投入。
指揮所と通信施設に自爆攻撃を仕掛けた後、アサシンとアーチャーが侵入。
たった2人で、30人の天界兵士を制圧してしまった。
まぁ、この特戦の小隊長クラスは錠前勉が直々に鍛えた精鋭。
負ける可能性など微塵も無かった。
「こちらアサシン、通信施設と臨時指揮所を破壊。送れ」
「こちらCP、了解した。特科と機甲科が突入する! Sは引き続き攪乱を続行されたし」
この奇襲を皮切りに、陸上自衛隊の90式戦車および16式機動戦闘車が侵入。
次いで99式自走榴弾砲が展開し、高台に陣取った。
「まるで巨大な古代都市群だな……、あの中央にあるのがHVT(最重要目標)か」
「よし、特科大隊砲撃開始! 目標は中央以外の軍事施設」
前進する戦車中隊の上を、155ミリ榴弾砲が駆け抜けていった。
――――ドッドドドドンッ――――!!!
突然の攻撃を受けて、天界側は混乱状態に陥った。
基地は宇宙船を囲むように構築されており、5ブロックに分かれている。
1ブロックの中に兵舎、武器庫、魔導車両などが置いてあるのだ。
「タイガー1より中隊各車! 特科の支援がある内に突っ込むぞ!!」
この戦車部隊は、第3エリア侵攻を行った北部方面隊所属の部隊。
その中には、かつて任官したばかりの新海透と戦った者たちもいた。
「目標正面ゲート! 弾種、対榴! 撃てッ!!!」
12両の90式戦車から、120ミリHEAT弾が轟音と共に放たれた。
防御魔法でガードされた堅牢なゲートだったが、戦車砲の前には無力。
大爆発を起こし、周囲に展開していた兵士ごと薙ぎ払った。
「今だ!! 96各車!! 吶喊!!」
戦車隊の後方から、96WAPCが数両加速。
瓦礫を吹っ飛ばし、敷地内へ強引に突入。
上部に搭載された12.7ミリ重機関銃が連射される中、後方のハッチから普通科歩兵が散開。
慣れた動きで瓦礫に身を隠し、89式小銃を発砲した。
「こちら第1突撃部隊! 陣地内に侵入! これより中央の宇宙船へ向かう!!」
「了解! 特科は砲撃を続行!! 普通科は基地の制圧を開始せよ!! 破壊神が目覚める前に次元エンジンを掌握する!!」
この手練れた攻撃に、天界側の対応は完全に後手へ回った。
「敵襲ー!!」
サイレンが響き渡る。
窓を開けて爆発を視認した兵士たちは、すぐさま武器庫へ。
魔導杖を手に取ると、大急ぎで兵舎の外へ走る。
しかし、彼らが戦場で活躍することは無かった。
――――ピッピッピ――――
兵舎の出入り口には、”クレイモア地雷”が設置されていた。
兵士たちが赤外線センサーに触れた瞬間、それは爆発。
指向性の破片を撒き散らし、天界兵士たちを吹っ飛ばす。
「こちらキャスター、敵の漸減に成功。作戦を続行する」
仕掛けたのは特戦屈指の工作専門家であるキャスター。
事前に隠密で侵入していた彼は、基地内のあちこちに罠を仕掛けていた。
自衛隊は内部に特殊作戦群、外部から機械化部隊の侵攻、そして特科の支援砲撃による三重攻撃を行っていた。
エリアの入り口に設置されたCP内では、無線機が絶えず鳴り続ける。
「第1~第4中隊、基地内部に突入成功!! 各ブロックの司令タワー掌握を急ぎます!!」
「よし! 大天使が出てくる前に畳みかけるぞ! ”スウォーム”攻撃開始!!」
特科大隊の陣地から1キロ離れた場所で、遠隔操作のFPVドローンが次々と離陸した。
その数――――250機。
全てウクライナで実践経験があるドローンで、機体下部には”RPG-7V2”の弾頭が付けられていた。




