第42話・ワイバーンVSジェット戦闘機
「スクランブル––––––––ッ!!!」
––––航空自衛隊 百里基地。
ダンジョンからのワイバーン出現を受けて、首都圏の防空を担当する航空自衛隊が即座に動いた。
中部方面航空隊 第7航空団所属のF-2戦闘機が4機滑走路にアクセスする。
洋上迷彩が特徴的な、美しいフォルムを持っていた。
《Viper Zero 1, you are cleared for takeoff from Runway 01.(ヴァイパーゼロ1へ、第01滑走路からの離陸を許可します)》
《Roger Tower, taking off from Runway 01.(了解タワー、第01滑走路からこれより離陸する)》
ジェットエンジンの鼓動が鳴り渡り、耳をつんざくほどの爆音を轟かせながら4機が離陸していく。
その翼には、空対空ミサイルが搭載されていた。
◆
「もう矢は追って来てないな!? 残りはどれだけいる!」
疲労困憊の状態で、副リーダーのワイバーンが点呼を取る。
ここは千葉県沖の高度4000メートル、洋上から飛んできた絶対に命中する矢に群を壊滅させられ、ここまで逃げて来たのだ。
「副リーダー、自分たちを含めて……たった20騎しか残っておりません。みな、あの神の矢に貫かれました」
若いワイバーンが、悲痛に満ちた声を押し出す。
他の者も、全員が意気消沈していた。
当然だろう、絶対に有利であると信じて飛び込んだ状態から––––訳もわからない攻撃で壊滅したのだから。
「アレは一体なんだ……? どこまでも追って行って、最後には爆発してたぞ」
「人間に追尾魔法などできないはずだ……、いや、それにしたって飛翔と追尾、さらには炸裂のエンチャントを同時に施すなど我々でもできない」
「一体どうなってるんだ! ベルセリオン様は楽な食事だと言っていたぞ! それがどうだ、あの歴戦を誇った村長まで……あんなっ、呆気なく」
部下たちの士気は最悪も良いところだった。
これはもう勝ちがどうこうじゃない、1つの部族が消滅する危機なのだ。
副リーダーは、努めて冷静に案を出した。
「……あの規模の魔法だ、連射はできないだろう。今のうちになんとかダンジョン内へ戻れるか試そう」
「も、戻るんですか!?」
「それしか無いッ! アレは我々が想定していた日本人とは異次元の別物だ! 夜の闇に紛れ––––逃げるしかない」
副リーダーの意見に、全員が納得した。
いざ翼を翻して反対方向に向かおうとした、刹那だった。
––––ボボボボンッ––––!!!!
先陣を切ろうと前に出た若者たち4騎が、突如爆発した。
身体は黒焦げになり、やがて結晶となって海へ落ちていく。
「あの矢だ!!!」
「一体どこから!? 奴らからはもう十分距離がある、しかもこの高度に弓矢なんて届くわけ––––」
そう言っている間に、さらに4騎のワイバーンが撃ち落とされた。
やはり炎の軌跡は見えず、突然爆発しての絶命……。
だが、副リーダーは本能から来る恐怖心で確信へ至る。
「全騎散開!! 敵が来たぞぉ!!」
副リーダーの判断は間違っていなかった。
彼らを襲ったのは、百里基地を離陸したF-2戦闘機が搭載するAAM-4中距離空対空ミサイルだった。
これは、発射後こそロケット噴射で移動するものの、その後は慣性によって目標へ接近––––着弾という流れになる。
炎が見えなかったのは、そもそも燃料がなかったからだ。
––––ギィインッ––––!!!
ワイバーンの群れの横を、蒼色の戦闘機が超高速で通り過ぎた。
爆風に煽られ、何騎も気流にぶん回される。
あり得ない話だ、あんな鉄の塊が音速を超えて空を飛んでいる。
「村長の仇だ!!」
「撃ち落とせェッ!!」
数騎のワイバーンが、遂に見つけた目標へ火炎を浴びせようと攻撃する。
「バカ!! 逃げろ!!」
副リーダーの声は届かない。
常識外れの速度で距離を置いたF-2から、旋回直後にサイドワインダー短距離空対空ミサイルが放たれる。
火炎放射も虚しく、ワイバーンが次々とミサイルの餌食になった。
格闘戦で旋回勝負に出る者もいたが、そもそもの速度性能が違いすぎる。
一瞬で距離を離され、別の機にミサイルを叩き込まれた。
残った最後の1騎である副リーダーは、急降下で海面ギリギリまで降りた。
洋上10メートルという、超低空飛行で振り切ろうと試みた––––しかし。
「なっ!?」
振り返れば、ピタリと全く同じ高度で戦闘機が追いかけてくるではないか。
「あり得ん……! こんなバカな」
そもそもこのF-2という戦闘機は、対艦攻撃を目的として作られた戦闘機だ。
海面スレスレを飛ぶことが前提の、世界でも類を見ない航空機。
そんな洋上のモンスターに出会った時点で––––低空など関係無かったのだ。
––––ブゥヴヴヴヴヴヴヴンッ––––!!!!
最後の副リーダーは、20ミリバルカン砲の射撃によってミンチにされた。
毎秒80発で撃ち込まれる20ミリ砲弾に、耐えられるはずも無い。
ベルセリオンがドヤ顔で送った航空部隊は、首都防衛を担う自衛隊部隊によって、完膚なきまでに打ちのめされた。
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