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第379話・アノマリーVSアノマリー①

ちょっと今までにない戦いになります、リアリティ重視の本作ですがかなりぶっ飛んでます。

でも全部こいつらの強さがおかしいせいです

 

 ”アノマリー”の侵攻。


 最初にこの情報がもたらされたのは、1か月前のこと。

 ダンジョンが初めて出会った異常存在にして、彼ら彼女らが世界を渡って逃げることになった原因。

 テオドール達がお店ラーメンを食べに出かける直前、その情報は確信へと変わった。


「ッ……!! 来た」


 第1特務小隊監督室にいたエクシリアは、薄ら寒く鳥肌を立てた。


「間違いない…………、アイツ。本当に追って来てたんだ」


 震える彼女に、身支度を終えた錠前が話しかける。


「思ったより早かったね、テオドールくんとベルセリオンくんがいた世界のアノマリーだっけ。距離は?」


「地球換算で、およそ4.2光年。ケンタウルス座の方角に現れたわ……」


「太陽系から一番近い恒星系だな、おそらくプロキシマb……地球外生命体がいるかもって言われてる惑星だけど」


「残念ながら出会うのはもう無理ね。ベヒーモスが出現した段階で、その惑星の生物は根絶やしにされる」


「ははっ、天文学者や宇宙論者が悲しむな。もっとも……君らダンジョン勢力と邂逅した今、異星人の存在はもう証明されたんだけど」


 トランクを纏めた錠前が、声色を変えた。


「単刀直入に聞く、いつどこに来る?」


 そう、錠前はこの日のために出張の準備を進めていたのだ。

 東京ではおそらく外国や、天界の妨害があるかもしれない。

 しかしそれは、今の透たちや執行者で十分対処可能と彼は読んだ。


 ゆえに、今から襲ってくる文字通り規格外の存在に対し、現代最強たる自分が当たることを決めたのだ。


「新たな重力揺を探知したわ。次の転移先は南シナ海上空、時刻は今日から1か月以内のどこか」


「4.2光年を一瞬で飛んでくるのか、本当に化け物だね」


「改めて警告するわ、あのアノマリーは全快だった頃のわたしですら1分の足止めで致命傷を負った。今のテオドールやベルセリオンも十分に強くなったけど、”まだ”早い。こうなったらもう頼れるのはアンタだけよ」


「こっちも確認なんだけどさ、アノマリーってダンジョンの魔力を目当てに来るんでしょ? 僕はこれから上海に陣取るけど……東京にいなくて良いわけ?」


「確かにダンジョンを追っている、でも正確にはより濃度が高い魔力の集合体を目指してる。今のアンタなら十分引き付けられる公算よ」


 3頭身の執行者は、余裕の無い声でそう言った。


「……正直に答えて、勝てる見込みは?」


 相手はあのリヴァイアサンと同格の超生命。

 世界の運命が決まる戦いを、たった1人の男に託すのだ。

 その緊張感とは裏腹に、錠前は軽く笑って見せた。


「僕を誰だと思ってんだよ、大丈夫……なんたって――――」


 トランクを引き、ドアを開けながら続けた。


「最強だから」


 ◇


「お前だな? この世界の守護者は…………」


 ゆっくりと正対したベヒーモスが、錠前に話しかけた。

 そのことに、現代最強のアノマリーは驚く。


「へぇ、君クラスの怪物になると人間並みの知性があるのか。ひょっとして和平とかできたり?」


「質問に答えろ、この星の守護者は貴様なのか?」


「ちょっと違うかな、君の言う守護者を……僕たちはリヴァイアサンと呼んでいたんだけど――――」


 頭をかきながら、錠前はにこやかな笑顔を見せる。


「倒して食べちゃった☆」


「…………」


 それを明確な答えと受け取ったのだろう。

 ベヒーモスの身体から、エンデュミオンや大天使、執行者とは比較にもならない魔力が溢れ出た。


 それは天界において、魔力出力トップと謳ったウリエルがノミに思えるレベルのもの。


「き、貴様ら!! 何者だ、手を挙げて降伏しろ!!」


 ようやく立ち直ったらしい中国兵たちが、錠前の背後でアサルトライフルを構える。


「おーい、やめときなー。そんな豆鉄砲使えんから、レールガンでも用意するか……サッサと逃げた方が良い」


 その瞬間だった。

 ベヒーモスが右腕を振るう。

 たった、たったそれだけの動作にも関わらず、巻き起こった烈風は即死級の威力で錠前を通り過ぎて背後の兵士たちを両断してしまった。


「ひゅうっ、おっかな」


 大量の血しぶきが飛び散る。

 だが、同じく攻撃を受けた錠前は無傷だった。

 不思議そうな顔をするベヒーモスへ、親切に答えを教える。


「僕の得意は空間魔法でね、こうして普段はプランク長にまで畳まれた高次元を周囲に展開してバリアが張れるんだよ。言うならば『次元防壁』、君の攻撃は僕に通じないよ」


 錠前は最初から本気だった。

 以前であれば舐めプレイで出し渋っていた防壁を、最初から展開したのだ。

 それだけ、ベヒーモスは自分に近い実力を持っていると見込んでの動き。


「……ふむ、確かにそうらしいな」


 ベヒーモスがもう一度同じ攻撃を行うが、当然錠前には届かない。


「じゃあ次はこっちの番だ」


 ほぼ瞬間移動とも呼べる速度で、錠前はベヒーモスの顔面を蹴った。

 あまりに重た過ぎるそれに加え、現代最強は速攻を掛ける。


「『絶』」


 ––––ズバンッ––––!!!


 どんな硬度の物質だろうと両断する、錠前得意の“空間ズラし”が首へ撃ち込まれる。

 これで通常なら決着だが……。


「ッ?」


 即座に距離を取る錠前。

 見れば、ベヒーモスの首は薄皮程度しか剥けていなかった。


「面白い技を使う」


「……おかしいな、結構本気でやったつもりなんだけどね」


 魔力量、出力共に互角か、自分の方が上のはず。

 何故今の一撃がクリティカルにならなかったのか、すぐさま解析を進めるが……。


「ムンっ!!」


 肉薄してきたアノマリーが、再び拳を振りかぶる。


「だから無駄だって、防壁忘れたの? 学習能力が足りなく––––」


 その瞬間、錠前は“殴り飛ばされた”。

 ビルを3棟ほど貫通し、とりあえず手近な壁に張り付く。


 すかさず、身体の具合を確認した。


「ダメージ無し……だが妙だな、防壁ごと殴り飛ばされた?」


 『魔眼』の解析により、原因はすぐさま判明した。


 ––––なるほど、アイツ……全身に極薄の結界を纏ってるのか。僕の絶対不可侵防壁へ瞬時に適応し、あんな離れ技を……。


 分析は進む。


 ––––さっき僕の攻撃が効かなかったのも同じ理屈だな? 座標ズラしを結界で防御した。言うならば……『魔装結界』。


 もはや防壁は意味をなさない。

 眼前のアノマリーは、今まで戦ってきた中でダントツに、圧倒的に強い。


 その上で、サングラスを放り捨てながら––––


「やるなッ!!!」


 錠前勉のボルテージが上がった。


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― 新着の感想 ―
錠前勉…人間のころから強すぎて本気で戦う相手がいなかった男であるw
なお、はぇ師匠はこの展開を知っていながらキーマカレー食って鳴いていたのである。 鳴いていたのである!!
親(作者)が子供(作品)に全責任押しつけたぞ! 守護者じゃないけど一番強いよ☆ 魔法を持ってなかったときから本気でやれたことなかったり?
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