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第481話・いっぱい食べさせて大きくしなきゃ……

 

「むふぅ…………っ、唐揚げホント美味しいです。でもなんだかいつもと味付けが違いますね」


 既に大皿に乗っていた40個の唐揚げを平らげたテオドール。

 その食欲は明らかに通常のものではなく、常軌を逸していた。


 魔法の乱発によって受けた細胞レベルのダメージ、代償として支払ったカロリーを身体が全力で求めているのだ。

 彼女の問いに、すかさず四条が優しい声で返した。


「今回は海さんが来てくださっているので、味付けも護衛艦『ひゅうが』のレシピで作っているそうですよ」


「『ひゅうが』! あの時の方々ですか」


「そうですよ、皆さんテオドールさんのために集まってくださいました」


 よく知られたことだが、世界でも自衛隊の作る飯はトップクラスに旨い。

 その影響力はと言うと、日米合同演習の際、自衛隊側の食堂に大量の米兵が押し寄せてしまうほど。


 中でも海上自衛隊は特に食事における予算が豊富であり、また料理に精通したプロ級の給養員を積極採用。

 長期遠征が多い護衛艦では食事が唯一の楽しみであることから、海自の飯は本当に旨いのだ。


「おぉっ、このお野菜すごく綺麗です!」


 次に手を出したのは、ドレッシングの和えられたシーザーサラダ。

 色とりどりの野菜を口に運ぶと、サッパリとしたみずみずしさが油をリセットしてくれる。

 味付けもドレッシングでしっかり保たれており、これなら速やかに次の料理に移行できるというものだ。


「テオ! ローストビーフもあるぞ」


 透が笑顔で皿を差し出す。

 彼の後ろから、今回のチームを束ねる海自側の班長が姿を見せる。


「そちらは赤道を超える長期航海の時だけ出す、『ひゅうが』秘伝のローストビーフです。赤身に見えますが十分火は通してありますので、遠慮なくかぶりついてください」


「はむっ!!」


 口内で噛み潰す。


「ほっ、ほえぇ…………!」


 溢れ出すは肉の暴力。

 ソースは変わり種の”わさび醤油”で仕上げられており、ツンとした刺激と一緒に醤油が肉の旨味をさらに引き出す。


 一気に気に入った彼女は、お皿に盛られていた5枚のそれをガッとフォークですくい、贅沢にも一口で頬張った。


「美味しいれふ……! もっと食べたいです」


 このオーダーを受けて、班長は追加を即座に指示。

『ひゅうが』に積んでいた物をそのまま持ってきたにも関わらず、100枚以上を一瞬で平らげてしまった。


「ぷふぅっ…………」


 さすがに濃い味のものが連続したので、喉が渇く。

 すかさず飲み物、大ジョッキのブドウジュースを一気に流し込んだ。

 しばらくフルーツの芳醇な味を堪能してから、一息に飲み込んで――――


「ほえぇぇええ…………!! な、なんて背徳感でしょうか……! でも体がドンドン生き返っていきます!」


「その調子だテオ! もっと食って良いぞ!」


 このやり取りを受けて、厨房はさらに動きが加速した。


「カレーピラフできたか!?」


「大鍋4つ!! いけます!!」


「よし! その次はステーキだ!! 700グラムで出せ!! 出し惜しみは無しだ!! 総力戦だぞ!!!」


 机に、鍋がまるごと置かれる。

 既に配信はスタートしているが、視聴者たちは人間離れした食欲に圧倒されていた。


【もう何人分食べたよ…………?】


【50、いや……100人は行っただろ……】


【こんな小さい女の子の、一体どこにこの量が入るんだ?】


 テオドールの食事は止まらない。

 彼女は大鍋を丸ごと持つと、大きなスプーンでガツガツと掻き込んでいく。

 この分では、カレーピラフも5分で完食するだろう。


「総員気張れ!!! 給養の興廃、この一戦にアリと心得よ!! テオドールちゃんに食わせ続けろ!!!」


「「「「おぉぉおおおおおおおおおッッッ!!!!!!!」」」」」


 テオドールの食事は、12時間ぶっ通しで続いた。

 陸海連合チームは死ぬ気で飯を作り続け、なんとこの日だけで”3個駐屯地”規模の食料3週間分がたった1人の少女によって消費された。


 あまりの食欲に、食料の搬入をしていた陸自側は急遽CH-47に加えて、佐賀県から来ていたV-22オスプレイまで投入。


 当然『ひゅうが』に積んでいた物はすぐに無くなり、急遽横須賀港に停泊していた『もがみ』、『まや』、『はしだて』に救援を要請。

 艦載ヘリのSH-60Kをフル稼働させ、順次ピストン輸送。


 また、木更津駐屯地からもありったけの食糧が搬出された。


 ダンジョンにヘリが何機も列を作り、ユグドラシル駐屯地を大量のトラックが行き交う。


 ブラックホールのような勢いで食べるテオドールに圧倒されながらも、


「ご馳走…………様でしたぁ…………」


 ――――完食――――


 執行者テオドールは、搬入された食材を全て残すことなく平らげた。

 不思議なことに生理現象は全く発生せず、とてつもない量の食事を食いきってしまった。


 その後、入浴と歯磨きを済ませた彼女は意識が途切れたように爆睡。

 16時間ほど眠りに眠った末に――――


「ほえ…………」


 体重は完全に元へ戻り、また身長が1センチ伸びた。

 その莫大な食事代は、後で今回の命令をした若い防衛大臣が冷や汗をかいたほどだったという。


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― 新着の感想 ―
航空燃料換算でおいくらかかったんだろうw?
めっちゃ食うやん....怖 陸海の給養員さんまじでお疲れ様、なんか上空から灰色の迷彩した料理人が羨ましそうに見てる気がするが....
見てるか、世の中の農業、畜産業、食品加工、更に運送業に関わる者よ 君たちもまた、彼女の笑顔を守った一員だ
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