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第39話・ゲーマーの戦い方

 

 死神の攻略法はわかった。

 しかし、だからと言って勝ちが確定したわけじゃない。


 全員が完璧なコンビネーションを行うことが、求められた。

 故に、透はゲーマーとして己の経験から戦術を練る。


「坂本と久里浜は“タンク”を頼むッ!! 中即連はサポート、俺と四条がストライカーだ!!」


 このダンジョンという物は、今まで日本で発売されて来たあらゆるゲームに酷似していた。

 故に、ここで取るべきは軍事的最適解じゃない。


 “ゲーマーの勝ち方”だ。


「隊長の頼みなら断れないけど……、おいチビ。足引っ張んなよ」


「こっちのセリフよクソ陰キャ! タンクは超重要ポジション、わたしの動きに遅れたら承知しないから!!」


 床を滑るように接近した死神が、再びカマを振るう。

 迎え撃った坂本と久里浜は、これまた完璧なタイミングで攻撃を受け切った。


 足裏の地面が砕け、数メートル押し込まれたが問題ない。


「今よ! 新海隊長!!」


【コンビネーション完璧で草】

【一周回って仲良しじゃんね】

【もう付き合えよお前ら】


 前線の2人が見事なタンクをこなしたおかげで、光明が見える。


「さすが犬猿の仲だ、でかした!」


 大きく走り出した透は、鍔迫り合うデスサイスへ発砲。

 やはり見立て通り、死神の頭部から血が飛び散った。


「おおおっらあああぁぁあ––––!!」


 ダメージに慌てて逃げようとする敵へ、透はストライカーらしく全速で突っ込んだ。

 空になったマガジンを放り捨て、20式に付いた銃剣で全力の刺突を行う。


「キイィィイイ––––––––ッッ!!?」


 こだまする悲鳴。


 やはり思った通りだった。

 この死神は、攻撃の瞬間だけ実体を出現させる。

 つまり、タンク2人が役目を果たす限り––––攻撃が通るッ。


「四条!!」


 死神の目に魔法陣が浮かぶ。

 熱線が放たれることはもうわかっていたので、透は銃をさらにねじ込みながら仲間を信じた。


「やあぁああああッ!!!!」


 後方から駆けて来た四条が、思い切りジャンプ。

 膠着する透の肩を踏み台にして、デスサイスの真上に至る。


 ––––ダダダダンッ––––!!!


『SFP-9』ハンドガンの高速連射で、熱線攻撃を阻止。

 反対側へ着地した四条は、全力の左拳をデスサイスへ浴びせた。


 ただのパンチじゃない、銃撃で開けた傷を押し広げる。

 さすがにこたえたのだろう死神は、素早く4人から距離を取った。


 しかし、この部屋で銃の射程から逃れるなど不可能。


「撃て撃てッ!! 彼らを援護しろ!!」


 後方支援の隊員たちが、あらん限りの全力射撃で死神を妨害する。

 だが、ここに来て最悪の状態に4人は陥っていた。


「くっっそ! 予備マグがもう無いッ」


 坂本を始めとして、全員が銃弾をほぼ撃ち尽くしてしまっていた。

 モザイクとの戦闘からここに来て、遂に残弾が尽きたのだ。


 弾がなければ銃は鈍器に過ぎない。

 どうしたもんかと思ったところで、声が掛けられる。


「新海隊長、これ使って!!」


 駆け出す久里浜から、3発だけ入ったマガジンが投げ渡される。


「それで最後だから! 次のチャンスでちゃんと、しっかり、確実に仕留めてよね!」


 透の20式と、久里浜のHK416A5は同じ弾薬、同じマガジンを使うことができる。

 それゆえの行動だった。


 透は思考を超高速で回転させ、最後の攻撃に打って出る。


「久里浜と坂本は引き続きタンクだ! ヤツの実体を捕らえろ! 四条は拳銃で援護射撃! トドメは––––」


 走りゆく2人の背を前に、託されたマガジンを銃へ押し込んだ。


「俺がやる!」


 中即連の自衛官も、遂に弾切れを起こす。

 四条が必死に援護射撃するも、デスサイスはカマを大きく振った。


「あっぶっ!!」


「うおっ!?」


 斬撃は衝撃波となって、2人の傍を掠めた。

 もし援護がなければ、まともに食らっていただろう。


「装備科の説教が待ってる! 仲良く叱られるぞ久里浜!!」


「誰がアンタなんかとっ! そんなの死んでもゴメンよ!!」


 2人は走りながら、もはや役に立たないライフルを両手に持って突撃。

 さらに振られたカマの一撃を、なんと銃の本体で思い切り受け止めたのだ。


 金属音が鳴り渡る––––


 銃を構成する7075鍛造アルミ合金の強度は、コンバットナイフをゆうに上回るのだ。

 工業用切断機でも持って来ない限り、ライフルを直接斬って2人にダメージを与えることなどできない。


 リアルの銃は、本体が剣よりも遥かに頑丈なのだ。


「隊長!!」


「新海隊長!!」


「透さんッ!!」


 3人の声を受けて、透は両目を見開いた。

 ドットサイトの中央にデスサイスを捉え、ゆっくりトリガーを引き絞る。


「終わりだ」


 ––––ダァンッ––––!!


 顔面に命中。

 血が噴き出し、デスサイスが仰け反る。


 ––––ダァンッ––––!!


 カマを持つ手が弾け、武器が失われる。


 ––––ダァンッ––––!!


 最後の抵抗に燃やされた赤い目が、ライフル弾によって貫かれた。


「…………ッ」


 よろけたデスサイスは、手放したカマを見つめて––––


「何が最弱の民族だ––––話が違いますよ……、ベルセリオン様……」


 一言呟き、結晶と化した。

 部屋の色が元に戻り、死の気配が消え去る。


【うおおおおぉおおおおッ!!】

【勝ったあああぁぁあああ!!!」

【さすが新海3尉たちだ!! 俺は信じてた!!】


 怒涛のように盛り上がるコメント欄。

 全員が思わず座り込み、変な笑いを出した。



 ––––第2エリア、ラビリンス・タワー攻略完了。

 これでもう、このエリアにモンスターが湧くことは無いはずだった。


 出入り口の光が消え、中本1尉たちの部隊がやってくる。

 戦いは––––終わった。












 筈だった。


39話を読んでくださりありがとうございます!


「少しでも続きが読みたい」

「面白かった!」

「こういうダンジョン×自衛隊流行れ!」


と思った方はブックマークや感想、そして↓↓↓にある『⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎』を是非『★★★★★』にしてください!!

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば今回は音声オンにしてるの?仲良しとかコメントであるし。 それとも遺言さんの配信がまだ続いてるとか? いつまで音声をオフでいつから音声オンなのか分からない。配信を体にしてるならオンだ…
[一言] うん、まぁ、『塔』を攻略したにしては探索した範囲狭かったな、とw 階段すら通った描写無かったしね。
[良い点] ヒーラー居ないしタンク複数枚は妥当すぎる。 お、てぇてぇの花が咲くかぁ?w って、筈だった…だと…?
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