表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
380/454

第380話・アノマリーVSアノマリー②

 

「やるなッ!!!」


 サングラスを捨て、紅く輝く魔眼を開放した錠前は大変嬉しそうに叫んだ。

 巨大ビルを破壊しながら突っ込んできたベヒーモスに対し、空中に飛び出して迎撃。


 マッハで互いの拳がぶつかった瞬間、爆弾の炸裂にも等しい衝撃波が飛び散った。


「僕に一発入れたのは雄二と美咲以来だ! せっかくの機会――――楽しませてくれよ!?」


 ベヒーモスの拳を、空中で受け止める。

 1発、2発、10発、50発、浴びせられる打撃の雨はその全てがソニックブームを伴った速度。

 しかし、錠前は涼しい顔でそれら全てを手で止めてしまう。


 2人から発せられた衝撃波が、何重にもなってビル街を破砕。

 建物の中の人間ごと、崩落でミンチにしてしまう。


「そーら!!」


 錠前のカウンターが決まる。

 空に吹っ飛んだアノマリーへ、瓦礫を足場に跳躍。

 手近なオフィスビルへ押し付けるように叩きつけた。


 突然壁を破って突っ込んで来た怪物達に、中の人間はパニックとなった。


「なんだこいつら!!」


「ば、ばけも――――」


 要塞化して陣取っていた解放軍兵士は、そのまま飛んできた不可視の斬撃によって両断される。


「やはり結界の上からでは効果が薄いな!」


 浅い傷口を見て、距離を詰めた錠前はベヒーモスの腹部へ両手を当てた。


「じゃあ内部をぶっ壊してやるよ」


 恐ろしい笑顔で、規格外な出力の魔法が発動される。


 ――――ドドドドドドドドドドドドドドドッッッ――――!!!!!!!!!!


 触れた手から直接、斬撃を体内へ送り込んだ。

 60連発にもおよぶ攻撃を食らい、ベヒーモスはよろけるが……。


「ッ!!」


 倒れるどころか、凄まじい速度で反撃。

 振り下ろされた拳の威力が高すぎたのか、今いるビルも基盤が木っ端みじんにされた。

 崩れ行く建物の中で正対しながら、錠前は思考を巡らす。


 ――――おかしいな……、今の攻撃で確実にヤツの生命維持で必要な臓器を破壊した。なのにピンピンじゃん。


 こちらを見つめるベヒーモスは、傷を”肉体反転”で治しながらニヤリと笑った。

 特に言葉は無い、必要もないのだろう。

 意味だけを理解した錠前も、同じく笑った。


「アノマリー同士が戦うとこうなるのか、良いね……ドンドン上げてこう」


 ◇


「ッ…………!! はぁ、はぁ!!」


 いきなり始まった訳のわからない事態に、劉中将は混乱していた。

 周囲には両断された部下たちが転がっており、生存者は自分しかいない。

 焼け焦げた路上に出て、なんとか仲間を探そうと見渡す。


「えっ……」


 それは、地球上において信じられない光景だった。

 上海を彩る高層ビル群が、”宙を舞っていた”のだ。

 まるで木の葉のように、大質量物体が吹っ飛ばされているのだ。


「何が…………起こっているんだ?」


 ビル群が落下を始めたと同じ頃、錠前とベヒーモスはさらに激しくデッドヒートを行っていた。

 商業ビルの屋上に立った錠前が、両手に魔力を集中させる。

 さっきから、全ての魔法攻撃がほぼ効いていない。


 ならば――――


「”虚空(こくう)”、”永劫(えいごう)”、”星海(せいかい)律動(りつどう)”――――」


 時短のため本来省く詠唱を敢えて行い、出力を大幅に向上。

 空中から突進してきたベヒーモスの一撃を横にかわし、人差し指を首へ向けた。


「『絶』」


 相手の首から、大量に血が噴き出した。

『魔装結界』による防御に”適応”した錠前の一撃は、ベヒーモスの頭部を胴体から切り離した。


「…………?」


 その場で倒れ込んだベヒーモスに近寄りつつ、ポケットに手を入れる。


「リヴァイアサンは首を落とされて死んだ、けどこいつ――――」


 直後だった。

 胴体だけのベヒーモスが起き上がり、錠前を横合いから殴りつけたのだ。

 次元防壁でガードするが、ギャリギャリと音を立てて削られていく。


 とんでもない結界中和能力、ここまでの相手は本当に初めてだった。


「やっぱりか、お前……適応進化以外にも、なんかやってるな?」


 錠前の問いに、頭部を一気に再生したベヒーモスが笑った。


「だとして、お前に策があるのか?」


「そう焦んなって、僕はお前をどう調理してやろうか悩んでんだよ」


「なら貴様が挽肉になれば良い」


「アノマリーは不味いぜ?」


 浮き上がっていたビル群が落着。

 激しい衝撃と音を立てながら破砕され、上海市内に展開中だった兵士へ直撃。

 降って来た巨大な瓦礫によって99式戦車部隊が潰れ、逃げ惑う兵士たちも虫のように死んでいった。


 アノマリーVSアノマリーの戦いは、あまりに次元が違った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
一般市民は放逐or殺害済で、残っているのは反乱軍と義勇兵だけなのが救いか…… にしても人間止めても本気を出せる相手がろくにいないとか、何処かの神の自滅因子な黄金の獣殿みたいだなあ(白目)
民兵がめちゃくちゃ可哀想...
某大佐は勇者の力をどんどん低下させていったというのに、この一佐と来たら
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ