第459話・因果の改変者
活動報告にて、執行者テオドールのイラストを公開しました!!!
気になる方は作者名→活動報告から、ぜひ世界のアイドルを見にきてください!!
「君たちは知らんだろうが……私はこの世界の日本で”一飯の恩”を受けた」
「一飯の恩……? なにそれ、っていうか天使もご飯食べるんだ」
ひとまず話し合いモードになった久里浜が、まず疑問符を浮かべた。
もし本当に殺意があったなら、今頃熾烈な戦闘になっているはず。
とりあえずは、ウリエルの話を聞いてみることに。
「あぁ、東京でお前たち自衛隊と執行者に敗れた直後……私は都内のある店で施しを受けた。その時に出された炒飯の味は……生涯経っても忘れないだろう」
「じゃあなんだ? 俺たちと今戦わないのはその恩があるからか?」
「そういうことだ、私は本来この先にある”次元エンジン”の補助装置を守らねばならないが……君たち日本人には今言った一飯の恩がある。今回限りは見逃しても良い」
「素直に通してくれるってか。解せないな、ここを取られたらお前らはいよいよ本丸だろ? そんな自殺志願と裏切りのハッピーセットをしても平気なの?」
疑問符を浮かべる坂本へ、大天使ウリエルは特段表情を崩さなかった。
「そこで話だ、お前たちに少し聞きたいことがあってな。林少佐にも聞いてみたがどうしてもわからなかったことがある」
「なによ、言っとくけど機密は喋んないから」
「そんなものはいらない、ただ…………」
そこまで言って、ウリエルは真剣な顔で質問する。
「どうしたら、他人を満足させられる美味いラーメンが作れると思う?」
「「…………」」
思わず口を半開きにして、硬直してしまう2人。
今攻撃すれば、おそらく簡単に通ってしまうだろうほどに驚いている様子。
さっきまで緊張状態だった通路は、なんとも言えない空気に包まれた……。
◇
「ようやく2人きりになれましたね、新海3尉」
「そのキショい言い方やめてくれるか? 俺にそういう趣味は無いんだ」
「おっと失礼、私にとっては――――執行者も大天使もこの場では邪魔でしたので」
一方の玉座の間では、透と林少佐が激しく戦っていた。
今は、20式に付いた銃剣と龍雲で鍔迫り合っている。
「ほんっと強いなお前……、とっくに5回は殺したつもりなんだが」
「それはこちらも同じ。やはりあなたは思った以上の傑物だ、本当に会えて良かったですよ」
そう言いながら、林少佐は即座に次の行動へ。
三節棍の鎖部分を使い、透の銃剣を絡め取ったのだ。
「ちっ!」
即座に危機察知能力が発動。
林少佐の動きを予知し、吹き飛ばされる前に銃剣をほどいた。
両者は再び距離を置くと、互いに正対した。
「私が望んでいるのは因果の破壊、それだけです。執行者も錠前勉も眼中にはありません」
「ずいぶんと厄介な惚れ方されちまったよ、俺が世界の代行者とか言ってたな? もう少し詳しく教えてくれ――――よッ!!」
三度床を蹴る透。
凄まじい加速での刺突に、林少佐は笑みを浮かべる。
――――さっきより速い!
「おらっ!!」
亜音速の攻撃を、林少佐は同じ速度で捌いていく。
武闘派という言葉は本当のようで、実際今までの敵で一番強い。
――――体術なら真島さん、武器の扱いは秋山さんとほぼ同レベルってとこか……!!
なぜ大天使連中がもう利用価値の無い林少佐を仲間にしているのか気になっていたが、ようやくわかる。
「クソっ!!」
反射で首を曲げ、回避。
ナノ秒単位の隙を突いてのカウンター。
透はギリギリで避けながら、その憶測を結論付ける。
この男は、そもそも素の実力が大天使と同レベルなのだ。
だから連中も、尻尾斬りのような真似をしたくてもできなかったのだろう。
「世界の代行者とは、言うならばこの世界の意思そのもの。複雑な可能性を孕んだ未来を正しく履行するための――――」
危機察知能力が働く。
不規則な動きで揺れる三節棍が、0.5秒差で透のいた地面を砕いた。
「選ばれし存在です、執行者と並ぶほどのね」
「そうかよ! じゃあ最初に言ってた執行者の役目ってなんなんだ!」
透も反撃。
セミオートでの射撃を混ぜつつ、CQC(近接格闘術)で一気に責め立てる。
「良い質問です、結論から言いましょうか」
――――ギィンッ––––!!!
透の銃剣を弾いた林少佐は、大振りの構えを見せた。
やはりここでも危機察知能力が発動。
どのタイミングで、どこへ避ければ良いか瞬時に理解。
身体を動かそうとして――――
「執行者とは、ワガママに生きようとする因果の意思を調律するもの。端的に言えば――――世界の代行者を”殺す”ために存在する者たちですよ」
透の頭が白く塗り潰される。
脳裏に実の娘と同じように可愛がる、執行者テオドールの笑顔が浮かんだ。
「テオが……、俺を…………?」
――――メリィッ――――
思考と動きが止まった透の脇腹に、龍雲が深くめり込むのは同時だった。
「いっっって!!!?」
言葉で形容するには、あまりにも激しすぎる痛みと衝撃が走る。
それは、新海透にとって人生で”初めての被弾”。
床を数メートル転がった彼は、涙目でえづきながら被弾箇所を押さえる。
直前に攻撃と反対側へ動くことによって、致命傷は免れた。
しかし、さすがに三節棍――――それも特級宝具に殴られれば結構痛い。
いや訂正、かなり痛い。
――――骨が……、数本逝ったかも…………!
そう思うほどの激痛。
実際には魔力でもガードが成功したので、骨は無傷だ。戦闘に支障は無い。
ふらつきながら立ち上がる透に、林少佐は近づく。
「はぁっ……ようやく破れましたね、絶対不可侵の危機察知能力……いえ。”因果改変能力”」
7割以上の体力を消耗した林少佐が、息を切らしながら呟いた。




