表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
406/456

第406話・もみもみマッサージ

 

「はうぅ…………、酷い目に遭いました…………」


 ――――翌日、執行者の共同部屋。


 腕の固定具を外しながら、ベッドに座ったテオドールが涙目で呟いた。


「いきなりあんな勢いで回すからだぞ……、すげー音だったからな?」


 昨日、準備運動も無しに腕を回したテオドールは、思い切り肩を脱臼してしまったのだ。

 丸1日を悲痛な苦しみの中で過ごした彼女は、執行者の治癒力によりなんとか完治。

 しかし、その鈍り具合は師匠のエクシリアも苦言を呈すもの。


「アンタ、剣術の訓練もサボってたでしょ。このままじゃベルセリオンにすら勝てなくなるわよ?」


「うぅ…………、反省しています。ごめんなさい透、師匠」


 どうやら、かなり痛い目に遭って心底懲りたようだ。

 本気で反省しているようなので、これ以上のお説教はやめることに。


「まぁそうは言ってもこの駐屯地内でできる娯楽なんて、相当限られてるしな。お菓子の大量食いさえしなかったらインドア趣味に文句は言わねーよ」


「でも新海透、テオドールがいざ戦闘になった時にまた関節なり痛めたら、困るのは自衛隊よ?」


 エクシリアの言葉はもっともだった。

 錠前は現在、上海でアノマリーに全力を出した後遺症で魔法の使用が不可能。

 つまり、魔導戦力を執行者へ完全に依存している状態。


 もし今大天使なり、ダンジョンマスターなりが襲ってきたら、被害が大きくなるかもしれない。

 そう頭を悩ませていると、後ろの椅子に座っていた恋人が人差し指を立てた。


「ありきたりですが、マッサージなんてしてみてはどうでしょう?」


 お見舞いに来ていた四条の提案は、透にとって意識外だった。


「マッサージか、テオたち執行者も同じ人間なんだし、確かに効くかもな」


「えぇ、それに…………」


「それに?」


「その様子を配信すれば、結構アクセス数が稼げるのではと」


 ここはやはり広報官、食事配信以外でもジャンルを増やすつもりらしい。

 第1特務小隊は配信が主な任務なので、これはチャンスなのだろうと判断。

 早速、カメラやマッサージの準備を開始した。


「透、マッサージとはなんですか?」


 疑問顔で、テオドールが質問。

 どうやら、これから行われることがよくわからないようだ。


「身体のツボを刺激して、血流を良くしたりするんだ。気持ちよくて鳴いちゃうかもな?」


 透の言葉に、テオドールは謎の不満を見せた。


「この執行者たるわたしが、たかが身体を指で押されたくらいで無様に鳴くわけありません。大袈裟ですよ」


 威勢の良い宣言。

 とりあえず本人にはベッドへ仰向けに寝てもらい、それを映すようにカメラを三脚でセット。

 あっという間に準備は完了した。


「では、始めますね」


 四条が枠を取り、配信をスタート。


【配信キター!!】


【今日は食事配信じゃないんだな】


【ここテオドールちゃんのお部屋? 人形いっぱいで可愛い】


【絶対良い匂いしそう】


【犯罪者だ、連れて行け】


 同接数は瞬く間に5000万を突破。

 カメラに映った四条が、すぐさま説明を開始した。


「こんにちはー、今日はテオドールさんの身体がこっているとのことなので、とっ……新海3尉がマッサージを行います」


 この言葉に、ベッドでうつ伏せになったテオドールがすぐさま反論した。


「別にこってなんかいません、執行者を舐めないでください」


【出た、ほえドールちゃんの堂々宣言】


【今回は何分持つかな?】


【13歳だろ? さすがにその歳でこってるは無いだろ】


 盛況なコメント欄を見て、四条がGOサインを出した。

 ボディタッチにならないよう、背中の上から薄い毛布を1枚かぶせて、透はマッサージの体勢に入った。

 肝心のテオドールに関しては、これが初体験なので訝し気だ。


「テオは最近姿勢が良くないから、まずは腰から揉むか」


 そう言って、早速透は親指で華奢な少女の身体をグリグリと刺激した。

 すると、


「ほえぇぇええ~…………っ」


「……………………」


 …………何か、変な声が出て来た。

 いや、アレほど威勢よく宣言した直後に、こんなアッサリ鳴くはずが無い。

 気のせいだと思うことにした透は、とりあえず別のツボをまた押してみた。


「ほえぇぇぇええ~…………っ」


 やはり、変な声が出た。

 その後も何度かツボを押すが、そのたびに鳴き声が響いた。


「……なぁ、テオ。鳴かないんじゃなかったのか?」


 透の困惑気味な声に、当のテオドールも困り顔で返した。


「その……、なんか出ちゃうんです」


「そっかぁ、なんか出ちゃうのか~…………っ」


 出てしまうのなら仕方がない。

 その後も人間楽器と化したテオドールへのマッサージが続き、最終同接数は1億人を超えた。


 あまりにも情けない姿を晒した彼女は、もうフラグめいた発言をしないと心に決めた。

 尚、その夜は血流が良くなったこともあり、しっかり熟睡できたという。


 一方で、翌日の配信は珍しいコンビでお送りすることが決まった。

 ユグドラシル駐屯地に、”荷物”が届いたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
読み返し中 >【13歳だろ? さすがにその歳でこってるは無いだろ】 あれ、公的には18歳になってるはずだけど(122話)、配信内で実は13歳とか言ったっけ…
仕方ないにゃあ、テオちゃんは くらえ!日本の神秘、鍼治療とお灸!
更新乙です。 「秘孔を突いた。お前はもうホエってる」ですかw (まあ良いマッサージは気持ちいいですからね) 配信用の『荷物』ですか……色々想像できますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ