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第382話・史上最強の魔導士

明日、マンガ版更新です、よろしくお願いいたします!!

 

 その光景は、軌道上の人工衛星から確認できた。

 宇宙空間からでもわかる閃光が、上海市を包み込んだのだ。


 地震観測装置、および熱エネルギー計測機器は、市街中心部で”戦略核兵器”相当の爆発が発生したと報告。

 核兵器保有国は、その報せを受けてすぐさま自国の関与を否定。


 同時に、衛星写真は文字通り焼け野原と化した旧上海市街を捉える。


「あー、しんど…………。頭いって」


 一面がクレーターとなった旧上海跡地で、錠前は立っていた。

 あれほど絢爛にそびえていた金融街は、その全てが消滅。

 1時間も経てば、ここもすぐ海に沈んでしまうだろう。


 それほどまでに、錠前が放った奥義は強烈だった。


「魔導封域と暁天一閃の同時使用……、さすがの僕でもデメリットが大きいな。これで3週間は魔法が使え無さそうだ…………。けど」


 彼の前には、1つの淡い炎が浮かんでいた。

 今にも消えてしまいそうなそれは、さっきまで戦っていたベヒーモスの魂だ。


「これで僕の勝ちかな、サッサと取り込むか」


 ベヒーモスの魂に近づく。

 これさえ完了すれば、もう日本に脅威らしい脅威は無くなる、

 後は再び魔法が使用可能になったタイミングで第4エリアに侵攻。

 上手くいけば、執行者や透の覚醒を待つ必要もなく終わる。


 来年までには、錠前単独で天界を殲滅する公算だった。

 が――――


「させないよ☆」


「っ」


 錠前が反射で後ろに下がると、目の前に1本の槍が落ちてきた。

 地面に突き刺さったそれは、以前の渋谷で執行者エクシリアを貫いた宝具。

 これの持ち主は、1人しかいない。


「なんだ、ずいぶんと遅い登場じゃないか」


 錠前の前に、3人の男が降り立つ。


「やぁ、久しぶり。渋谷ではどうも」


 そう軽薄に挨拶したのは、羽衣で身を包んだ大天使ガブリエルだった。

 さらに横には、大天使サリエル、および大天使ウリエルが立っている。

 共に宝具を携えており、完全武装だった。


「ははっ! 勢揃いじゃん、同盟国の都市が焼き払われたってのに、随分とのんびりしてるんだね」


 錠前の煽りに、ガブリエルは笑みを浮かべる。


「もちろん、だってこっちは君たちの決着がつくのをずっと待ってたんだから」


「ストーカーは嫌われるぜ?」


「主の復活のためなら、安い汚名だ」


 そう言って、ガブリエルは亜空間から”鳥かご”を引っ張る。


「気になるかい? これは魂を保管する宝具でね、僕たちはずっと……この瞬間を待っていた。ベヒーモスの魂のコアが瀕死に陥る、この瞬間を」


 もうこのやり取りで魂胆を見抜く。

 あの大天使共は、ベヒーモスの残した魂を持ち去ろうとしている。

 すぐに阻止したかったが、重い後遺症を引きずった状態で大天使級3人の相手はしんどい。


 魔力無しで戦うこともできなくはないが、錠前は思考を高速で回転させる。


 ――――あのサリエルとかいう大天使は、以前にベルセリオンくんが殺したはずだ。それが復活している……もしこの場で動いても、ウリエルとサリエルは殺せるが、ガブリエルには逃げられる。


 焼き切れた魔眼は、現実のみを見据えていた。


 ――――よしんばガブリエル以外を殺せたとして、また復活されるのがオチか……。ギミックがわからん以上、下手に魔眼の行使は避けたい。


「へぇ、それ持って帰ってどうすんの? 君らが食べたところで死ぬだけだと思うけど?」


 答えは静観。

 最善ではなかったが、他に手段も無い。

 ここは情報を引き出すことにした。


「あっはっは! 僕らは食べないさ。これを召し上がっていただくのは我らが”主”だ」


「なんだガブリエルくん、胴元は君じゃないの?」


「僕は臨時のトップに過ぎない、我らが主は母星を離れてからずっと休眠状態でね……長らく目を覚ましていないんだよ」


 感慨深そうに言いながら、ガブリエルは魂をカゴに入れた。


「でも、このアノマリーの魂があれば……再び器に火が灯る。錠前勉、お前がこうしてアノマリーとして覚醒したようにね。我らが主なら長年の悲願を達成できる」


「ふーん。目論見はわかったんだけどさ、さっきの僕の戦い見てたでしょ? 雑魚を増やしたところで変わんないよ?」


 にやける錠前に、ガブリエルは一笑した。


「その上で言ってるのさ。我らが主――――”破壊神イヴ様”は、お前より強い」


 魔眼で確認するが、どうも嘘を言っている様子は無かった。

 どうやら、ブラフではないようだ。


「ねぇガブリエル、せっかくのチャンスだしここで錠前勉殺さない? 今なら魔法使えないんでしょ?」


 横で退屈そうにしていたサリエルが、そう提案するが――――


「やめておいた方が良いだろう、こちらがわざわざリスクを冒す必要は無い。イヴ様に全て任せれば良いよ」


 心中でため息をつく錠前。

 ここで隙を出してくれれば阻止もできたが、相手もそこまでバカではないらしい。


「随分と信頼されてるんだねー、イヴって人。そいつが死んだら本当に終わっちゃうけど良いの?」


 指を差して煽る錠前に、ガブリエルは薄く笑い返した。


「お礼にこれだけは先に教えておこう、イヴ様は我らのいた世界で”史上最強の魔導士”と呼ばれた存在だ。なぜだと思う?」


「はっ、知るかよ」


「君と同じさ、錠前勉。君がその身に魔眼を宿しているのと同じく……イヴ様を最強たらしめているのは『神眼』を持っているからだ。魔眼と対をなす存在、君のこの世で唯一の天敵がイヴ様なんだよ」


 そう言って、3人は転移魔法で消えた……。

 ウリエルは何故か終始喋らず、どこか上の空だったが……この事実だけで、錠前はプランの練り直しを余儀なくされた。


「第4エリア攻略は3週間後にしたかったけど……、ちょっと厳しそうだな」


 だが、錠前は心底ワクワクしていた。

 あのベヒーモスでさえ、本気にはさせてくれたが殺してくれなかった。

 もしかしたら、その神眼を宿したイヴという存在なら――――

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― 新着の感想 ―
創造神アダムさんどこ行った…
> 我らが主――――”破壊神イヴ様” ええ~~、大天使の名を名乗る輩どもの主なのに、四文字じゃないんかい!?
硝煙の匂いがするビーチがそろそろくるのか... あれ?ところで四条と新海の関係について、お父上からのお咎めなし?
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