第486話・急襲
光の正体は”転移魔法”だった。
粒子が一か所に集まると、風と共に1人の男が現れた。
「ほう、ここが貴様らの根城か」
美しい金髪に若く端正な顔。
背中からは純白の翼を翻し、全身を鎧で覆った敵――――
「なかなか、手入れの行き届いた部屋だな」
”大天使ウリエル”だった。
そう、約束の相手はこの男だった。
第4エリアで別れ際、会う約束をしていた。
「そりゃどうも、そんじゃ――――」
坂本と久里浜の動きは神速だった。
一瞬ウリエルが油断した瞬間を逃さず、久里浜が腰に隠していたIWBホルスターからG17自動拳銃を抜き発砲。
肩部分の鎧に当てて体勢を崩すと、次の一瞬には坂本が肉薄。
魔力回路の動きを阻害する、技研特性の魔道具を手首にはめ込んだ。
「……なるほど、仮にも国で一番優秀な戦闘員。理由がなんであれ……わざわざ敵である私を自由にする意志は無いというわけか」
「そういうこと、ちなみにお腹殴った仕返しでもあります」
ウリエルは内心で感心していた。
第4エリアでは圧倒できただけに過少評価していたが、この2人ですら恐ろしく強い。
現に、ナノ秒以下の隙を突いて拘束具を着けられた。
こうなってしまえば、自分は大天使ではなくただの人間。
「わかった、降参だ。敵対はしないと約束しよう」
両手を挙げるウリエル。
「俺らも本拠地に敵を招き入れて壊滅なんてしたくないからな、悪いが許可が出るまで駐屯地からは出さねーぞ」
「承知している、ワンチャンスあればと思ったが……どうも今の私ではお前たちに勝てないらしい」
執行者やそのマスター、現代最強である錠前勉に隠れがちだが、坂本と久里浜も今や歴戦の自衛官。
実力で言えば米軍のフォースリーコンを遥かに凌ぐ。
そんな2人が本気でやれば、魔力抜きでも道具1つで大天使を無力化できてしまうのだ。
ウリエルが無抵抗を宣言したと同じ頃、部屋の扉が開く。
「おっすー、なんとか終わったわー」
四条陸将との面談を終えた新海透が、一段落といった感じで入室。
ウリエルと目が合った。
「へぇ、ホントに1人で来たんだ。坂本、拘束は?」
「済ませました、もし暴れてもフィジカルで圧倒できます」
「了解、じゃあ早速本題を聞こうか」
ベッドに座った透は、自販機で買ってきたエナジードリンクの蓋を開けた。
「天界の大天使が、なんでわざわざリスクを冒して俺らの拠点に来た?」
一口飲みながらの問いに、ウリエルは真剣な表情で透を見つめた。
「新海透……直接会うのは初めてだが、なるほど」
顎に手を当てながら、ウリエルはどこか納得したような言葉を放つ。
「林少佐の言っていた通りの傑物のようだ、ちなみに彼は無事なんだろうな?」
「アイツなら本土で公安から取り調べ受けた後、中国にちゃんと返すよ。これからの大陸にあの男の知恵は必須だからな」
「意外だな、てっきり敵国の復興など望まんと思っていたが?」
「核兵器を持った小国に分裂されるよりか、1つの民主主義国家でいてくれた方がよっぽど楽なんだよ」
「はっは、あのガブリエルが久しく文句を言っていただけはある。こんな男がいる国と戦っていたと思うと恐ろしいな」
やはりというか、大天使ガブリエルやサリエルは生きているようだ。
連中は未知の蘇生装置を保有しているようで、何度倒しても復活してしまう。
どこかで上限はあるはずなのだが……。
それでも今は、眼前のウリエルの対処が優先だった。
「で? 天界の大天使であるお前がなんでわざわざここに来た?」
「なんだ、部下から知らされていないのか?」
意外そうな顔をしたウリエルは、真剣な表情で言い放った。
「――――全ては”魂の一杯”のためだ」




