表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

433/436

第433話・最強の宣言

 

 ――――第4エリア、陣地内。


 ライトに照らされた砂浜へ置いた椅子に座り、錠前勉は本を読んでいた。

 穏やかな波の音、南国の気持ちいい風、それらが合わさって最高のリラックス空間を演出。

 人生でもっとも有意義な読書タイムだった。


 読んでいるマンガは、某呪いが巡る少年向け作品。

 巻数は“26巻”、ちょうど読み終える寸前だ。

 そこへ、声を掛ける者が1人。


「あっ、ここにいたんですね。錠前1佐」


「ん?」


 光の遮断率100%なサングラスを上げると、そこにはシャワーを浴びた後であろう透が立っていた。

 ラフな半袖とサーフパンツ姿の彼に、その上司は優しく微笑んだ。


「どしたの新海、なにか報告事かい?」


「あーいえ、テオたちの寝かしつけが終わったんで、少し暇になってしまいまして……」


「このグレートな上官とお喋りしたくなったってこと? 良いよ、隣座んな」


「どうも」


 腰を掛ける。

 見上げた夜空は、満天の星空で満ちていた。

 そのどれもが幻想的で、東京都内では決して拝めない景色だった。


「不思議だよねー、ダンジョンの中なのに星が見える。しかも地球から見た星図とは全く違うんだもん」


「これ、実際に存在してるんですかね?」


「あるにはあるんだろうけど、多分ロケットを飛ばしてもたどり着かないよ。結界術の応用かなー……全く別の星から見た景色を、プロジェクターみたいに投影してるんだろうね」


「……そんな規格外な魔法。欠食だった執行者、今相手してるダンマスや大天使にできるんすかね?」


 透の疑問に、錠前はすぐさま答えた。


「百パー無いね、アイツらにそんな高等な芸はできないよ。できるとしたら、僕と同じスペックの”眼”を持ったヤツかな」


 ふと思い出す。

 錠前がベヒーモスと呼ばれるアノマリーを上海で討伐した際、その魂は大天使たちに持ち去られた。

 目的は、連中のボスである”破壊神イヴ”の復活。


 彼らいわく、錠前の魔眼と並ぶ”神眼”なるものを有した存在らしかった。


「じゃあ、このダンジョンを作ったってのも…………」


「十中八九、そのイヴとかいうヤツでしょ」


 透の気が重くなる。

 今までなんとか勝ってきてはいるが、そのどれもが一歩ルートをミスっていれば詰んでいた。


 リヴァイアサン戦では、執行者テオドールを味方にしていなければ敵のビームで海自艦隊が全滅しただろう。


 沖縄での神獣を用いた自爆攻撃も、運よく錠前がその場にいなければ韓国と同じ末路を辿っていた。


 一見圧勝しているように見えるが、ギリギリの勝ち筋を拾えているだけ。

 ほんの少しの狂いがあれば、形勢はすぐに逆転するだろう。

 特に、そのイヴという存在があまりにも未知数だった。


 彼らはこうも言った、”イヴが復活すれば全て終わる”と。

 このダンジョンそのものを生み出した、まさしく神のような存在が……おそらく近い内に立ちはだかる。

 そんな部下の不安を察したのだろう、本を畳んだ錠前がニッと笑った。


「なに不安がってんだよ新海、らしくないよー?」


「いや……すみません、ついマイナスの思考が。連中の言うことが事実だったらちょっとヤバいかもなって」


「それは直感?」


「…………そう思いたくはないですね」


「はっはっは! 新海の直感は当たるからねー。まぁ確かに、相手が相手。さすがの僕でもちょっとキツイかも」


 なんて言いつつ、一切笑みを崩さない錠前。

 そんな頼もしい”最強な”上官に、透はふと聞いた。

 本心から、聞きたくてたまらなくなった。


「1佐なら……、相手が神だろうと負けないですよね?」


 1秒だけ考えた錠前は、夜空を見上げながら返した。


「――――勝つさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
かつての宿敵の上位互換能力とも言える新海の直感が示す不安ですか………。でも錠前さんからしたら「ここで新海の直感を上回る事で、あの青い日の負の部分を完全に振り払える」位は思っているかもしれませんね。その…
イヴ君が目覚めたらまずは地球飯を食わせるべき…たぶんそれだけで勝つw どっかの第七宇宙の破壊神も餌付けされたしw
更新乙です。 遮光率100%で良く読めますね錠前一佐w 「なに、心の目で読むんだよ」 『26巻』……自省かな?  今までなんとか勝ってきてはいるが、そのどれもが一歩ルートをミスっていれば詰んでいた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ