表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
454/457

第454話・錠前勉に次ぐ使い手

 

 ――――『魔導封域』。


 戦闘用に磨き上げられた、結界術の極地。

 魔法結界の完全上位互換であり、展開された結界内では術者が好きに選択した魔法を、”絶対の先手”として付与できる。


 ユグドラシル駐屯地でこれを食らったベルセリオンは、一度瀕死にまで追い込まれた。

 また、上海をアノマリーごと更地にした錠前の奥義も、これと同じである。

 つまり、展開した瞬間に決着がつくも同然。


 勝ちを確信したエンデュミオンの前で、四条が叫ぶ。


「今です! ベルさん!!」


「ッ!?」


 封域が完成するまであと5秒。

 ハルバードの増幅効果で魔力を高めたベルセリオンと四条は、新たな技を発動した。


「「――――『簡式・魔装結界』!!」」


 ベルセリオンと四条の2人を、薄い魔力の膜が覆った。

 封域完成と同時に、エンデュミオンは即死技を繰り出そうとするが――――


「残念でしたー!」


「ぐっ!?」


 獄炎の魔法はなぜか当たらず、代わりにベルセリオンのハルバード、そして四条が撃った89式の銃弾を浴びせられた。

 すぐさま治癒魔法を発動して傷を癒しながら、相手の行ったカラクリを見抜く。


「『簡式・魔装結界』……。自身の周りに略式発動した結界を纏うことで……俺の封域を中和しているのか!」


「正解です、相手に封域使いがいるならば……当然対策すべきとして、ベルさんとあらゆる訓練をしました。わたしはあくまで地球人なので習得には苦労しましたが」


 四条は自衛官としての任務の傍ら、ベルセリオンと極力一緒に訓練していた。

 対となる透とテオドールは、その性格とスタイルからあまり共闘という手段を取らない。

 しかし彼女ら2人は、ダンジョンマスター級の敵を見越してメタ対策を考案。


 ベヒーモスと戦った錠前に結界術の基礎を教わり、四条はあの錠前勉に次ぐ結界術の使い手として成長した。


「まぁ、万能な魔法ではありませんが」


「だろうな、出力で言えば当然俺の封域が上回る。その小細工が持つ時間はせいぜい5分と無いだろう、それまで俺は封域でその結界を削り続ければ良い」


 封域と結界では、断然封域の方が格上。

 所詮は覚えたて、付け焼刃の結界術だ。

 転生者として得たチート持ちの自分が、このような連中に負けるなど――――


「なにっ!?」


 その場で膝をつくエンデュミオン。

 思わず血を吐き、狼狽えながら口開く。


「なぜ傷が……回復しない!?」


 エンデュミオンは全力で治癒魔法を発動しているが、どういうわけか銃弾によって空いた傷が治らない。

 その様子を見た四条が、ドットサイトの照準をエンデュミオンへ向けた。


「言ったでしょう? こっちは治癒魔法も想定して作戦を組んでいたんです」


「俺に……がふっ! 何を撃ち込んだ!!」


「なんてことはありません。通常使うM855A1弾薬ではなく、”ホローポイント弾”を撃っただけです」


 ホローポイント弾頭。

 先端がAP弾のような尖った形状ではなく、窪みが空いた特殊な形状の対人弾薬。


 人体を徹底的に破壊することに特化しており、着弾した箇所から人体内部を無尽蔵に跳ね回る。

 極めつけは、体内へ侵入した弾丸が貫通せずバラバラに砕けながら残留する点。

 つまり貫通しない。


 四条はこの特性に目をつけ、治癒魔法使いのメタとして導入。

 ホローポイント弾の弱点としてアーマーを貫通できない点があるが、相手が魔法頼りの魔導士なら容易にクリアできる。


 現在、エンデュミオンに撃ち込まれた弾数は4発。

 傷自体は容易に回復できても、体内に残った弾丸や砕けた破片が臓器を痛めつけ続けるのだ。

 まさに、治癒魔法使いへの特攻に等しい弾薬だった。


【四条2曹つええええええ!!!】


【魔法、ここに破れたり!!】


【美人自衛官で執行者のマスターで、かつ魔法も使えるとか四条さん属性盛り過ぎ案件】


 四条のヘルメット・カメラに映された映像に、視聴者たちが大きく盛り上がる。


「どうせそちらも配信しているのでしょう? どっちが配信者として勝つか――――ここで白黒つけましょう」


 笑みを浮かべた四条が床を蹴るのと、エンデュミオンが鈍い動きで迎撃するのは同時だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
無敵技ってわけでもないんだし、使って仕留めきれなかったらメタられるのは当然よ
四条さん、もしかして配信者魂が炸裂しとります…? 彼女の美容と睡眠時間が心配ですね…ライブ配信だと色々やらなくて済みそうな、後で結局アーカイブ編集で時間取られそうな…。 手で摘める果物とか差し入れて…
物理がダメなら火炎放射とか、ドヤセリオンがカラクリを暴露したおかげで空襲作戦に切り替えたりしたからなー。メタ張りはこれまでも使われている。今までの自衛隊の戦いから「もしかして」の疑念くらいは持っておく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ