表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
414/458

第414話・ロシア連邦の最期

本日漫画版更新です!!

遂に、特殊作戦群が登場します!!

 

 ――――モスクワ郊外、大統領専用地下シェルター内。


 ロシア大統領の保護。

 たった1人のために作られたこの施設は、地上から500メートル地下に存在する、ロシア最大級の防護施設だった。


 平時は廃れた郊外に存在する、一種のホラースポット扱い。

 だがその実、厚さ3万ミリクラスの複合特殊装甲材で守られたシェルターであり、米軍のバンカーバスターはおろか、2メガトン級核弾頭の直撃にも余裕で耐えられる設計。


 大陸各地の軍事施設と特殊な有線ケーブルで繋がっており、EMP攻撃下でも全軍へ指示が可能。

 デフコン発生時は、完全武装した500人の兵士が警備し、監視カメラと連動した機関銃が廊下を常時警戒。


 まさに、ロシア連邦が誇る最強の軍事要塞だった。


「参謀総長……、この写真はなにかね?」


 インターネットに流出していたのは、ロシア太平洋艦隊旗艦の『ヴァリャーグ』。

 問題は、それが日本の横須賀市、よりにもよってあの忌々しい、日本海海戦の英雄艦――――戦艦『三笠』と一緒に写っていたことだ。


「君の説明では、すでに旗艦『ヴァリャーグ』の対艦ミサイル攻撃によって海上自衛隊艦隊は全滅。激しい艦砲射撃の下、北海道西端部へ上陸したとのことだが…………」


「あっ、あぁ…………」


「これはどういうことかな? なぜわが軍の誇る巡洋艦が日本に拿捕されている? 北海道に強襲上陸したのではなかったのかね!?」


「いや、それは…………」


「答えになってないぞッ!! どういうことだ!! 軍部は私に嘘をついたのか!!!」


 モニター越しに、激怒の咆哮を飛ばす大統領。

 そのあまりにも激しい剣幕、非情な現実、逃げられない粛清の恐怖、全ての感情がない交ぜになった結果――――


「ヒュッ」


 ロシア軍参謀総長は、その場でショック死してしまった。

 椅子から崩れ降ちて息絶えた相手を見て、ため息をついた大統領は通信を切る。

 もう軍も、部下も誰も信用できない。


 軍部は大ウソつき、他の閣僚も信用などできない。


 だが引き返すことなど既に不可能、ロシアだけが死にゆく運命など、到底受け入れることはできない。

 死ぬなら、”全員だ”。

 ロシア国民を全員兵士として徴兵し、1億総突撃で日本・ウクライナへ攻撃を仕掛ける。


 大統領として、戦時の権限を使えば可能。

 死者は数千万人単位で出るだろうが、それは以前に大ソヴィエトが通った道。

 今度は自分が、日本というナチズムを葬らなければならない。


 全ては偉大なる共産主義の礎として――――


「歴史に名を残すってことかな?」


「ッ!!?」


 掛けられた声に、すぐさま椅子を倒しながら振り返る。

 部屋の端。

 そこには、マルチカム迷彩を着込んだ1人の男が立っていた。


「やっ、初めまして」


 そう気さくに挨拶したのは、現代最強の自衛官――――錠前勉だった。

 口から出てくるのは、ネイティブのロシア語。

 しかし大統領は、この存在が異常だということにすぐ気づいた。


「貴様……! 侵入者か!? 誰か!! 警備を送れ!!」


 テーブル裏に仕込んであった非情警報装置を押し、すぐさま対応。

 が、錠前は笑顔で手を横に振った。


「あー、ここの警備要員は”全員殺した”から。助けなんて来ないよ」


「ッ!!!」


 あり得ない。

 警備はロシアの誇る精鋭であるGRUが担当していた。

 銃声など微塵も聞こえてこなかったのに、一体――――


「いやー、ロシア特殊部隊の質も落ちたねぇ。”アイツ”がもし存命だったらこうはいかなかったけど…………まぁそれは終わった過去だ」


「貴様、日本人だな? 政府の指示で斬首作戦に来た特殊部隊か」


 その言葉に、錠前は楽しそうに笑いながら否定した。


「あっはは! 違う違う。ここには僕が独断で来たんだよ、日本政府は関係ない。もちろんアメリカもね」


「…………どういうことだ」


 大統領の問いに、錠前は歩を進めながら返す。


「西側政府はまだ君を生かそうとしてるみたいだからね、停戦交渉に必要だからと。でも考えてごらんよ…………」


 腰のホルスターから、G17拳銃を取り出してコッキングした。


「既に何十万も殺した独裁者、これから数千万人を殺そうとした巨悪が……反省なんてするはずがない。きっと目をくらまして、10年後にはまた我が国へ攻め入って来るだろう」


「なにを勝手な――――」


 拳銃が発砲される。

 弾丸は、大統領の右膝を正確に撃ち抜いた。

 苦し気に床へ手をつく彼に、錠前は冷え切った魔眼で見降ろす。


「いいや攻める、お前ら共産主義者(コミュニスト)はそういう奴らだ。100年前から変わらない、人類の癌だよ」


「ぐぅっ…………!! 良いのか!? 一自衛官が政府の意思を無視してこんな所業を…………!! シビリアン・コントロールが聞いて呆れる! それが貴様ら民主主義国家の方便か!!」


「良いこと言うねぇ、確かにこれは完全に僕の独断だから。この場合は君が正論だ」


「だったら――――」


 左膝が撃ち抜かれる。

 悲痛な叫び声を上げる大統領を、錠前は容赦なく蹴り飛ばした。


「許されるとでも? 僕の目的は最初から変わらない、”日本の敵の殲滅”だ。たとえユーラシア全土が紛争地帯になろうと、また次の敵を殺せば良い話。君のような独裁者を生かす方が、正直理解できないんだよねー」


 拳銃の照準を、次は脳天へ定める。

 息を激しく吐きながら、大統領は顔を上げた。


「私は……! ロシア連邦の大統領だぞっ。お前のような凡夫とは違う! 特別なんだ!!」


「特別ねぇ……」


 紅い魔眼は、いつか過ごした記憶を見ていた。


「僕も嫌ってくらい知ってるんだけど……いくら自分だけが強くて特別でも……、それで周りの人間が幸せとは決して限らないんだよ」


 渇いた銃声が響いた。

 僅か30分という短時間で、ロシア最強の地下要塞は陥落。

 時のロシア大統領は暗殺された。


 拳銃を下ろした錠前は、薄暗い部屋で…………紅く光る魔眼を背後へ向けた。


「次」


 ロシア首脳部の全滅は、西側諸国を大いに混乱させた。

 急遽臨時政府が立てられるも、秩序を失ったロシア連邦は分裂。

 国家そのものが崩壊した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大ウソつき、誰も信用できない。そりゃぁいらん事言ったら粛清したりシベリア送りにしてた実績があるからな。他国もやってんだろうけど、アカい国は他よりも随分目立つ 非常警報も鳴らずカメラにも映らず。異常に…
今地球上で1番動向を警戒しなければいけない存在「錠前勉」をロシア大統領が知らない……?単騎で国家殲滅など朝飯前のイレギュラーの情報が上に伝わってない?そりゃ勝てねえよ! 相対した「特別」の2人でも、…
更新乙です。 あ〜あw まあ前の米大統領とかどっかの野党議員とか生きていると困る人がいるので…… 錠前さんもトカレフを口に咥えさせるとか体裁取り繕えばいいのにw (まあ誰がやったか分かってても誰も言…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ