第424話・満喫! 南国バカンス配信!!
【うおおお!! 常夏のビーチだー!!」 空が青いー!】
【久里浜士長の水着可愛すぎんだろ、この顔とスタイルでビキニにショーパンは反則過ぎる】
【あんなに強くてこんなに華奢なの? この細い腕で5キロ近い銃振り回すってマジ?】
【四条2曹はカーディガン着込んでてよく見えないな、でも脚ほっそ。肌しっろ】
【恋人にしたい……】
【独身だよな? 俺らにもチャンスあるかな…………?】
配信が開始され、まずはカメラに四条と久里浜が映る。
やはり超美人自衛官の水着はウケが良く、さっそく盛況となっていた。
中には結婚志望者が多数いたが、あいにくと彼女たちにはもう生涯の恋人が存在することを、彼らはまだ知らない。
カメラの後ろでは、自慢の彼女の素晴らしい姿を見せびらかせてご満悦な坂本と。
「うぅ、やっぱ足見えすぎじゃねえの……?」
独占欲を爆発させた透が、並んで見守っていた。
なお、傍では錠前がクレーターを必死に埋めている。
少々可哀そうに思ったのか、テオドールとベルセリオンもスコップを持ってお手伝い。
「こんにちはー、今日は第4エリアの一部を占領したので、色々と企画や様子をお伝えしていきまーす」
「まーす!」
さすがに回数を重ねただけあって、2人共に緊張は皆無。
水着姿に加え、スリングで四条は89式自動小銃を。
久里浜はHK416A5を持っていた。
ゲームやアニメでしか見ないような水着美女×ライフルの組み合わせに、コメ欄は大盛り上がりだ。
【やっぱこの小隊は最高だぜ!!】
【お役所とは思えんね】
【なんか自衛隊のイメージ変わるなー、もちろん良い意味で】
反響は上々。
すかさず四条が、今回の内容を打ち出した。
「いつもなら企画を用意するところですが、今回はちょっと趣向を変えようと思います!」
眼前のテーブルに、久里浜が隠していた紙を立てた。
そこには、これからの予定が書かれている。
っと言っても、それは非常にシンプルなもの。
『みんなで海水浴!! スイカ割り!! そしてBBQ!!!』
そう、今回は異例の長時間配信。
これから夜になるまで、バカンスの様子をお送りするというものだ。
なお、直前まで候補だったビーチバレーは、執行者とのバランスと錠前のやらかしによって抹消された。
「そんなわけで!! 世界は大変だけど、今日だけはみんなに楽しい映像を送りたいと思いまーす!!」
久里浜の一声と共に、カメラが反転。
透、坂本、クレーター修復作業から帰ったテオドールとベルセリオンが映された。
【小隊勢揃いキター!!!】
【執行者ちゃんたちの水着可愛い!!! 姉妹コーデかな?】
【新海3尉と坂本3曹、さすがに良い身体してるぜ】
【後ろで穴埋めてる人はスタッフ役の人かな? めっちゃ身長高いけど】
そんなわけで、配信&バカンスが幕を開けた。
世界情勢が極めて混沌としている中、第1特務小隊の送る爽やかでエンタメ感のある配信は、世間のニーズと非常にマッチしていた。
「よっし坂本!! サーフボード持ってきたから勝負しようぜ」
透の明るい声に、坂本はすぐさま応答。
「良いっすよ、負けたら夜のBBQで最後まで肉焼き担当ってことで」
「へぇ、上官にそんな無謀な賭けを仕掛けるのか。良いぜ乗った、まぁこれから乗るのは文字通り波だが」
「はっは、寒いっすよ隊長!」
元が体育会系の男子組。
透が爽やかな表情で波に乗る様子を、四条は海に浸かりながら頭へ着けたカメラでバッチリ映した。
【新海3尉サーフィンうめぇ!!】
【やっぱ体幹が良いんだな、あれ結構難しいんだけど】
【イケメン過ぎる、やっば、彼氏にしたい】
【あっ、じゃあ坂本3曹は私が狙う!! あの前髪に隠れた目が超カッコいいの!】
このコメントに、水で濡れた四条と久里浜は、思わず愉悦の笑みを見せる。
なお、サーフィン勝負は坂本が転落したことで、呆気なく決着した。
「久里浜ー! もっと右ですよー!」
「違う違う左だ! そこ! 思いっきり割っちまえ!!」
続いて行われたスイカ割りでは、透とテオドールが誘導役。
久里浜が棒を持って、目隠しをしながら進んだ。
なお、2人してわざとデタラメな方角を言うので、久里浜は最終的に特戦時代に訓練したことを思い出し、自力でスイカを割って視聴者を驚かせた。
夏、海、若人の笑顔。
カメラの外でそれを眺めていた錠前は、展開した椅子に座りながら嬉しそうにジュースを飲んだ。
氷の入ったソーダは、南国と完全に調和していた。
「そうそう、若人はこうしてちゃんと青春を楽しむべきだよ。たとえ国防に身を捧げる自衛官であってもね」
「あら、そういうアンタはちゃんと青春したの?」
隣で椅子に寝っ転がるエクシリアの質問に、錠前はあの日の青空を思い出す。
「したさ。途中で終わったけどね」
「心残り?」
「いいや、君たち執行者のおかげで後悔は解消できた。今は、自分の部下が幸せになるのを見るのが楽しみなんだ」
スマホを取り出し、配信の状態をチェック。
相変わらず滝のような流れのコメント欄だが、錠前の魔眼をもってすれば止まって見える。
その中で、1つのコメントが目に入った。
【重機関銃の配置が森林方向に偏ってますが、早く海側へ向けた方がいいですよ】




