第392話・わたしって子供嫌いなんだよねー
小学生女児、久里浜千華の救出。
この任務を、3人はアッサリ承諾した。
まずは敵の補給拠点を潰すため、横浜市内の半グレ事務所へ向かっていたのだが……。
「わたしってさー、子供嫌いなんだよねー」
黒のTシャツにデニムのショートパンツ姿へ着替えた秋山が、ケースを担ぎながらそう呟いた。
今回は非公式作戦なので、こうして民間人に偽装しているのだ。
「え? そうなの?」
同じく私服姿、半袖シャツとスキニーパンツというスラッとしたスタイルの錠前が、自販機で買った缶ジュースを飲みながら返答。
この問いに、秋山は少し首を傾げた。
「いや、正確に言うと嫌い……っというか。苦手って感情の方が強いかも」
「なんで? 結構好きだと思ってたんだけど」
「なんつーかさ……、思考が読めないのよねー。特に今回担当するような小中学生くらいの女子、一生分かり合える気がしない」
ダルそうな顔で呟く秋山は、口で咥えた棒付きキャンディーを転がす。
その回答に、錠前を挟んで反対を歩いていた真島が同意した。
「わかる、俺も子供が苦手でさ……。特にあの年頃は食べ方がいまいち出来てないだろ? 仕方ないのはわかるんだけど、ちょっとイライラするんだよな」
真島はこう見えて、かなりの食通だ。
休日に食事で困った時、真島に頼れば確実に美味しいお店へ連れて行ってもらえる。
それだけに、子供の食事風景が少々苦手なようだった。
「おいおいお前ら揃って何言ってんだよ、そんなのガキんちょなんだから仕方ねーだろ」
救出対象に少し苦手意識を抱く2人に、錠前は呆れた。
しかし、今回恐れるべきは子供ではない。
ポケットからメモを取り出した真島が、本題を話し始める。
「スペツナズが動いた気配は無い。久里浜さんはまだホテルにいるだろうから、事務所潰しに掛けて良い時間は”5分”。その後は最速で救出に向かう、警戒すべきはまず半グレ集団だろう」
ここで、全員が一か所に行っては遅いと判断。
半グレ事務所は真島、秋山で担当し、先行して錠前が単独でホテルに突入。
久里浜千華を救出することとなった。
市内の駅前で別れ、スマホで通話しながらお互いに目的地へ。
「ところでさ、相手の人数わかってんの?」
通話越しの錠前の問いに、秋山が答える。
「23人、あと多分拳銃を隠し持ってる」
「そっか、まぁ俺ら最強だし。こんな任務パパッと終わらせて城崎ってヤツをビビらせてやろうぜ。ついでに四条先生も」
「はぁー」
錠前のフラグでしかない発言に、真島がため息をついた。
「勉、そういうのはせめて終わった後で言ってくれないか?」
「なんで? 物欲センサーと一緒だろ。迷信なんざ信じてんじゃねーよ」
「いや、あのな勉…………」
電話を続けながら、真島は正面を見た。
いやに人通りが少ないとは感じていたが、錠前のフラグは見事に回収されたようだ。
「正面から20、いや30人以上来たわ。しかも全員金属バットやナイフ持ってるぞ……」
「ありゃー、それはご愁傷様」
他人事でしかないので、通話を切る。
一方で邪魔立てをされた真島と秋山は、スマホをしまいながら半グレ集団と正対した。
リーダー格と思しき中年が、バットを地面に叩きつける。
「お前らだな? ”R”さんの言ってた特戦の回し者ってのは」
思わず呆れる2人。
「情報駄々洩れじゃねーか」
「ウケる、ここまで筒抜けだとなんか笑っちゃうよね」
日本はサイバー関連でかなり出遅れているとは聞いていたが、まさかここまでとは予想外。
この分だと、錠前が向かったホテルにも罠が張られているだろう。
「お前ら、今ならまだ寛大な俺様がチャンスをやる。ケースを置いて帰るんだな」
半グレボスの言葉に、当の2人は――――
「美咲、ナイフ使うか?」
「えー、別にいらないでしょ。そこに棒切れあったでしょ? これで十分」
まるで聞いていない。
忠告をアッサリ無視した真島と秋山に、半グレボスはバットを向けた。
「判決! 死刑!!!」
雄叫びを上げながら、5人の半グレが突っ込んでくる。
標的は秋山、見るからに細身で弱そうなのは明らか。
まずはこの調子に乗った女を黙らせて、クライアントの手土産にしようとして――――
「なんか舐められてるみたいだけど」
一瞬だった。
高フレームレートのアニメのような動きで、秋山は棒を振るう。
たった3秒という時間で、武装した半グレ5人が首筋を打たれて昏倒。
毒ガスでも吸ったように、バタリと倒れてしまった。
「わたし、長物もいけちゃうんだよねー」
華奢な見た目とは正反対の、凄まじいパワーと圧倒的技量。
不意打ちに等しい光景にビビるが、ボスは戦う気を収めなかった。
「怯むな!! 全員で掛かれ!!!」
たった2人の防大生に、20人以上の半グレ集団が襲い掛かった。
少なくない数の方が、本作の漫画版を違法読みしようとしているのを確認しましたので、モラル高き皆様はぜひマンガボックスさんで、アンケートに答えるなどして頂けると連載の力になります……。




