第41話・ワイバーンVSイージス艦
もう一つのタイトルは『2対140』ってところです、某時空飛び越えイージスのリスペクトで。
ダンジョン内部において、今まで飛行型モンスター等は一度も見られなかった。
故に、地対空ミサイルなどの兵器は殆ど持ち込んでいない。
総数140ものワイバーンの大群が、ダンジョンの出口が存在するローマ風都市へ辿り着くのに、大した時間は掛からなかった。
「総員退避ッ!!」
ゲート守備隊が、近くの遮蔽物に隠れると同時に無線を最大出力で放つ。
「ダンジョン内部に飛行害獣が出現!! 間も無く東京湾上空へ出る!!」
鉄門を食い破り、ワイバーン群が外部へ飛び出した。
「おぉ、これは……」
集団のリーダーを務める個体が最初に見た光景は、広大極まる関東平野の夜景だった。
東京から神奈川へと続く経済、工業地帯の煌々とした灯りが空を照らしている。
その経済規模は、目に入る部分だけで韓国やオーストラリアなどの先進国を丸々超えていた。
「なんと、これだけ巨大な集落を人間が造り上げているとは……! いや、もはやこれは村の域を超えている。我々は––––どこの世界へ来てしまったというのか」
「村長、ベルセリオン様はなんと言っていましたか?」
副リーダーのワイバーンが、指示を求めてくる。
村長と呼ばれた個体は、まばらに飛ぶ部下たちへ指示を出した。
「地上へ降りてダンジョン外の人間共を捕食する、ベルセリオン様は“日本人など空を飛ぶモンスターに勝てない”とおっしゃっていた。存分に喰らいつくせい! 第1エリア喪失の仇を討つのだ!!」
群の全てが盛り上がる中で、後方のワイバーンが閃光に包まれた。
「ッ!!?」
光の正体は、爆発だった。
どこからかもわからない攻撃で、一瞬にして9体が黒焦げになって海へ落ちていく。
「なんだっ、何が起きた……!」
困惑する村長にわかる筈など無い。
彼らが絶対安全圏だと思っている東京湾の高度1800メートルは、世界最強の防空戦闘艦のキルゾーンだということを。
「トラックナンバー、1134から1142撃墜」
「本艦のシースパロー対空ミサイルは全弾が命中、僚艦の『きりしま』もターゲットを撃破」
海上自衛隊第1護衛隊所属 イージスミサイル護衛艦『まや』のCIC(戦闘指揮所)に映ったモニターには、混乱するワイバーン群の群れが表示されていた。
防衛省は、万が一ダンジョンから何かが出て来た時に備えて、今回のエリア攻略に合わせ2隻のイージス艦を東京湾に展開していた。
特にこの『まや型』は、イージスシステム、ベースライン9Cを搭載し、さらにCEC(共同交戦能力)を持った世界最強の水上艦艇。
広域防空において、この艦を上回る兵器は現状世界に存在しない。
第二次世界大戦時の戦闘機40機に襲われても、無傷で全機落とせる能力を持っていた。
「付近の航空機、および民間船舶は退避完了を改めて確認」
「よし、イージスシステムを手動からオートに切り替え。CIC指示の目標、シースパロー発射始めっ! サルボー!!」
『まや』と『きりしま』の前部と後部に設置されたVLS(ミサイル発射装置)から、噴煙を上げて対空ミサイルが撃ち放たれる。
しかも1発や2発じゃない、発射数は瞬く間に40発を越えた。
「海の上から炎の矢が飛んで来ます! 村長!!」
「全騎回避!! 人間のエンチャントした大弓なんぞにやられれば、ワイバーン種の恥だぞ!!」
彼らは時速400キロという、生物としては凄まじい速度で回避を行った。
が––––
「あぐぁああッ!!?」
「なんだこの矢! 逃げても追いかけて来るぞ!!」
「しかも速い!! こっちの倍以上––––うわあぁあっ!?」
彼らが炎の矢と呼んだシースパロー誘導弾は、『まや』と『きりしま』の装備する短距離防空ミサイルだった。
通常の艦艇であれば、ここまで大量の目標を追尾することなどできない。
だが、相手はイージス艦だ。
世界でもごく一部に過ぎない国だけが持つ地球最大規模の経済力と、屈指の海軍力。
さらに超大国アメリカから、高度に信用されていないと保有することすら許されないフルスペック版イージスである。
ヨーロッパやオーストラリアの持つ、廉価版イージスとは性能からして全く違う。
ワイバーンの群れなど、現代の海上自衛隊にとっては赤子の手を捻るより簡単に落とせた。
「振り切れええぇええ––––––––ッ!!!」
村長の叫びだけが虚しく響いた。
翼を大きく広げた全力の旋回も虚しく……1騎、また1騎とミサイルに食われていく。
こんなはずではなかった。
どんな魔法やエンチャントでも、ここまで現実離れしたものは見たことが無い。
まるで––––神の放つ矢だった。
「話が違うぞぉ!! ベルセリオン!!!」
村長の叫びはそこまでだった。
真下から音速で迫って来たシースパローが、あえなく直撃する。
バラバラになって落下する村長を見た副リーダーが、全力で叫ぶ。
「全騎、南へ退避!! とにかく遠くへ!! あの矢から逃げるんだ!!」
この時点で、ワイバーンの数は20騎まで減っていた。
彼らは少しでも安全な場所を目指して、東京湾を南下していく。
もちろんだが、これを見逃すほど日本本土のレーダーシステムは甘くなかった。
相手方のガバガバ加減の理由も、近々描写予定。
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