第451話・フルバースト! 自称宇宙戦艦の主砲系女子!!
「いいところに来ましたねガブリエルさん、ちょうど2対1にウンザリしていたところですよ」
「だと思った、君は新海透にしか興味無いもんねー」
眼前に現れた大天使は、頭上に光輪を浮かべ、真っ白な翼を広げる。
透の直感が全力で警鐘を鳴らしていた。
こいつは、同じ大天使でもサリエルやウリエルと明らかに次元が違う。
「さて、じゃあ早速僕も混ぜてもらおうか」
圧倒的に格上……!
透が銃を構えるが、その真横から幼くも力強い声が響いた。
「透!!!」
「ッ!?」
振り向けば、執行者テオドールの体から膨大な魔力が溢れ出ていた。
銀髪は光り輝き、金色の眼は生命力で満ちている。
今まで出し惜しみしていた彼女が、本気を出したのだ。
「こいつの相手はわたしがやります、透はあの男と決着をつけてください」
「……いけるのか?」
「あの大天使は師匠を殺しかけた仇、弟子のわたしが必ず倒します」
マスターだからわかる。
テオドールの本気具合が、魔力を通して全身で伝わって来た。
「わかった、お前なら絶対勝てる。信じてるぞ」
「はい!」
数歩前に出たテオドールが、ガブリエルと正対した。
体格差は歴然だが、溢れ出る命の力は全く負けていない。
彼女の姿を見て、相手もすぐに状態を察知する。
「変わったね、渋谷で初めて会った時とは比べ物にならないパワーだ」
「えぇ、あの頃のわたしとは――――」
床を思い切り蹴り、その場の誰も見切れない速度でガブリエルへ肉薄した。
「同じと思わないことですね!!」
「ッ!!!」
執行者テオドールは、これまでで得た全てを披露することにした。
眼前の大天使を、完璧に葬るために。
「20.3センチ――――『単装・ショックカノン』!!」
ガブリエルの腹部へ、全力の右ストレートと共に技をお見舞い。
本気で踏ん張るが、壁際まで押し込まれた相手は、想定を超える威力に思わず目を見開く。
透や林少佐も、その凄まじい威力に目を見張った。
さっきまでとは明らかに違う、精度も効率も出力も格段に上がっている。
これが彼女の本気。
だが、テオドールの技のフルコースは始まったばかりだ。
「20.3センチ――――『単装・ショックカノン』!!」
「ごあッ!?」
間髪入れずに、テオドールは左手で同じ技を打ち込んだ。
たまらず吹っ飛んだ大天使は、壁を砕きながら城を弾丸のように突き抜けていく。
そのすぐ後を、彼女はさらに魔力出力を上げながら追撃。
「はぁぁぁああッ!!」
――――20.3+20.3――――!!
「40.6センチ――――『連装・ショックカノン』ッ!!」
「ッ…………!!!?」
両手を全力で、ガブリエルの腹部へ叩きつける。
原子力航空母艦をもへし折るほどの威力に、さしもの大天使ガブリエルも衝撃は隠せない。
さらに勢いを増し、とうとう彼は城から瓦礫と一緒に放り出された。
しかし追撃は止まらない。
アニメの追加履修で、新たに開発した技を披露する。
「上級爆裂魔法――――『星間誘導弾』ッ!!『星間魚雷』ッ!!!」
投げるように放たれた強烈な爆裂魔法群は、まるで本物の誘導弾のように左右からガブリエルを挟撃。
空中で島の木々を薙ぎ倒すほどの爆発を発生させ、衝撃波が雲を散らす。
「がぁッ…………!! 誘導式の……爆裂魔法だと!?」
「はぁあッ!!」
城から飛び出たテオドールが、ガブリエルの上空で両手へ魔力を集約させる。
穿ち放つは本気の一撃、もう渋谷で取ったような舐めた態度はやらせない!
全ては透の眷属として、エクシリアの弟子として――――2人の威厳を守るため!!
「48センチ――――『三連装・ショックカノン』ッッ!!!!」
太陽以上に眩しい閃光が、ガブリエルを包んだ。
「ぬぅうああああああぁぁああああッ!!!!!」
大天使ごと地面に激突したショックカノンは、島全体を大きく揺らすほどの大爆発を起こした。
威力にして、2000ポンドJDAM航空爆弾がねずみ花火に見えてしまうほど。
煙が立ち昇る中で、さすがに息を切らせたテオドールが降りてくる。
「はっ、はっ…………」
視線の先では、上半身の服を消滅させられ、傷だらけとなった大天使が立っていた。
しばらく無表情で立っていたガブリエルだが……。
「ガフッ!!」
大きくのけ反り、大量の血を吐いた。
「……渋谷では未熟なお子様だったが、この短期間でここまで成長するとはね。僕を吐血させたのはイヴ様以外では初めてだ…………! 賞賛に値する」
「まだまだこんなものではありません、あなたを倒して――――師匠を元の姿に戻します!」
「良いね、楽しくなってきた…………! それでこそ世界で唯一の特別な存在、”因果調律を執行する者”の姿だ!!」




