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第483話・食後のデザートは世界の真理!

今まではマンガボックス・アプリ限定でしたが、ブラウザでも普通に本作のコミカライズ版が読めるようになったそうです!

まだの方はぜひどうぞ!!

 

 冷蔵庫の扉が閉まる音が、やけに重かった。

 秋山が両手で抱えて運んできたのは、もはやパフェというより――――“塔”と言えよう。


 透明な特大グラスの中に、苺、苺、苺!

 その隙間を埋めるようにミルクアイス、ホイップ、スポンジ、コーンフレーク。

 そして頂上には、これまた真っ赤なあまおうが王冠みたいに鎮座している。


 執行者2人は、思考が停止したように固まった。


「秋山ぁ? これって……デザートかしらぁ……?」


 エクシリアが、恐る恐る言葉を選ぶ。

 ベルセリオンはもう既に腹が鳴っていた。


「フッフーン」


 パフェを出した秋山が、ドヤ顔で胸を張った。


「そう! 秋山さん特製の特大“苺ミルクパフェ”! 疲れた身体には糖分、そして乳製品! これ世界の真理だからね。ウチの男子共じゃ理解できないかもだけど」


「世界の真理なら、もっとコンパクトでも良いと思うのよねぇ……」


「甘いわねエクシリアさん。第4エリア攻略でいよいよ王手なんだから、お祝いのデザートも特別であるべきじゃない? パフェで胃がもたれない若人の青春は一瞬よ?」


「さすが、錠前勉に付き合ってただけはあるわね……。言動がそっくり」


 エクシリアが半目になる一方で、ベルセリオンはグラスを凝視していた。

 まさしく、獲物を見つめる目だ。


「秋山、た……食べていい? もう、我慢できない」


「もちろん! 今日は労いの日! 遠慮は罪! 外患誘致と同じくらい!!」


「ゴクッ……」


 ベルセリオンが溢れる唾を飲み込んで、スプーンを握る。


 ――――ザクッ。


 まずは頂上のあまおうを、迷いなく掘り起こす。

 ホイップが崩れて、芳醇な赤い果肉が一気に露出した。


「ちょ、ベルちゃん!? そこは最後に残すやつじゃ――――」


「いいや行くわ!!!」


 即答。

 そして一口。

 最高級のあまおうを、贅沢にも一口で頬張った。


「……っ!」


 ベルセリオンの瞳孔が、ふわっと開く。


 襲って来たのはジューシーな苺の甘酸っぱさ。

 ミルクのやさしい甘み。

 ホイップの軽さが、口の中で雪みたいに溶ける。


 さっきまでピザという油の“暴力”を受けた舌に、今度は甘味という“癒し”が流し込まれていく。


「ふぇ……」


 思わず鳴いてしまう。

 顔は放心状態で、パフェのインパクトに初撃でダウン。

 レフェリーがいたなら、カウントダウンが取られるだろう。


「ベルちゃん、さっきから擬音しか出てないわよ?」


「ふぇ……、ふぇえー」


「うーん、さすがにピザからのパフェじゃ語彙を粉砕しちゃったかぁ。これは通訳が必要ね……」


 ノックダウンした執行者を見て、勝利を確信する秋山。

 隣でエクシリアが呆れたように見ながらも、彼女はスプーンを取る。

 そして苺とアイスを一口。


「はぇ……!?」


 今度はエクシリアが変な声を出した。

 油でボッコボコにされた舌が、パフェの甘味と酸味で浄化されていく。

 言うならば魂の洗浄。


 180年生きてきて、これまで食べたデザートは未完成の消費期限切れだったのではないかと思考。

 もうこうなった2人を、止める理性は存在しない。


 城を崩すようにパフェをつつきまくり、一心不乱に口へ放り込んでいく。


「ふぇー」


「はぇー」


 至高の笑顔を見せる2人の執行者。

 それを見た秋山は、心から満たされていた。

 彼女は聞こえないよう、ポツリと呟く。


「学生時代はバカだったなぁ、子供ってこんなに可愛いのに」


 一時期のひねくれた自分を思い出す。

 当時は子供など大嫌いだったが、防大を卒業後――――錠前と決別してから彼女は成長していた。

 今ではすっかり、子供大好きの優しいお姉さん。


 眼前でパフェを頬張る執行者2人が、敵ではない本物の天使に見える。

 この愛おしい存在は、自分たち大人が守らねばならない。

 否、そのために大人が存在するのだと改めて確信した。


 ――――ピロンッ――――


「おっ」


 スマホの着信音が鳴る。

 取り出して確認すると、メッセージの差出人はよく知った男。

 VPN回線で、アプリを開く。


『てめぇ美咲、自分だけ良いとこ持ってってんじゃねえぞ』


 公安外事課第3係、真島雄二から怒りのメッセが届いていた。

 さしずめ執行者たちを労いたかったが、仕事が忙しくて予定が作れず妬んでいるのだろう。

「フッ」と笑った秋山は、即座に返信。


「真島くんもダンジョンくればー?」


『行けたら苦労してねーわ、こっちは”寝返って来た中国人”の処理を勉に押し付けられてんだよ』


「ご愁傷様ー、錠前くん今音信不通だから、文句は隊長の新海さんによろしくねー」


『チッ、相変わらず逃げ足の速い野郎だ。そういえば――――』


 メッセージが続く。


『本土の陸上自衛隊が大騒ぎしてたな、陸将が数多の阻止線を突破してついさっきダンジョンに行ったらしい』


これにて第4エリア攻略編は終了。

次回より、“最終章”––––【遍く世界の終着点】編が始まります。


ここまで応援本当にありがとうございます。

あと少しだけ、お付き合いくださると幸いです。

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 1話から一気読みしました(挨拶)  自衛隊×ファンタジーモノとしては恐らく有名なものがないと言えるローファンタジー系の作品。  現実の国内情勢や国際情勢にある程度以上の知見がないと出来ない具体的な描…
きっとテーブルに置いた音は「ドゴン」。これがパッフェル塔か…! そうね、真理ってきっとシンプルなんだろう 瞳孔が開くのは死にかけなんだよ!秋山女史、なんてものを!カウントダウンなんてとらずに即座に…
ダンジョンより手強いお義父さんがやってくるな!?
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