第467話・炸裂! 爆雷波動砲!!
「全魔力回路を波動砲魔法陣に注入、充填開始!」
執行者テオドールは、まだ倒れていなかった。
彼女は既に十分役割は果たしていたが、敬愛する師匠を前に自分を鼓舞。
そして、最初に誓った宣言を履行する。
――――師匠を殺しかけたこの大天使は、弟子の自分が必ず殺す。
溢れんばかりの殺意は、魔力に変換されてブースト。
もはや枯渇など恐れない、エクシリアが戦っている隙を突いて、最大出力の波動砲発射を進めていた。
威力を極限まで高めるため、一切の詠唱を省かず唱え続ける。
「セーフティロック解除、非常回路全閉鎖、射角固定!」
テオドールの目の前に、照準用の魔法陣が現れる。
「念映クロスゲージ明度20、照準……誤差修正+3度!」
彼女が突き出した両手に、凄まじいエネルギーが集約されていく。
ここまでの発射シークエンスは、テオドールが定めた一種の縛り。
あえて隙だらけの詠唱を行う引き換えに、威力を底上げしているのだ。
しかし、ガブリエルもただ黙って見ているわけではない。
「そんなもので僕を殺せるとでも!? 返り討ちにしてやるよッ!!!」
床を蹴り、隙だらけのテオドールへ肉薄を試みるが――――
「行かせない!」
当然、エクシリアが阻止に入る。
それでも、ガブリエルはひるまなかった。
「悪いが少しどいてね!!」
その瞬間、彼は右手から1発の光弾を発射した。
彼女は剣で簡単に斬り落とすが、即座に気づく。
「チッ――――」
眩い閃光が炸裂した。
ガブリエルが発射したのは、殺傷能力が無い代わりに強烈な爆光を放つ魔法。
ここに来ての搦め手に、エクシリアは視界を奪われた。
横をすり抜けながら、ガブリエルが笑う。
「あっはははは!!! 詰めが甘いんだよガキ共ォ!!! これで終わり――――」
言い終わる前に、ガブリエルの横っ腹に衝撃が走った。
「ガフッ…………!?」
見れば、傷口にはライフルに付いた銃剣が刺さっていた。
死角から奇襲してきたのは、もうとっくに倒れたと思っていた自衛官。
「子供が命張ってんのに、大人が倒れてられっかよッ!!!」
もう動かない体に鞭打ち、新海透が戦線へ突っ込んで来たのだ。
突き刺した20式を抜き、超至近距離から発砲。
5.56ミリJ3高威力弾が、フルオートで撃ち込まれる。
「ぬぅううああああああッ!!!!! どけぇえええええ!!!!!」
「ぐはっ!?」
既に内臓をミンチにされたガブリエルだが、お構いなしに体から衝撃波を放った。
能力をテオドールに渡してしまっていたため、透は回避できずに床を転がる。
これでもう邪魔者はいない、瑕疵は治癒された!
後は眼前の執行者を手ずから葬って――――
「がっ…………!?」
できなかった。
頭を直撃したのは、投げられた三節棍……『龍雲』だった。
透の背後で、息を切らした影が立つ。
「すみませんね、財布の借りがあったもので」
龍雲を投擲した林少佐が、憎めない笑みで呟いた。
それにより、ガブリエルの体勢は崩れ、致命的な隙となった。
「今よッ!! テオドール!!」
視力を速攻で回復させたエクシリアが、拘束魔法を発動。
もう動けない透と林少佐を射線から引っ張り出し、ついでにガブリエルの足を拘束した。
「やれぇッ!! テオ!!!」
魔力の圧縮音が鳴り渡る。
「エネルギー充填、120%!!」
「ぐぬぅうああああ!!!『イージス・ディフェンス』!!!」
最後の抵抗で防御魔法を発動するが、部屋全体を青色の光とスパークが包んだ。
撃ち放たれるは最強の決戦兵器。
執行者テオドールが誇る、最上にして最高の魔法!
「爆雷――――波動砲ォぉおおおッッッ!!!!!!!」
空間の引き裂かれる音が響いた。
発射された超々高圧エネルギー流は、ガブリエルを防御魔法ごと飲み込んだ。
規格外の威力と出力に、とうとう彼は敗北を悟った。
「バカな…………っ、この僕が…………」
不屈を誇った肉体が、細胞レベルで消滅する。
城を食い破った波動砲は建造物自体を半壊させ、遥か150キロ先の上空で爆発。
青空を切り裂き、巨大なオーロラを輝かせた。
瓦礫の落ちる音がこだまする中、倒れかけたテオドールを透とエクシリアが支えた。
「やったな、テオ」
「お疲れ様、本当に……成長したわね」
気を失ったテオドールは、満足気に笑っていた。
それはマスターと師匠、大好きな2人の期待に応え、威厳を守れたことによる安堵の顔。
大天使ガブリエルの討伐により、第4エリア攻略戦は日本の勝利に終わった。
――――残すは、最後のエリアのみ。




